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シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜  作者: 硬梨菜
龍よ、竜よ! われらが拓くは未知と真実
306/947

風雲斎賀城

サンラク:あー、大丈夫?


サイガ-0:ごめんなさい! あの、VRシステムが調子悪くて……


サンラク:だろうね


サンラク:でもヤバくない? 今すぐ修理に出したとしても絶対明日までには間に合わないだろうし


サイガ-0:ですよね……


サンラク:多分出力系に何か問題があると思うから、一応携帯端末経由でデータ移行の用意はした方がいいと思う


サンラク:一応聞くけど今すぐ新品に買い換える、とかは……


サイガ-0:できない事はない、ですけど……


サンラク:あー別に無理しなくてもいいよ、ヘッドギア型でも結構なお値段だしね


サイガ-0:修理に出すことにします、今日は約束を破ってしまうような事になってしまい申し訳ありません……


サンラク:いや、待った


サイガ-0:え?


サンラク:もしかしたらなんとかなるかも


サンラク:斎賀さんがレンタルオッケーかどうか次第ではあるけど






つまるところ、俺は二つのVRシステムを持っている。一つはプロゲーミングチーム「電脳大隊(サイバーバタリオン)」が贈ってきたイラスト付きの業務用……もといチェア型VRシステム、そしてもう一つはそれまで使っていたヘッドギア型VRシステムだ。

業務用にデータコンバートを行った以上、データリセットされたヘッドギア型は現状使う機会がない。これが通常時なら「早く修理から戻ってくるといいですね」で済ませるのだが、シャンフロは明日に新大陸調査船第二便の出航が控えている。

レイ氏はこの土壇場で乗員に割り込むアテがあるようだが、そもそもログイン出来ないのではそれ以前の問題だ。


と言うわけで俺は、現状使っていないヘッドギア型の貸し出しを提案したわけで。ついでに斎賀さんの故障したVRシステムを()るために段ボールを抱えつつだいぶ涼しくなった土曜の朝から外出しているのだった。








サンラク:というわけで今使ってないVRシステムを修理が終わるまで貸し出す、って訳よ


サイガ-0:いいんですか?


サンラク:まぁ色々あって今は使ってないから大丈夫


サンラク:でも大丈夫? 野郎が結構長いこと使ってた奴なんだけど


サイガ-0:大丈夫です! 全くもって! 問題はないです!


サイガ-0:はい!!


サンラク:お、おう……


サンラク:じゃあロックロールで……


サンラク:あ、確か「皇室花園インペリアルアヴァロン3」の発売日が昨日だっけ……じゃあ休みか


サイガ-0:インペリ、アル……?


サンラク:乙女ゲーの新作だよ、超大作らしいから土日は多分休みだな


サンラク:そういえば斎賀さん俺と同じ学区だし割と近所だよね?


サンラク:じゃあ直接持っていくよ


サンラク:一応簡単なチェックくらいなら出来るし、もしかしたら修理に出さなくても解決できるかもしれないし


サイガ-0:いいんですか? そんな、態々ご足労いただくような……


サンラク:フルダイブゲーマーは適度に運動しないとパフォーマンスに響くから気にしなくていいよ、ジョギングのコース変えるみたいなもんだし


サイガ-0:じゃ、じゃあ住所を送るので……でもやっぱり私が向かっ


サイガ-0:なんでもないです


サンラク:え?


サイガ-0:なんでもないです、はい


サイガ-0:偶然見かけたとかそういう感じなので調べたから知ってるというわけではないのでなんでもないで


サイガ-0:[このメッセージは削除されました]


サンラク:ま、まぁいいや


サンラク:じゃあ適当に朝飯食べたら伺わせてもらいます


サイガ-0:分かりました








VRシステムの不調を調べる以上、彼を自宅に上げるのは当然の帰結でありそれ即ち「自宅デート」に該当するのでは、という結論に至った玲の思考が超新星爆発を起こしたのは五分後のことであった。








陽務家が建っている学区は生徒が殆どいない陸の孤島だ。

というのもこの辺りは二十世紀辺りからここに住んでいる人達が多く集まった地区であるため年齢層が高めなのだ、むしろなんでこんな場所に家建てたんだと一度両親に聞いてみたら「偶然この土地が安かったから」というありきたりな理由であった。

実際のところ未成年が住んでいないわけでもないのだが、ウチの高校に在籍している同年代に絞ると知っている限りでは斎賀さんくらいしか該当しない。


「えーと、ここを右に曲がって……ここか」


割と駆け足でウチから十五分くらいか、結構近いな。

というか……あれ、これ地図上に区分けなくデカデカと表示されたブロック全部単一の土地? この壁の囲い全部……えっ、デカっ。陽務家を縦横四個並べてつまり単純に坪数が十六倍くらいあるんじゃ……野球出来そうだなオイ。


「これが……っ、斎賀家の力……っ!?」


ていうか玄関どこだ、まさかあの城攻めシチュでよく破城槌とか使ってブチ開けるタイプっぽい門が玄関なのか? 本当にここ現代日本なんですかね、武家屋敷じゃんこれ完全に武家屋敷じゃん。


「いやあれどう見ても宅配便の配達員とかが立つ場所じゃないだろ……」


やっぱりロックロール前とかで待ち合わせた方が……いや、流石に立ち作業でVRシステムのチェックは無理だ。岩巻さんが大陸に覇を唱えんとする皇室に使える平民上がりのメイドとして異様に男ばかりな皇室の攻略に旅立った以上、流石にそこらのファミレスで機械いじりってのアレだ。


しょうがない、斎賀さんに「到着したけど入り口どこ?」送信っと。とりあえず門の前にでも行って待機してるか……ん?


「……メラ、……か?」


「……ぶ、………死角……ら」


「…くぞ」


何だろう、妙なポージングで門の前にへばりついた子供達がいる。見るからに悪ガキといった風情だが、なんであんなところに……あ、こっちに走ってきた。

何故か俺を見て「やべぇ!」とでも言いたげな顔をして走り去っていったが……まぁいいや、門の前に移動して……あ、普通に人間用のドアもあるのな、なんか安心した。


『……どちら様でしょうか?』


「うおおビビったぁ!?」


俺インターホン押してないで御座るヨ!? まさか専用のスタッフが二十四時間玄関前を監視して来客に備えているとか!?

よくよく考えればあのクソガキ達が変なポーズで壁に張り付いていた場所とインターホンの場所からして所謂「ピンポンダッシュ」的な行動をしたからこそ、ちょうどのタイミングで俺とインターホンに応じた人がカチ合わせたのだと理解できたのだが、多少……いや結構テンパっていた俺がそれに気づいたのはもう少し先になる。


「んぁ、えっ、あー…………斎賀 玲さんにお届けもの? でして」


『…………』


うわ凄い、一言も喋ってないのに不信感がひしひしと伝わってくる。


『……アポイントメントは取られましたか?』


アポイントメント……SNSも一応該当するよな、うん。


「あーはい、事前に連絡はしています」


『……………少々お待ちを』


待つこと数分、ギギギと門が開いて……あ、そっち?


いや違うな、車が中から外に出てるのか。やはりというか外車が出ていったのを見送り、入っていいものかと立ち尽くしていると確認に行っていたと思しきインターホンの人から入って良いとのお言葉を頂いたので遂に斎賀邸への侵入を果たしたのであった。


いや侵入だと捕まるわ。そんな事を考えていると、現代日本において生で見ることは結構レアな和装の中年女性が俺の前へと現れた。使用人……実在するのか。


「陽務様、ですね?」


「様って……あ、はい」


「玲様は少々こちらへ来るのが遅れると思われますので、こちらへ……」


どうしよう、ドレスコードとかあったのかな。思いっきり私服なんだが、少なくともジャージよりはマシだったか。

軽々しく修理を安請け合いしたのは失敗だったか……そんな事を考えながら俺は斎賀邸へと歩みを進めるのだった。










「………」


「しばしお待ちを」


ずっと差し出された緑茶はへし折れた茶柱がクルクルと緑色の海を泳いでいた。こ、これは「幸運だろうがへし折れる」という凶兆的な……ええい心を強く持て俺。


ランダムテレポートでモンスターハウスに叩き込まれた気分で正座していると、ふと視界の隅に妙なものが映り込んだ事に気づく。


「あれ、これって……」


それは例えるなら「サーフボードを模したキーホルダーに返しのついた針を付けたもの」とでも言うべき奇妙なシロモノだ。

とはいえ俺はこれを知っている、というか同じようなものがウチにダース単位である。


「……ふむ、それは儂のものであるのだが?」


「え? ……ひひゅっ」


具体的に「何」に使うものだったかと考えていた俺にかけられた声、振り返ればそこにはどう見ても日本刀とかで無双するタイプのキャラデザなご老人が直立不動で俺を見つめていた。




間違いない、この人は風雲斎賀城のラスボスだ……徘徊系のボスとか聞いてないんですけど。


ヴォーン……「風雲斎賀城」(ダクソ3でアノール・ロンドの文字が表示された時風)



なおヒロインちゃんは禊やら掃除やらメイクやら服選びやらでパニックになり、長女に捕まって説教を受けている模様




・風雲斎賀城……もとい斎賀邸

敷地内に弓道場やら武道場やらが存在する。

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― 新着の感想 ―
今までのコメント欄にもいたけどクソ雑魚ヒロインちゃん敵視してる人多すぎでしょ
空想の話かと思っていたが、実在したんだな「ゲーム脳」。
ストーカーすぎてきもい
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