英紙が「責任ある積極財政」を危惧 高市首相は「債務危機は起きない」という“危険な妄想”にとりつかれている
高市政権が打ち出した「責任ある積極財政」は、戦略的な財政出動で所得・消費を増やし、税率を上げずとも税収を増加させて、成長率の範囲内で債務残高の伸び率を抑えると謳っている。だが経済学者で米ブルッキングス研究所シニアフェローのロビン・ブルックスはこの政策に対し、日本政府が抱える「巨額の借金」を軽視していると懸念を示す。 【画像】英紙が「責任ある積極財政」を危惧 高市首相は「債務危機は起きない」という“危険な妄想”にとりつかれている 日本は長年、天文学的な額の政府債務を抱えている。だが日本国債の金利は、この10年ほぼ一貫して低かった。 こうした状況によって、日本政府は「巨額の政府債務は問題ではない」という危険な妄想にとりつかれている。 2025年10月に新首相に就任した高市早苗が前政権との差別化を狙って打ち出した「責任ある積極財政」によって、この危険な状況に注目が集まっている。日本が抱える巨額の債務は不可抗力で起きたことだが、低い金利は意図的なものだった。その点が問題なのだ。
円安の原因は日本政府の機能不全
日本銀行はこれまで、長期金利を0%前後に誘導するため、国債の買い入れを実施するイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)によって、国債の金利を低く抑えてきた。 新型コロナのパンデミックが起きるまでは、YCCは的を射た金融政策だった。だがその後、世界は急激なインフレへ傾いた。先進各国の中央銀行は政策金利をいっせいに引き上げ、経済と市場を支えるために実施していた資産買い入れによる量的緩和から、量的引き締め政策へと舵をきった。 これにより世界的に長期国債金利が急上昇したが、日本だけがそうならなかった。政府債務の総額がきわめて大きいことから、国債利回りを抑制せざるを得なかったからだ。その結果、国内外の金利差が拡大し、円の価値は大幅に下落した。 世界各国がインフレ対策のために利上げをおこなうと、日本も2024年3月にYCCを終わらせた。こうした状況でYCCにこだわれば、自国通貨を暴落させかねない。 さらにこのとき、重要な事実が明らかになった。すなわち、YCCでは日本が抱える巨額の政府債務は消えない。債券市場で起きていた危機を、通貨危機に変えただけだった。 コロナ禍以降の円安は、日本を大きく混乱させている。2022年には財務省が市場に介入して円の下落を抑えこもうとする一方、日銀は相変わらずYCC政策を継続するという、正反対の意図の政策が同時進行していた。これは驚くべき政策の不整合であり、日本の政治がいかに機能不全に陥っていたかを物語っている。
Robin Brooks