乙女の如く、魔犬の如く
右手が筋肉痛だったので更新休んでしまい申し訳ないです
ネブカをリビルドにしたかったんや……(悪化の原因)
「あの……その、おっ、おはようございます……」
「はいおはようございます、それでどうだった?」
目を覚まし起き上がった斎賀さんに問いかけると、斎賀さんはパタパタと自身の服が乱れていないかを確認、そして若干の「間」があったものの質問に答える。
「………えと、ログイン自体は出来た、んですけど……その、システムに異常があるためログアウトしてください、というメッセージが表示されました」
「あー……それ出ちゃうなら出力系以外にも問題があるパターンだ、流石に修理に出さないとダメだね」
「そうですか……じゃあ、その……お借りさせて頂きます」
俺が普段使ってるベッドよりも柔らかそうな布団の上でぺこりとお辞儀をする斎賀さん、構わないと手を振りつつ立ち上がり……セルフ迸る電律が足にィ!?
「ぬおぁっ」
「大丈……きゃっ」
足に痺れが走った事で体勢を崩しかけたがなんとか踏ん張って体勢を立て直す。しかし倒れかけた俺に身構えた斎賀さんが踏み出した足で和服の裾を踏んづけて転倒し……
「………っ!」
「おぐっうぶ!?」
慣性と重力による加速を経た斎賀さんのヘッドバットが上から抉り込むように俺の鳩尾に突き立てられた。
「………っ! ………!?」
ヤバい、朝飯が出そう。
かろうじて俺の身体を支えていた足への力が粉々に粉砕され、がくりと膝から崩れ落ちる。そして鳩尾に突き刺さっていた斎賀さんヘッドが重力に従い真下へと落ち……
「お嬢様、少々本日のご予定について…………失礼致しました」
「………っ、………っ」
「待っっっっっっ!」
見ようによっては俺が斎賀さんに膝枕しているような形になったところを、そういうフラグでも踏んだのかと邪推してしまう程のジャストタイミングで使用人の方に目撃された。
体内で逆流の渦巻きを見せる朝ご飯をなんとか体内に留めんと手で口を押さえている俺は何も言うことができず、俺の太ももに頭を乗せたまま「これは違うんです」と弁明する斎賀さんには説得力というものが無い。
ススス、と襖が閉められ俺と斎賀さんの間に何とも言えない沈黙が漂う。
「………」
「………」
とりあえず他人の家でゲロるという最悪のバッドエンドは回避できたが……風雲斎賀城、真ボスは斎賀さんであったか。
「……なんと、お詫びすれば……!」
「じ、事故なんで気にしなくていいんで……いやほんと、大丈夫大丈夫」
膝を揃え、頭を下げ、頭の前で両手を揃え。
ジャパニーズ謝罪最終奥義、土下座を敢行する斎賀さんに俺は頭を上げてくれるよう頼み込む。何と言っても絵面がやばすぎる、場所が場所なら制裁されるのは俺の方だぞこれ。
「でも……」
「いや本当、発端は俺が体勢崩しかけたのが原因だし……というか逆ノブリスオブリージュというか俺の身がやばいというか」
事によっちゃ新月の夜に出歩けなくなりそうな絵面なので本当勘弁してください。斎賀家直属の裏処理部隊とかいないよね?
「あー、それはともかくデータ移行とか大丈夫?」
「えぅ、あぅ、あの、その……大丈夫です……その、岩巻さんに、バックアップの重要性については、教わったので……」
「そっか、じゃあ大丈夫か……そろそろ俺も失礼させてもらおうかな」
嫌なことがあった、というわけではないが風雲斎賀城は俺のメンタルを削りまくった……こんな緊張感はノーコンティニューでコスモ・バスターのキャンペーンTAをした時以来だ。
アレのラスボスステージは気が狂っていた、障害物皆無の平原ステージでそれまでに戦ってきたチャプターボス全員と途中セーブ無しで戦え、とか頭おかしい。
だだっ広いエリアに補給アイテムがポツポツ落ちてるけどそれを無尽蔵雑魚敵の絨毯が覆ってるので……思い出したら頭痛くなってきた、最終的に支援爆撃連打が最適解だったなぁ。埃まみれの畳をぶっ叩いたみたいに宙を舞う雑魚エネミーとNPC……あれはあれで風情があったと言えるだろうか。
「あう、その……」
「ん?」
「えと…………………………げ、玄関までお送りします……」
何やら壮絶な葛藤を感じさせる「間」を経て斎賀さんはそう告げた。がっくしと肩を落としている事から葛藤には敗北したようだが……
「まぁ帰ってすぐ、は無理だけど夜とかなら急いで新大陸行きの用意とかできるじゃん? あ、夜空いてる?」
「………っ! はい! 空いてます! 空けます!」
まぁぶっちゃけガチ廃人たる斎賀さんなら時間空いてるだろうな、っていう推測前提で聞いたんだけど。
廃人って時間を生み出す能力でもあるんじゃないか、って思うときあるよな。便秘にちょくちょく顔出すプロゲーマーだったり毎朝絶対ログインしてる最強の操り手だったり。
なお最近の「ルスト速報」によるとネフホロではブースターの過剰搭載による事故が多発しているらしい。物騒な環境だな、何が原因なんだか。
◇
果たしてこれは本当に現実であるのか。幾度となく抓った頬は赤くなっているが、果たしてそれは本当に痛みによるものであろうか? であれば抓っていない逆の頬も赤い理由は何故なのか。
「えへへへ、膝枕……」
突発的なアクシデントではあったが、彼の膝に己の頭を載せたという事実に玲の頬は否応なしに緩んでいく。
VRシステムが故障した事は本当に予期せぬ事態であったが、不幸中の幸いと言うべきか塞翁が馬と言うべきか。
にへらにへらと顔を緩ませながら玲は小躍りしつつ自室へと向かう。歩き慣れた廊下すらも、今の玲にとっては栄光へと続くレッドカーペットにも等しい。
「〜〜〜♪」
楽郎は見事に勘違いをしていたが、如何に名家の令嬢とて普段から和装と言うわけではない。端的に言って仕舞えば見栄を張っていた玲は部屋着に着替えて夜に備えるべく自室へと……と、玲が通過しようとしたタイミングで襖の一つが静かに開かれる。
「玲」
「は、はいなんでしょう仙姉さん」
「百から話は聞きました」
「………?」
対リュカオーン決戦を見据えて有給の行使に踏み切らんとしている姉の出鼻をくじくようなことをしてしまったのは若干の申し訳なさも感じるがそもそも社会人のくせしてログイン率高すぎるのは正直どうかと思っていたしかつてのクランメンバーの話ではどうも休日はほぼ一日中ログインしているらしいしここらで一度叱られるべ「玲、懸想している殿方がいるそうですね?」びゃ──────!!!?!?
「なっ、なななななななな……!?」
「……まぁ、殿方を自室に招いたという時点でもしやとは思っていましたが」
「ち、ちがっ……あぅ、あの、えと……」
「いいですか玲、斎賀家の女は代々……えぇ、この私も例外なく恋愛下手なのです。それは貴女も同様、分かっているのですか?」
「うっ……」
仙は知らない、その恋愛下手な妹がかれこれ三年近く恋慕を続けているという事実を。知っていればお説教ルートに分岐する事は火を見るより明らかであったので、ある意味ではもう一つの不幸中の幸いと言えるだろう。
「そんなわけで玲、人生の先達として私から貴女に助言を授けましょう」
「は、はぁ……」
とはいえ人生経験で言えば結婚まで至った先達と言うべき姉の金言、聞いて損はあるまいと玲は仙の手招きに従つて正座し耳を傾ける。そしてゆっくりと口を開いた仙は簡潔に一言。
「………既成事実です」
「失礼しました」
「待ちなさい玲、待つのです玲」
やはり斎賀家の女、0か100……否、1000かの極端な行動しか選べない一族の呪いは未だ強い。
◆
「ノーマン君……例のものは完成したのかね?」
「あっ、サンラクさん……! は、はいっ! 黄金の天秤商会からの援助もありまして、諸々の搭載は完了しました」
「結構……うん、素晴らしい……!」
「私も、まさかこのような形で夢を叶えられるとは……! 本当に、サンラクさんには感謝ばかりで……」
「何、これからも懇意にさせて貰えればこちらとしても助かるのでね……あぁそうだ、これの名を考えたのだったよ」
「ほう! お聞きしても?」
「戦士を運ぶ戦乙女の如き名と、そして主人に忠実な魔犬の如き名を持つ……そう、その名は」
「その名は……?」
「……ブリュンヒルデ・バスカヴィル……いや、"ブリュバス"だ」
恋愛の女神「ヒロインちゃんがあまりに雑魚いので助けてやるか」
乱数の女神「ギャグオチどーんwww www」
なおダイスロールで展開決めたので本当に乱数の女神が爆笑した結果こうなりました
2を引けていれば普通のラッキースケベ展開だったのに……
なお「作者がこのシーンまでに別の名前を思いつかなかったらブリュンヒルデ・バスカヴィル採用」が裏で進行していましたが結果はお察しです