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シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜  作者: 硬梨菜
龍よ、竜よ! われらが拓くは未知と真実
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感動巨編「かわいそうな象」(終盤のみ抜粋)

クラウダイブ・エレファント。プレイヤーから見ればバレバレではあるが雲を身にまとうことでモンスターから身を隠す擬態特性を持っており、それ即ち奴はある程度雲を制御する術を持っているという事だ。


轟々と奴の長い鼻が地に広がる雲を吸い込み始め、この場限定ではあるものの水位ならぬ雲位が下がり始める。

なるほど、蜂どもが逃げ出さなかったのはこいつを手札として持っているからこそのイキリか……!


「エムルっ!」


「はいなぁっ!」


「喜べ、ヴォーパル魂の稼ぎどころだ……!」


「ふふふ、進化したアタシの力を見せてやるですわーっ!」


ふしゃーっ! と猫のような音を立てるエムルを頭にセットし、鼻から雲をがぶ飲みするクラウダイブ・エレファントを見据える。


「エムル、とりあえず様子見だ。加算込みでマジックエッジをあの象にぶちかませ、俺はあのイキリ蜂を叩き落とすからな……振り落とされるんじゃねーぞ!!」


「委細承知ですわーっ!」


そうエムルが答えるのと、クラウダイブ・エレファントが鼻から勢いよく()幕を撒き散らしたのはほぼ同時のことだった。

巨体の割に結構テクニカルな攻撃するじゃねーか、それに上司が部下の煙幕でドジを踏むとは思えないし……そこだぁ!


「うおっ、マジで当たった」


クラウダイブ・エレファントの雲幕を利用して奇襲を仕掛けてきたドミネイオン・ホーネットが割と適当に振った傑剣への憧刃と接触し、弾き飛ばされれる。チッ、流石にクリティカルヒットまでは行かないか。


「とりあえずこの中から抜けるのがベターか……!」


だって、さっきから、ドスンドスンと、重圧が……ぁあっと危ねぇええ!!


「エムル!」


「【マジックエッジ】!!」


跳躍の数瞬のちに、大質量が俺のいた場所を踏み潰す。だが残念ながらそこで待っているのは俺ではなくエムルが放った魔力の刃だ。

明らかにVITのたかそうな分厚い皮膚にマジックエッジが命中するも、やはりというか一撃で有効打とはいかないようだ。


「とはいえ素の火力もあってノーダメってわけではなさそうだな……エムル、アレ(・・)の用意をしておけ、実戦での試し撃ちには丁度いい」


「わ、分かったですわ……でもでも、ちょーっと時間かかるですわ……?」


「問題ないね、雑魚とノロマに捉えられるほど俺はトロくない……エムルも知ってるだろ?」


あの象、上司に呼ばれてここに来るまでの速さを見るに最高速度は結構ありそうだが初速はショボい。加えてあの巨体だ、抜き足差し足で駆け出すようなことは出来まい。

いやむしろクソでかい身体で俊敏に動くモンスターの方が本来おかしいはずで、クラウダイブ・エレファントの挙動はむしろ自然なはずで……見えてる奇襲はただのサンドバッグだぞ、はい素材ゲット。


どうやらいっちょまえに戦術を立てているのか、ドミネイオン・ホーネット共はどこからか飛んできた増援も併せて俺を包囲、雲幕の方へと追い詰めようとする動きを見せる。

だが一つこいつらは勘違いしている、包囲網は対象を内側に押しとどめるだけの拘束力が無ければ無意味なんだよ!!


「オラオラどけどけぇ!」


虫共め、お前らに足りないのは踏ん張り(・・・・)だ。なまじ飛行能力を獲得してるせいで強めに殴ればすぐに傍に退いてしまう。だが俺はお前達の包囲を高く評価しよう。


なにせ……


「並んでくれた方が処理が楽だからなぁ! 素材落としやがれ!!」


残念だったな! 旋回するにも時間がかかる象など二の次、此度のメインオーダーはお前らの命だ。

バッサバッサとドミネイオン・ホーネットを斬り伏せながら、時折突っ込んでくるクラウダイブ・エレファントの突進を避ける。


この手の狩ゲーじゃ目標モンスターのお供に雑魚敵が湧くのはお約束、これがリュカオーンとかであれば笑みも引っ込むが倒す必要のない鈍重な象をおちょくるだけなら実にイージーなクエストだ。


「無限湧きって訳じゃなさそうだが、向こうも切り札を出しただけあってそう簡単に撤退するつもりはないらしいな……」


素材が向こうから飛んでくるのは喜ばしいが、このまま奴等が一族郎党の全てを俺の撃滅に費やされても手間なだけだ。もう既に結構な数の素材が集まっており、いつ離脱しても良い訳だが……まだメインディッシュを済ませてないからな。


「エムル行けるかっ!」


ぺしぺし、と頭を叩く感触が二つ。一つならば否定、二つならば……


「よっしゃ一発派手にぶちかましてから帰るとするか!」


二つ叩くは肯定の合図。砲台を頭に乗せた俺は蜂を払いのけながら象の正眼と直線に繋がった立ち位置を確保する。


「なんつーか闘牛士っぽさあるな……ふっ、ほーれヒラヒラだぞヒラヒラー」


瑠璃晶の星外套をマタドールの如く揺らめかせていると、どうやら蜂に調教されきった頭でも馬鹿にされていることは理解できるようで、絶叫と呼ぶにふさわしい咆哮と共にクラウダイブ・エレファントは猛進を敢行する。


種族的に「思いやり」とか「配慮」が欠けているのかそれとも調教されたとはいえ恨みを抱いているのか進行上にいるドミネイオン・ホーネットを蹴散らしながら、大地を覆う雲のみを蹴散らしながら、ただ俺とエムルをミンチにせんと真っ直ぐに。


「エムル、頭が微振動するから震えるのやめろ」


「………っ!?」


何故この状況でそんな冷静なんだと言わんばかりにべしべし頭を連打するエムルにデコピンをすればいよいよ激突の瞬間が迫る。

別に俺がMPを消費するわけでも、魔法を使うわけでもないがなんとなく暇なのでそれっぽく掌を前面に掲げて決めポーズ。えーと決め台詞決め台詞……えーと、


「その慣性、頂戴させて貰おう……!」


「【完全反射陣鏡フルカウンター・リフレクション】!!」


激突……の寸前、俺達とクラウダイブ・エレファントとの間に盾のような壁のような魔法陣が展開される。猪突猛進ならぬ象突猛進の最高速度に到達していたクラウダイブ・エレファントがそれに対して回避や停止の行動を選択できるはずもなく、真っ向から魔法陣に激突。


瞬間、虚空に浮かんだ魔法陣にぶつかった音とは思えない快音が響き……クラウダイブ・エレファントが持つ二本の牙がアッサリとへし折れた。


「ひゃほほい象牙ゲットォ!」


「しれっと自分がやったみたいなことしてたけど、やったの私ですわ!?」


「細けえことは気にすんな!」


いいねいいね、パワーファイターに使うとここまで効果的なのか。流石に億単位で買っただけはあるぜ、ラビッツの魔道書を扱う店ですら埃を被っていた一品だからなァ……!


エムルに習得させた【完全反射陣鏡フルカウンター・リフレクション】、読んで名の如くその効果はカウンター系だ。

MPをバカ食いし、詠唱破棄が出来ないというクソみたいな使いづらさではあるものの、その効果自体は驚異的の一言に尽きる。


具体的に言えば「使用者の魔力総量に応じた上限までの全て(・・)の攻撃の無効化及び同値ダメージの付与」、秋津茜の謝罪砲(竜息吹)が肺活量参照するようにこの魔法はMPを上げれば上げる程どんな攻撃でも完全防御し、その分のダメージを反射する。


まさしく鏡だ、ただし鏡像も同じ攻撃をかましてくる。つまりクラウダイブ・エレファントは実質的に真正面から自分と同じ重量が同じ速度で正面衝突した、という事だ。

そしてシャンフロの優れた物理演算であれば、互いに加速状態で正面衝突した際のダメージ量は何人の俺をミンチにできるかわからない程に跳ね上がる───!


「はぁーっはっはっはぁ! 良き(かな)良き(かな)ァ!」


思わぬ臨時収入であったが、少なくともここに来た目的は色付きで達成できた。あとは帰るだけだが……どうやらあの蜂共は意地でも俺を逃がすつもりはないらしい。


牙を折られ、顔面を強打して悶え苦しむクラウダイブ・エレファントに幾匹かのドミネイオン・ホーネットが張り付く。

そしてその尻の針をクラウダイブ・エレファントの皮膚に突き刺した……いや刺さってないな、あんなんじゃ針治療にもならないぞ。


だがクラウダイブ・エレファントにとっては実際に突き刺さって痛みを感じる事とは別に「針を刺された」という行動自体が苦しい、とでも言わんばかりに絶叫を上げ無理矢理立ち上がる。


「下僕のつらいところだな」


死ぬまで働かされ、そして切り捨てられる。虫にモラルを説くくらいなら馬の耳で爆音念仏した方がまだ有意義だろうが……少しだけ哀れみを感じた。


「サンラクサン……」


「……ああ、そうだな。引導を渡して弔って(素材回収して)やろう」


「いやそうじゃなくてサンラクサン……あ、あれ……」


ん? なんだ、一体何が……おや、クラウダイブ・エレファントは動いてないのに地面が揺れている。地震? おかしいね、震源こっちに近づいてなぁい?


「バォォォォォォォォォオオオン!!」


「バルルルルルルルァッ!ルルルルルルオオオオオン!!」


「ご、ご両親!?」


それは果たして偶然か、必然か。

ドミネイオン・ホーネットの切り札として調教されながらも秘匿されて来たクラウダイブ・エレファント。それが俺との戦いで叫び、暴れ、雲の海に波紋をいくつも生み出した。


その叫びが、分かたれて尚子を愛する心に欠けらの陰りもない象の両親に届いたのだ。

怒り、喜び、業火の如き感情を滾らせた目の前の個体よりも一回りは大きいクラウダイブ・エレファントが戦場にエントリー、事態は蹂躙の様相を呈する。


「……こりゃやべぇ、水晶群蠍と同クラスな訳だ」


恐らくは体内に取り込んだ雲を冷却し、凍結させる事で氷の弾丸を生み出してそれを圧縮した空気でぶっ放している。

しかも弾種(・・)も選択可能なのか、乱入した二頭の鼻から放たれ、飛翔中に散弾と化した氷の礫がドミネイオン・ホーネットを大雑把に、だが確実に撃ち落としていく。


近距離だと重装甲、遠距離手段も持ち合わせていて煙幕も張れる……なんだこのハイスペック戦車、しかも砲塔がフレキシブルに曲がるとか。


最後のドミネイオン・ホーネットが特大の氷弾によって粉砕され、牙の折れた子クラウダイブ・エレファントが恐る恐ると言った様子で両親へと鼻を伸ばす。

それを両親は己らの鼻で手繰り寄せ、万感の想いが篭った動きで子象を撫でた。


「ブラヴォー……素晴らしい親子愛だ……」


「感動的ですわ……!」


引き裂かれた親子の再会、モブキャラとは言えこの感動のシーンに立ち会えた事、光栄に思うぜ……っ!!













まぁそれはそれとして子象の牙をへし折ったのは俺らであるため、この後十分くらい怒り心頭(アクティブ)な象一家に追いかけ回される羽目になったが。


良かったね! 今度はもう親から逸れるなよ!

ドミネイオン・ホーネット式調教術

1.捕獲したモンスターを痛めつけます

2.死なない程度の食事を与えます

3.食事を与える前に痛めつける、という行動を繰り返します

4.しばらく絶食させます

5.モンスターが食事を得るために身体を差し出した辺りで一旦半殺しにします

6.この行程を何度も何度も繰り返します

7.反抗精神を完全に削がれた下僕の完成!


「お前の意思で何か実現できると思うなよ」と教え込む畜生蜂、なお深海には「あ、いい匂い…… → 好き!」からの一生眷属生活まで直行する鮟鱇がいるしやっぱりそこまで大した事ではない





クラウダイブ・エレファント(成体)

強さ的には水晶群蠍単体よりは強く、金晶独蠍よりは弱いと言った辺り。氷雲弾は親が子に教えて継承する技術系の技なので子象は使えなかったという設定。

なお非ユニーク・レイドで現状最強クラスはアトランティクス・レプノルカ、やはり水中で広域放電とレーザーはアカン


ちなみに新大陸調査船を襲撃したクラーケン的タコは深海だとアルクトゥス・レガレクスにすらおつまみ感覚で食われるので大陸棚の浅瀬に逃げてきた種族。

深海三強が生態系維持してなきゃとっくに滅んでます。エルドランザ君はもっと事前調査すべきだったんや……

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― 新着の感想 ―
ルルイアスもういくらか前の話なのに延々深海一般モンスター勢の株が上がってくの草。
[良い点] サンラク悪者...わかる(草)
[一言] 深海って凄いんですね…(遠い目)
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