— 違法確定と誤認させる表現に要注意 —
はじめに(公益性の明示)
SNSや掲示板における意見表明を巡り、発信者情報開示請求→示談金の支払い要求へと進む事例が増えています。 本記事は特定の弁護士や案件を断定・非難するものではありません。 一方で、一般の利用者が誤認しやすい運用パターンが存在するため、消費者・表現者保護の観点(公益性)から、類型論として注意点を整理します。
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- 問題となりやすい運用の「典型パターン」
以下の要素が同時に揃う場合、実務上「示談金回収型」と疑われやすいと指摘されています。 1. 発信者情報開示までは進める 開示は入口審査(権利侵害の可能性)であり、違法確定の判断ではない。 2. 「違法と判断された」等の断定表現を用いる 実際には裁判所が違法性を確定判断していない段階でも、確定したかのように表現。 3. 違法性の具体的理由の提示が乏しい どの投稿の、どの表現が、どの権利を、どう侵害したのかの特定が不十分。 4. 少額・即決の金額提示と振込先の即記載 争点整理より早期回収を優先する設計。 5. 正式書面ではなくメール中心 反論に弱い表現を柔らかい媒体で提示。
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- なぜ誤認が生じるのか(重要)
発信者情報開示命令=違法確定ではありません。 裁判所が行うのは形式的・入口審査であり、違法性の確定判断は本訴等で初めて行われます。
にもかかわらず、
「(裁判所で)違法と判断された結果、特定した」
といった表現が使われると、一般の受け手は 「裁判で負けた」「違法が確定した」と誤認しやすくなります。
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- 交渉局面でも許されない線引き
交渉段階で許されるのは、 • 評価や見解の主張 • リスクの示唆(可能性)
までです。 存在しない司法判断を事実として断定する表示は、 交渉であっても不適切(虚偽・誤認惹起)と評価され得ます。
適切な表現例
「権利侵害の可能性が否定できないとして開示命令が認められました。」
不適切な表現例
「裁判所で違法と判断されました。」
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- なぜこの型が使われやすいのか(構造) • 本訴は時間・コスト・リスクが高い • 開示は通ったが、確定判断はない • そこで、心理的圧力で早期回収を狙う
結果として、曖昧だが“効く”表現が選ばれやすくなります。
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- 受け手が取るべき実務的チェックリスト
支払いを検討する前に、最低限次を確認してください。 • ① 判決・決定番号、日付、裁判官名は明示されているか • ② 違法と判断した具体的理由が書かれているか • ③ どの表現がどの権利を侵害したのか特定されているか • ④ 「可能性」と「確定」を混同していないか
一つでも欠ける場合、即断は避けるべきです。
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- まとめ(公益的結論) • 発信者情報開示は違法確定ではない • 「違法と判断された」との断定表現は誤認を招きやすい • 少額即決・説明不足の要求は回収優先の運用と見られがち • 冷静な確認と記録化が、表現の自由と消費者保護につながる
本記事は、正当な権利救済を否定するものではありません。 同時に、誤認誘導による不当な圧力から一般の利用者を守るための注意喚起です。
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付録(任意)
短文の是正要請テンプレ(非対立)
「発信者情報開示は違法性の確定判断ではないと理解しています。 『違法と判断された』との記載について、根拠となる決定番号・理由のご提示をお願いします。」