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発信者情報開示に係る意見照会書が届いた方へ(まとめと解説)

*令和7年6月10日更新
この分野については無料電話法律相談を実施しています。
ご希望の方は,「お問い合わせ」またはi@atlaw.jpまで,氏名,住所,連絡先電話番号,相手方とプロバイダを明記の上,連絡をお願いします(請求者・プロバイダの弁護もしているので利益相反等の事情で承れないこともあります。)。
なお,実際に非開示にできた事例で参考になるものについては,「【発信者側】発信者情報開示請求に対して非開示にできた事例」を参照してください。
また、発信者・請求者・プロバイダの三者を弁護する立場から、記事をまとめたものとして、「請求者と発信者のための発信者情報開示請求&賠償請求実務解説」があります。全て無料で読めるnoteの機能で作成したマガジンです。

最初にまとめ

1.まず,落ち着きましょう
2.これが来たからといってあなたの投稿が違法であると確定したわけではありません。開示になると決まったわけでもありません。
3.「言葉」だけで決まる問題ではありません。私が投稿者を担当した事件でも,ここには書けないような汚い悪口でも非開示になったケースは複数あります。
4.仮にあなたの投稿が違法であるとしても,相手の言い分が全て通るわけでもなければ,いいなりになる必要があるわけではありません。
5.最近は,SLAPP訴訟(恫喝訴訟)のようなケースも増えていますので,あなたが悪いと確定した訳ではありません。ただし,SLAPPと決めつけて自分で対処すると痛い目に遭いかねません。SLAPPだからこそ,巧妙であったりします。
6.刑事事件になる可能性もありますが,それはよっぽど悪質なものに限られます(ただし,最近は,そのハードルは下がっているので注意は必要です。)。
7.回答期限は延長してもらえるケースがほとんどです。「弁護士に相談している」といえば,なおさらです。まずは延長してもらって落ち着いて考えましょう。
8.弁護士にはすぐに相談に行きましょう。ギリギリですとうまくいきません。最悪なのが延長してもらってその期限も目前の段階でいくケースです。
9.不安なあなたはデマに弱くなっています。それは仕方の無いことですが,「ネットde真実」の法律情報に目覚めて罠にはまらないでください。
10.ネットで都合の良い情報をかき集めるのはよしましょう
11.自分で回答書を作成するなら,「プラス」より「マイナス」に気をつけましょう。最近,これを発信者に不利な証拠に使う・使われるケースが増えています。
12.「示談は不利」はデマです。不利な示談はありますが,示談が不利な訳ではありません。
13.「金額は判例で決まる」はデマです。そんな都合のいい判例はありません。似たような悪口なのに1件当たり30倍以上の差がついたことがあります(ただし30倍になったのは本人訴訟なので一般化できません。)。
14.「本人訴訟で,せいぜい20万30万円で済む」というのもデマです。これはあり得ないわけではないですが,発信者情報開示請求を経由したネット上の表現トラブルで,かつ,被告本人訴訟に絞ると最近のものでは50万円以下はほぼ見当たらず,平均値は100万円程度です(個別判断ですので,この数字は絶対視すべきではないですが。)。
15.「裁判所は判例に従って公平に判断するから本人訴訟で大丈夫」もデマです。もしそうなら,前記の様な大差がつくわけありません。すこし訴訟法を勉強すれば分かりますが,「裁判所が公平に判断する」から本人訴訟にリスクがあるのです。本人訴訟するなとはいいませんが,弁護士であっても自分の事件は弁護士を頼むことが普通です。
16.「名誉毀損と違ってプライバシー侵害は安心」はデマです。確かにプライバシー侵害は犯罪になりませんが,ネット上のプライバシー侵害は名誉毀損につながりやすいので分離はできないですし,賠償金はプライバシー侵害の方が高くなるケースもあり得ます。
17.「裁判外請求だから開示はあり得ない」もデマです。プロバイダと権利によっては開示されますので先例が重要です。
18.この種事件の限りませんが,とにかく,狼狽して相手の言い分通りに応じることが1番に,そしてネット上の都合の良いだけのデマを信じ込むのが2番目に不利益なことです。まずは落ち着きましょう。

最近の相談傾向

最近(といっても10年前からやっていますが,特にここ2,3年はとても多いです。),「発信情報開示に係る意見照会書がとどいた」という相談が,特に個人の方から殺到しています。

基本的に,個人の方の相談ですので,初回無料の電話相談を実施していますが,皆さん,かなり不安が大きい,ネットのデマに乗せられている,ということも多く,相談にたどり着けない人も多いのではないかと思います。

なお、最近は、開示請求を弁護士抜きで行うケースも増えており、それで成功するケースも珍しくありません。一方で、意見照会への対応は、私の経験からも、かなり的外れな反論がされているのが実情です。

参考情報等

この問題については,ネット投稿者の責任についてのまとめQ&A(+ネット上の誤解)において,請求者(被害者であるとは限らないので,こういう言い方をしています。)と投稿者の双方の立場で,特にネット上の誤解・デマを中心に解説しました。
また,弁護士向けの専門書として,これらの問題,経験を踏まえて「インターネット権利侵害 削除請求・発信者情報開示請求“後”の法的対応Q&A」という本も出させて頂きました(見通しの立て方,重要裁判例,発信者情報開示に係る意見照会書への回答作成,賠償請求の交渉と裁判対応について解説した書籍です。)。

ただ,前者は長文ですし,後者はあくまで弁護士向けの書籍です。
そこで,ひとまず落ち着くのが大事ということで,冒頭にまとめました。不安が強いと,不利な内容で和解(示談)してしまったり,「ネットde真実の法律情報に目覚めました!」というように,デマと心中する羽目になります。

まとめ

冒頭にあるとおり,とにかく落ち着くこと,そして,これはどんな事件でもそうですが,紛争の渦中にあること,しかもそうなった直後というのは,一番判断力が低下しています。ネットのデマの餌食になりやすい,そのことを頭に入れておくだけでも,大分リスクは軽減出来ます。

ちょっと付言:被害救済との関係

発信者が,狼狽やデマに騙されて不利な和解をしたり,あるいは本人訴訟に挑んで,高額判決(特に発信者情報開示請求の弁護士費用の負担あり判決)をされてしまう,という例は決して少なくありません
もちろん,これは健全な状態であるとはいえません。
もっとも,多くの人が指摘するように,発信者情報開示請求からの賠償請求で,被害回復つまりは黒字にすることは困難です。特に相手が弁護士を付けて本気で反論をしてくるとかなり難しくなるという現実があります。
発信者のうかつな対応が,実はネット上の誹謗中傷の被害回復に役に立っているという,なんとも悩ましい歪な現状があるといえるのかもしれません。

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