教育から見ると、あるフィンランド人がアジア人に対して差別的なのも、むべなるかなという話
ミス・フィンランドが中華料理を食べながら釣り目をして、しょーもない言い訳&反省するそぶりを見せずに、ミス・フィンランドの座を剥奪されましたが、この釣り目をするのは典型的なアジア人差別であり、まあ剥奪されてしかるべきだよなと思います。これにバカな国会議員が、ミス・フィンランドと共にあると釣り目の写真を投稿して、Change.orgで署名が立ち上がるなど大炎上していますが(私はしていませんが、興味があれば署名どうぞ⇒リンク)、まあどこの国にもバカな政治家はいるもんだとも思います。
ただ、あのリベラルな福祉国家なフィンランドですら人種差別・・・という意見はちょっと違うと思ったし、日本についての示唆もあるのかなと思ったので、少し感想を書いておこうと思います。
移民が少ないフィンランド
北欧というと何となく似たような国々というイメージがあるかもしれませんし、事実私も大学教員になるまでそう思っていました。しかし、大学教員になって1年半で4回(!)北欧に渡航し、先方の大学と交換留学協定について議論を重ねる中で、実は結構違う国々であるという事に気が付きました。
これを端的に表すデータが、海外生まれの人口比率です。スウェーデンなんかは、人口の1/4が外国生まれか、外国にルーツのある人になっていて、相当に人種的に多様な国であるんだなという事が読み取れます。その一方でフィンランドを見ると、この値は1/10にも達しておらず、様相がスウェーデンとはかなり異なる事が見て取れます。
さらに、フィンランドはロシアと国境を接しているという特徴を持ちます。Wikipediaでも見てもらうと記述がありますが、ロシアのウクライナ侵攻はマジで他人事ではないので、多くのウクライナ難民を受け入れています。裏を返すと、非白人の移民の受け入れというのは限定的な国だと言えます。
なので、フィンランドの人達が非白人に寛容な人達かと言われると、非白人と接する機会が他の北欧比で半分以下であることを考慮すると、そうではないんじゃないかなー?、と私は考えます。
教育に力を入れる国が排他的なのも分かるし、日米のリベラルが移民賛成なのも分かるし
とは言え、フィンランドは福祉国家なのに排他的だなんて!、と思うかもしれませんし、確かに福祉国家思想に共鳴しそうなアメリカ・日本のリベラルな人達は排他的ではなさそうですよね。
ここも実はちょっと北欧が一枚岩ではない点になります。福祉国家は教育に力を入れていると仮定すると、いくつかの北欧の国々には疑義が付きますが、これを説明するために、少し欧州の大学システムについて話をしておこうと思います。
欧州には、研究大学と実践大学(University of Applied Science)の2種類の高等教育機関が存在しています。少し詳しく知りたい人にはリンクを置いとくので、是非参照してもらえればと思いますが、簡単に説明してみようと思います。
研究大学は文字通り、研究が大学教員の主たる役割となる大学で、大学院が併設されている事が多く、抽象的で職業に直結しないことが教えられています。それに対して実践大学は、教育が大学教員の主たる役割となる大学で、大学院が無いか、あっても修士号までで、具体的で職業に直結する内容を教えています。具体的に言えば、社会福祉士・看護師・歯科衛生士・農学・工学・スポーツ関係などが扱われていたりします。
では、教師の育成は研究大学なのか、それとも実践大学なのかですが、これが北欧諸国で割れています。デンマークとスウェーデンは明確に実践大学に頼っています。うちと提携関係にある所だと、VIA・UCN・KP・UCSYD(デンマーク)、Kristianstad University(スウェーデン)が、実践大学に該当します。これに対して、フィンランドにも実践大学があるのですが、そこではなく研究大学で教員養成を行い、教員には修士号取得が求められています。ちなみにですがノルウェーはこの中間で、実践大学で教員養成をしていますが、フィンランドを目指すんだという事で、実践大学の中で修士号を取得するモデルを実験している所になります。
この教員養成の違いを考えると、やはりフィンランドは北欧諸国の中でも最も教育に力を入れていて、デンマークは、ホルケホイスコーレなど様々な取り組みで日本でも耳目を集めていますが、実は微妙な所があるのかなという感じがしますし、先方の大学教員と話していても、それを感じる所があります。
話を戻しますが、北欧を回って疑問に思ったのが、逆説的な感じもしますが教育に力を入れている国ほど移民に対して排他的になりやすいのではないか?という点です。具体的には、あれだけ公立学校で、教育と民主主義に力点を置きながら教育がしっかりなされていると、大人になってから、それを受けずに大人になった人達とやっていけるのかな?という疑問です。
大学教員なんだから関連する論文でも探せよ!という話ではありますが(時間が無く…)、この疑問に対して、米国や日本の高学歴リベラルが移民に寛容でありがちなのがアネクドートになるのかなと感じています。所謂Neighborhood Schoolsで学んできている事が多い北欧の高学歴の人達と異なり、それが私立学校であるか、学区制で独立採算制を取られているか、というシステムの違いはありますが、日本とアメリカの高学歴リベラルは義務教育段階から一般市民とは隔離された環境で教育を受けているケースが散見されます。つまり、教育を階層維持・移動の手段としてしか見做しておらず、民主主義を促進する手段としての教育が見えていないので、自分達と異なる教育を受けてきた人達でも、自分達の階層維持の手段となるのであれば受け入れられるのかなと。
フィンランドの人達が、自分達が受けてきたような民主主義を支えるための教育を受けていない、特に非白人国家で教育を受けてきた人達をバルバロイぐらいに思っていたとしても、まあありうる話なのかなと思ったり思わなかったり。
北欧の国際感覚は、かなり狭め
日本の偉い人達が語る国際感覚・グローバル人材的なものも、言語的には英語しか見ていない、文化圏的にはアングロサクソンしか見ていない、という狭量さに辟易とする事がありますが、留学関係の業務をしていると、北欧のそれもどっこいどっこいだなと考えさせられる事があります。
その原因の一つが、EUの奨学金です。EUはエラスムス+という事業を実施しています。このエラスムス+の中にもいくつかスキームが存在しているのですが、その中でも大きいのが国際交流事業です。この国際交流事業は、交換留学に出る学生に対する奨学金と、大学教員・職員が先方に出向いて研修を受けたり授業を行ったりするスタッフエクスチェンジ、という二本柱から成っています。私が短期間の間に何度も北欧にぶっ飛びカードしている原因もこれです。
このエラスムス+、私の学生の中にも奨学金を受け取っている子がいるので大変ありがたい制度なのですが、日本の大学にとっては一つ厄介な所があります。それは私の研究対象でもない遠い遠い欧州まで何度も出張させられる、欧州域内での奨学金が潤沢にあるのに対して、域外への奨学金が多くはないため、欧州の学生の交換留学が欧州内に留まりがちになってしまうというものです。
エラスムス+の報告書に目を通してみると、奨学金を貰って欧州域外に交換留学に出た学生の数は、例えば奨学金を貰ってスペインにやって来る留学生の1/5程度に過ぎないですし、フランスやドイツのそれの1/3程度でしかありません。実際に、うちの大学の交換留学も、圧倒的に送り出し過多になっていて、いつ先方に提携を切られてもおかしくないという危機的な状況に晒されています。実際に、デンマーク政府の方針転換にそれが相まってデンマークの提携先に切られまくっているのですが、先方の留学コーディネーターに原因の聞き取り調査をすると、新型コロナ禍以降に学生達が遠くへ行く事を忌避し始めた事と、学生が欧州圏内で滞留しがちという2点がよく言及されます。
この結果、この20年ぐらい、欧州の学生達にとって国際的な経験というと、相当割合が欧州内に限られる事になってしまっています。勿論、昔は留学そのもののハードルが今よりも高かったので絶対数で見ればそうでもないのですが、欧州の教育水準の高い人達の国際感覚は、相対的に見ると昔よりも狭いものになっている感じがします。
また、同様のことは国際感覚を有しているはずの、国際教育・比較教育分野の教員、留学業務に当たっている大学職員についても当てはまる所があるのかなと感じています。
私はジョークで北欧は私の出身県の隣にある滋賀県みたいなものだという事があります。それはなぜかというと、バルト海をグルっと囲む中に多数の国があり、それぞれ別の文化があると雖も、訪れてみた感じだと、それは滋賀県の湖を隔ててあっち側とこっち側の差を大きくしただけに過ぎない感じだったからです。
しかし、北欧の国際教育分野の方々は、バルト海を飛び越えただけでインターナショナル!と何の疑いもなく主張されがちです。確かに国境は超えているのでインターナショナルではあるものの、私の感覚からするとインター…ナショナル?という感じがあり、かなり狭い国際感覚だなと議論していて感じることがしばしばあったりします。
ただ、これは善し悪しがあって、私がこれまで人生で16回引越している事、過去2年間だけでもアイスランド・アメリカ・エチオピア・オーストリア・オランダ・韓国・中国・スイス・スウェーデン・スロバキア・タイ・チェコ・デンマーク・トルコ・ネパール・パキスタン・ハンガリー・フィンランド・ベルギー・南スーダン・モザンビーク・リトアニアに行っている事、を伝えると、先方が尊敬のまなざしと共に、あなたの授業を私の学生にも受けさせたいです是非協定を結びましょう!となることがよくあるからです。先方もご自身の国際感覚が狭いものであることにハッとされているのかなと思います。
これを契機にフィンランドからもっと日本に留学に来てもらおう!
こうやってフィンランドの移民の割合、教育制度、交換留学を取り巻く環境を眺めてみると、アジア人差別をするミスや政治家がいても、まあそういった奴も出てきちゃうよねと思います。
ただ、この20年で学力を急激に低下させたことを反面教師に、民主主義と教育の在り方を教師に、日本の学生がフィンランドの教育から学べることは多くあると感じています。しかし、交換留学というのは基本的に送り出しと迎え入れの数が均衡しているべきものなのに、日本からフィンランドに行く学生数に対して、フィンランドから日本に来る学生数が圧倒的に少ないという不均衡が生じています。
そう考えると、もっとフィンランドの若い人達に日本に来てもらって、日本人が向こうで学ぶ枠を確保しつつ、彼ら・彼女らに日本やアジアに対する理解を深めて貰えばいいんじゃねーの?、というのは北欧留学を売りにする学科の留学担当の教員のポジショントークですね苦笑。
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サルタック・シクシャは、ネパールの不利な環境にある子供達にエビデンスに基づいた良質な教育を届けるために活動していて、現在は学校閉鎖中の子供達の学びを止めないよう支援を行っています。100円のサポートで1冊の本を子供達に届ける事ができます。どうぞよろしくお願いします。


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