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事後の後始末を急いで済ませ、警備員の懐中電灯の光が廊下を舐めるのと入れ違いに校舎を飛び出したのは、本当にギリギリのタイミングだった。あと数十秒遅れていれば、間違いなく見つかっていただろう。 心臓が早鐘を打っているが、それはスリルによるものだけではない。 夜の帳が下りた通学路。俺の左腕には、風夏がぴたりと身を寄せ、その豊満な胸を押し付けているからだ。
「んふふ、危機一髪だったね〜〜♡」
彼女は楽しそうに笑いながら、俺の腕を自身の深い谷間へと抱え込むように力を込めた。 その瞬間、腕に伝わる感触に俺の脳が痺れる。 制服越しでも感じたあの「スライム」のような異次元の柔らかさが、今はさらにダイレクトに、俺の二の腕の形状に合わせて形を変え、とろりと包み込んでくるのだ。歩くたびにボヨン、ボヨンと重々しく波打ち、まるで俺の腕を飲み込もうとしているかのような錯覚さえ覚える。
「……お前、歩きにくくないのかよ」 「えー? 藤吾とくっつけて嬉しいから、全然平気だしっ♡」
あざとい。だが、そのあざとさが悔しいほどに可愛い。 俺たちは途中、コンビニに寄った。お泊まりセットや飲み物をカゴに入れ、最後に俺がゴムの箱に手を伸ばした、その時だ。
「……ん? いらないでしょ、これ」
風夏は悪戯っぽい笑みを浮かべると、俺の手から箱を奪い取り、棚に戻してしまった。
「だって、ピル飲んでるし……藤吾と『仲良し』するのに、邪魔なだけじゃん♡」
店員の視線が突き刺さるのも構わず、彼女は俺の耳元でそう囁いた。その大胆さに、俺の羞恥心は期待感へと塗り替えられていく。
風夏のマンションは、学校から二駅ほど離れた場所にあった。 オートロックを抜け、彼女の部屋へと足を踏み入れる。
「おじゃまします……って」
玄関を抜け、リビングに入った俺は、予想外の光景に目を丸くした。 ギャルの部屋という偏見から、服やコスメが散乱した極彩色の部屋を想像していたのだが、そこは驚くほど物が少なく、整然としたシンプルな空間だったのだ。 家具は最低限。生活感すら希薄なほどに片付いている。
「……意外だよね?」「え、あ、うん。もっとこう、ごちゃごちゃしてるかと」
俺の反応を見て、風夏は少し照れくさそうに頬を掻いた。
「あー、よく言われる。でもあたし、部屋は基本寝てお風呂入るためだけの場所だし。着替えとかメイクはドレッサー周りだけで済ませちゃうからさ」
彼女はコンビニの袋をテーブルに置くと、少しはにかんだような上目遣いで俺を見上げた。
「……こんな何もない部屋だから、あたし、部屋に男入れたことないんだよね」 「えっ?」 「藤吾が、初めてだよ」
チュッ、と。 風夏は背伸びをして、俺の頬に柔らかい唇を押し付けた。 その一言とキスの威力は絶大だった。道中の夜風で少しだけ落ち着きを取り戻しかけていた俺の逸物は、その瞬間に再び血液を充填させ、ズボンの中でビクンと跳ねて戦闘態勢を取り戻した。
股間の変化を見逃さなかった風夏が、嬉しそうに目を細める。
「んふふ……♡ もう待ちきれないよね♡ ベッド、あっちだよ」
彼女に手を引かれ、俺たちは清潔なシーツが敷かれたベッドへと雪崩れ込んだ。
そこからは、ブレーキの壊れた獣同士の交わりだった。 驚くべきことに、教室でのあれでも、彼女なりに外での行為に遠慮があったらしい。二人きりのプライベート空間に入った途端、風夏の積極性はさらに増していたのだ。
「ねえ、あたしのおっぱい、もっと見て……♡ さっき、おっぱい好きって言ったじゃん♡」
風夏は俺の上に跨ると、その巨大な爆乳を俺の顔面へと押し付けてきた。 視界が肌色で埋め尽くされる。鼻腔が彼女の甘い匂いで満たされる。 そして彼女は、俺の屹立した肉棒を、その深い谷間へと挟み込んだ。
「見ててね……藤吾のちんちん、あたしのおっぱいに食べられちゃうよぉ……♡」
彼女が上半身を前後させると、俺の剛直は文字通り、彼女の柔らかすぎる肉の海へと沈んでいった。 いわゆるパイズリだが、その次元が違う。 通常なら感じるはずの「挟んでいる圧迫感」がない。ただひたすらに、温かく湿ったスライムのような脂肪が、俺の竿の形状に合わせて密着し、ヌルヌルと動き回るのだ。
「んっ、ふふっ♡ すごい……あたしのおっぱいからハミ出るのなんて、初めてだよぉ……♡」
風夏は自身の胸の谷間から、隠しきれずに飛び出してくる俺の亀頭を見て、うっとりとした声を上げた。 どんな男のモノも飲み込んできたであろうその巨大な双丘をもってしても、俺のサイズは包みきれない。その事実が、彼女の征服欲とマゾヒズムを同時に刺激しているようだ。
「あ、くっ……風夏、それ、ヤバい……ッ!」 「イク? おっぱいでイッちゃう? ……だーめ♡ まだまだヤるんだからっ♡」
寸止めを食らい、翻弄されながら、俺たちは何度も体位を変え、貪るように求め合った。
「はぁ、はぁ……汗、かいたな」 「ん……じゃあ、シャワー浴びよっか? ……一緒に入る?」
汗を流すという名目で狭いユニットバスに入ったが、そこで何もしないでいられるはずがなかった。 温かいシャワーが降り注ぐ中、濡れた風夏の身体はさらに艶めかしさを増していた。水滴を弾く肌、濡れて張り付く金髪、そして重力を受けて垂れる重量感たっぷりの乳房。
「んっ……ふぁっ♡ 藤吾、あついぃ……っ♡」
俺は彼女を壁に手をつかせ、背後から覆い被さるようにして挿入した。 バックの体位は、彼女の豊満な尻と、そこから伸びるくびれのラインを堪能できる特等席だ。 お湯と混じり合った愛液が、結合部から泡立って滴り落ちる。 鏡越しに目が合うと、風夏はとろんとした瞳で舌を出し、だらしなく笑った。
「気持ちいい……っ♡ お風呂のエッチ、滑って、奥まで入るぅ……ッ♡」
浴室に響く水音と肉の衝突音。 俺たちは洗い流すそばから新たな汗と体液を撒き散らし、何度目かわからない絶頂を迎えた。
◇
窓から差し込む日差しが、瞼を焼いた。 重たい意識を無理やり浮上させ、枕元のスマホを確認した俺は、血の気が引くのを感じた。
「……は?」
画面に表示されている時刻は、9:15。 SHRどころか、一時間目の授業が始まっている時間だ。
「や、やばい……! 完全に遅刻だ……っ! 三井先生に殺される……ッ!」
俺は飛び起きようとした。だが、腰元に感じる「重み」と「温もり」に阻まれる。
「んちゅ……ちゅぷ……っ♡」
布団をめくると、そこには風夏が潜り込んでいた。 彼女は俺の股間に顔を埋め、朝立ちで元気に反り上がった俺のイチモツを、まるで朝食のキャンディか何かのように頬張り、愛おしそうに舐め回していたのだ。
「ふ、風夏!? お前、何して……時間! 学校遅れるぞ!」 「んむ……ぷぁっ♡」
風夏は先端から口を離すと、唾液の糸を引きながら、とろけきった笑顔で俺を見上げた。 その瞳に、焦りの色は微塵もない。あるのは、満たされた情欲と、さらなる快楽への渇望だけだ。
「ねえ……藤吾ぉ」
彼女は妖艶に目を細め、再び俺の亀頭を舌先で転がしながら、甘く囁いた。
「もう今日……学校、よくない?」 「は……?」 「だってぇ……藤吾のここ、まだまだ元気だしぃ……♡ あたしも、もっと藤吾といっぱいしたいもん……♡」
それは、悪魔の囁きだった。 本来なら、ここで振り払ってでも登校すべきだ。三井先生の冷たい視線と説教が待っているとしても。 だが、風夏の口腔内の温かさと、巧みな舌使いが、俺の思考力を物理的に溶かしていく。
「んぶ……じゅるるっ、ちゅぽ……っ♡ さぼっちゃお? ね? 藤吾……♡」
再び深々と根元まで咥え込まれ、喉奥で吸い上げられる快感に、俺の身体から力が抜けていく。 頭の片隅で、鬼の形相をした三井先生が何か叫んでいる気がしたが、それもすぐに快楽の彼方へと消え失せた。
「……あぁ、そうだな。……サボるか」
俺は枕に頭を沈め、風夏の頭を優しく撫でた。 こうして俺は、なし崩し的に堕落への一歩を踏み出し、二日目の情事へと流されていったのだった。
その後の時間は、昨晩の貪るような獣の交わりとは明らかに一線を画していた。 カーテンの隙間から差し込む穏やかな陽光の下、俺たちは互いの肌の温もりと、存在そのものを確かめ合うような、まったりとしたスローセックスに溺れた。
「んぅ……ふふ、とうごぉ……あったかいねぇ……♡」
風夏は俺の上に跨がり、あるいは俺の下で、蕩けきった笑顔を浮かべて俺を受け入れ続けた。 激しいピストンで子宮を叩くのではなく、結合した部分を擦り合わせるように、ゆっくりと、ねっとりと腰を動かす。 彼女の膣内は、昨晩からの度重なる行為で柔らかく解れきっており、俺のイチモツを優しく、しかし離さないとばかりに吸い付くように包み込んでくる。
「あ……っ、そこ……ゆっくり擦られるの、すきぃ……♡」
俺がひだの一枚一枚を数えるように竿を出し入れするたびに、風夏は甘い吐息を漏らし、俺の首に腕を回して抱きついてくる。 その時、俺の胸板に押し付けられる感触が、また俺の理性を溶かしていく。 あのスライムのような異次元の柔らかさを誇る爆乳が、今度は俺を無条件に受け入れるクッションのように、むにゅぅぅ、と形を変えて俺の身体に密着し、同化しようとしてくるのだ。 視覚的にも、触覚的にも、俺たちは一つの肉塊になったかのような錯覚に陥る。
「だいすき……♡ 藤吾のおちんちんも、藤吾も、ぜんぶ好きぃ……♡」 「俺もだ……風夏、気持ちいいよ……」
交わされる言葉は、IQが溶け落ちたような単純な愛の言葉だけ。 互いの体液と汗が混じり合い、乾く暇もなくまた濡らされていく。 何度も緩やかな絶頂を迎え、その余韻に浸りながらキスをして、またどちらからともなく腰を動かし始める。 それは、まさに「泥沼」のような、抜け出すことのできない極上の幸福だった。
そうして二度目か、三度目の体力の限界を迎え、俺たちは繋がったまま深い眠りに落ちた。
次に俺が目を覚ました時、窓の外はすでに茜色に染まり始めていた。 時計を見ると、時刻は16時前。 休憩を挟んでいたとはいえ、ほぼ丸一日、このギャルとセックスに興じていたことになる。
「……俺、何やってんだか」
隣では、風夏が規則正しい寝息を立てていた。 事後の気だるげな表情ではなく、あどけない少女のような寝顔。散乱した金髪から覗く白い肌には、俺がつけたキスマークが点々と咲いている。 流石に明日は学校に行かなくてはいけないし、一度家に帰って親に顔を見せないとまずい。だが、この幸せそうな寝顔の彼女を「帰る」と告げるためだけに揺り起こすのは、あまりに忍びなかった。
(……書き置きでも残していくか)
俺はカバンからルーズリーフとペンを取り出した。 そこでふと、ある事実に気づいて手が止まる。 俺は、風夏の連絡先すら知らないのだ。 あれだけ濃厚に粘膜を擦り合わせ、体液を交換し合った仲なのに、LINEの一つも知らない。そんな関係の相手と一日中セックスに溺れ、学校をサボったという事実は、俺のダメ人間っぷりを浮き彫りにしているようで、自己嫌悪に陥った。
(明日からは……明日からは真面目に勉強に取り組もう)
そう心に誓う。だが、すぐに悪魔の囁きが聞こえてくる。「たまにはいいよな、多分風夏も乗ってくれるだろうし」。 俺はその甘い誘惑に苦笑しながら、ルーズリーフにペンを走らせた。 昨晩と今日のお礼。そして俺の連絡先ID。最後に、一瞬迷ってから『また良ければ、相手してほしい』と付け加え、それをテーブルの目立つ場所に置いた。 そして俺は風夏を起こさぬよう、忍び足で部屋を後にした。
◇
帰り道、夕暮れの通学路を歩きながらメッセージアプリを開く。 通知の数が尋常ではない。
まずは母親から。 『あんた! 泊まるなら連絡ぐらい入れなさいよ! 今日は帰ってきなさいよ!』 怒りのメッセージだ。まだ俺がテニス部だった頃、突発的に山本の家や川内の家に泊まることがあったので、今回もそれだと思っているのだろう。親の勘違いに感謝しつつ、適当に謝罪の返信を打つ。
そして、そのテニス部時代の友人、山本と川内からもメッセージが届いていた。 『ここ最近無視したりして悪かった。正直、嫉妬してた』 『万丈が学校休んだの聞いて、俺らが追い詰めすぎたって反省したわ。精神的に限界だったんだよな? ごめん』
どうやら二人は、昨日の俺の欠席を「精神の限界を迎えたための休養」だと解釈してくれたらしい。そして、あの態度の裏には、俺が学年のアイドルである日和と付き合い、あまつさえ抱いていたことへの「嫉妬」があったことを素直に認めていた。 俺は二人の不器用な友情に胸が熱くなると同時に、サボりの理由が「ギャルと一日中セックスして体力の限界を迎えていたから」だという事実に、猛烈な罪悪感を覚えた。 だが、ここで本当のことを言えるはずもない。
『気にしてないよ。今日のはただの風邪で、連絡忘れてただけだから。明日からは出席するし、また仲良くしてくれると嬉しい』
送信ボタンを押す。これで、憂鬱だった明日以降の学校への足取りが少し軽くなった気がした。
そして――一番件数が多かったのは、日和からだった。 メッセージだけでなく、着信履歴も何度か残っている。
『藤吾くん、ごめんなさい』 『私、自分が可愛くて、噂を否定できなかった。藤吾くんだけに責任を押し付けて、逃げてた』 『今日学校に来なかったって聞いて、もし私のせいで藤吾くんが……って思ったら、怖くて』
画面をスクロールしても終わらない、悲痛な謝罪の言葉たち。読んでいるこちらが胸を締め付けられるほど、彼女は追い詰められていたようだ。 もちろん、噂や好奇の視線は辛かった。だが、俺は本心から、日和が俺ほど悪く言われていなくてよかったと思っていた。男の俺が泥をかぶるくらい、どうということはない。 俺はその素直な気持ちと、今日はただの風邪だから心配しないでほしいという旨を返信した。
すぐに既読がつき、『よかった……! 待ってるね』という返信が届く。 その文字から滲み出る彼女の安堵と好意に、俺は頬を緩ませながら帰路についた。
◇
翌日。 昼休みの教室は、いつもの喧騒に包まれていた。 俺は自分の席で弁当を広げ、前の席に座る山本、隣の川内と談笑していた。
「いやー、でもお前が振られた理由が『性欲強すぎた』って、マジで伝説だろ」 「ドンマイ万丈。次があるさ、次が」 「うっせーよお前ら。……でもまあ、ありがとな」
二人は今回の騒動をいじってくるが、そこに以前のような陰湿さはなかった。 久しぶりに味わう、男子高校生特有の軽い空気感。三井先生には朝一番で呼び出され、昨日のサボりをたっぷりと絞られたが、やっぱり登校してよかったと心から思う。 失いかけていた日常が、戻ってきたのだ。
――そう、俺は油断していた。
「おっはよー」
教室の扉から元気な挨拶をしながら現れたのは、この時間になってようやく登校してきた風夏だった。 彼女は教室を見渡すと、俺の姿を見つけてパァッと表情を輝かせた。
「あッ! 藤吾ぉ〜〜!」
一目散に駆け寄ってくる金髪のギャル。 山本と川内が「え、二階堂?」と目を丸くする前で、彼女は俺の机に手をつき、クラス中に響き渡るような声で爆弾を投下した。
「おはよ♡ メッセージ、嬉しかったよ! 『また』じゃなくて、今日でもいいからね!♡」
バチコーンッ! と音がしそうなほどのウインク付きだった。
「…………は?」
一瞬、時が止まった。 山本が箸を止め、川内が口を開けたまま固まる。クラス中の視線が俺たちに集中し、ざわめきすら消え失せた。
その静寂を破ったのは、廊下から響いた硬質な音だった。
ガシャァァン……!
反射的に音の方を見る。 音の先には日和が立っていた。 足元には、手から滑り落ちた弁当袋が転がっている。
状況から見ておそらく俺を食事に誘いに来てくれていたのだろう。
「……え?」
日和は、今まで見たこともないような表情を浮かべていた。 信じていたものに裏切られた絶望。理解できない現実への拒絶。そして、深い悲しみ。 彼女の大きな瞳が揺れ、俺と風夏を交互に見ると、何も言わずにその場を走り去っていった。
「あ……日和……!」
追いかけようと腰を浮かせた俺の背中に、殺気にも似た鋭い視線が突き刺さる。 恐る恐る振り返ると、つい先ほどまで笑い合っていた山本と川内が、能面のような無表情で俺を見つめていた。
「…………」
彼らは無言のまま、俺からプイと顔を背けた。 凍りついた教室の中で、ただ一人、風夏だけが状況を理解していないのか、あるいは理解した上で楽しんでいるのか、ニコニコと無邪気な笑顔で俺を見つめていた。
俺は今度こそ完全に自分の評判が終わったことを理解し、一人になった机で食事を再開することにした……
自業自得だと思います