半裸の足長お兄さん(鳥頭)
・朽ち灯りしアラドヴァル
再起への炎を宿した英傑の武器。
未だ本来の力には程遠く武器として使用する事は難しいが、剣に宿った真なる炎は巨槍の剣に二つの道を照らし示す。
無言、しかして全身でガッツポーズ。女体化が解けて男に戻っているがこの際どうでもいい、ぶっちゃけアバターの性別とか二の次だし。
そんな俺をエムルが何やってんだこいつと半目で見ているが知った事ではない、ピザの影に怯えながら駆け抜けた恋愛経験は遂に言語とAIの壁すら超えたのだ。
「今ならフェアカスだって怖くない……」
いややっぱこえーわ、だってあいつ一つ前のチャプターで友好度高めたキャラを敵ごと抹殺するからな。しかも主人公と良い雰囲気になったキャラは優先的に狙われるという……
涙ながらに謝罪するけどイベントシーンが終わったら「クヨクヨし続けても馬鹿馬鹿しいじゃない!」とかほざくからな、どういう人生送ったらあんな台詞考えられるんだ頭おかしいんじゃねーか。
「ようしエムル、ボケたアホウサギを叩き起こしに行くぞ」
「はいなっ!」
と、そんな感じに意気揚々と奴の工房に乗り込んだ俺達であったが、そこで目撃したものはあまりに変わり果てたビィラックの姿であった……
「うへへへへ……」
「ビ、ビィラックおねーちゃん……?」
「びゃー」
「こ、こいつ、人参を金槌で叩いてやがる……」
え、ペーストでも作ってんの?
上の空な様子でただひたすらに金床に置いた人参をぶっ叩き続ける様は精神崩壊でもしたんじゃないかとマジで懸念する程であった。
「これ話しかけて大丈夫か? 肉体に刻まれた自動防御本能で襲いかかってくるとかないよな?」
「アタシのおねーちゃんをゴーレム扱いするのはやめて欲しいですわ……」
いやでもあれ完全に簡単なプログラムだけ仕込まれたAIみたいになってんぞ。逆に放置し続けたらどれくらいあの作業を続けるのか気になる……あ、人参ペースト食べた。成る程栄養補給はバッチリ、と……
「これなーんだ」
「んぁ……? なんじゃ、ワリ…」
ごずん!(ビィラックの手に金槌が叩きつけられる音)
「ャァァァァァァアァアァア!!?!?!!?」
「んぶっ」
「んひゅっ」
思い切り笑わなかった俺とエムルの理性を誰か褒め称えて欲しい。
非常に形容し難い声を漏らしながら悶絶するビィラックを見下ろしつつ、見せつけるために取り出したアラドヴァルをきつく握りしめて笑いを堪える。
分かってんだよ、ここで笑ったら脛か膝をハンマーで強打されるってことくらいよぉ……!
「大丈ぶふふっ」
………。
「………待て話し合おうビィラック、フルスイングはあかん。フルスイングはあかんて」
「おどりゃ死に晒せやぁ!」
「おっぐ!?」
七割削れた。
「わちぁオヤジに任されたんじゃ、絶対にこの剣を蘇らせてやるけぇ……!」
あの謎蝶によって炎が灯ったアラドヴァルを受け取り、灼骨砕身を使った俺のように朽ち果てた刀身から紅蓮を覗かせる剣に負けず劣らずの燃えっぷりを見せながらビィラックはそう宣言した。
「他に必要なものは?」
「んー……「火」は揃った、「炉」……そう、炉が必要じゃな」
炉? 俺はちら、とビィラックの工房にある炉に視線を向ける。なにやら明らかに近未来的な機材が傍に置かれているが無視、煌蠍の籠手と冥王の鏡盾の生みの親かもしれないのだからむしろ拝んだ方がいいだろうか?
「わちも名匠の端くれ、この剣を見た時理解出来た……こん剣は炎なんじゃ」
「火属性?」
「まぁ、間違っちょる訳じゃないが…………違うな、この剣は「炎そのもの」なんじゃ」
大仰な比喩はファンタジーの特権ってやつさ……
それはともかくビィラックの様子的に何かを隠しているわけでもなし、このアラドヴァルという武器は単なる火属性武器というわけではないようだ。
「この剣は……いや、元は槍のようじゃが、こいつぁ「炎」を芯として「剣」を成しとるけぇ、その力を取り戻すにゃあ……今の炉をじゃきっと足らん」
「成る程……必要なものは?」
ふむふむ、成る程質の良い鉱石をダース単位? 成る程……
しばし離席
走る、隠れる、掘る、んで死ぬ。
そして着席
「ほれ、こんなもんでいいか?」
「なぁエムル、わちが希望した素材はこんな「ちょっと取ってくる」みたいなもんじゃったかの……?」
「おねーちゃん、「黄金の鱗は時の波に揺るがず」ですわ」
なんのこっちゃと詳細を聞いてみたら「どれだけの年月を経ても風化しないジークヴルムの鱗が風化する事を心配する者は愚かである」という意味らしい。こういうリアルには存在しない諺とかって妙に興味を引……おい待てそれは「俺がやる事はどうせ頭おかしいんだから気にするだけ無駄」と言いたいのか? おン?
「エムル、後で傑剣への憧刃体験会な」
「ちょっ……ぶん投げるですわ? ぶん投げるんですわ!?」
「放物線じゃないぞ、直線だ」
「直線!?」
便利、故に酷使。今日も今日とて傑剣への憧刃君には頑張ってもらうのだ。
なんというかクリティカルを外さない限り耐久が減らない、って時点で下手すりゃ勇魚兎月より便利なんだよな……まぁ攻撃的能力が無いからアタッカー的視点から見れば俺の保有する武器の中では一番大人しい武器かもしれない。
「……まぁ、なんじゃ。炉の強化にも時間がかかるけぇ、二週間くらい待ちぃや」
「あいよ、あぁそれとは別にこれとこれの強化もだな……」
あとついでに詫びとしてのエムル強化計画もするか、行くぞエムル金に糸目はつけぬぞ!
そう、俺は金に糸目をつけない男。リアルだったら間違いなく貯金一択の小市民ではあるが、ゲームの俺は何億だろうが使う時はパーっと使う男なのだ。
ファステイア行きは後日、という事になった後。俺はフィフティシアのとある商会を訪れていた。
俺が所属するクランのとある人物のツテを利用した繋がりではあったが、ちょいとばかし我が「財」を見せてやれば半裸の鳥頭もViP待遇というものよ。
「これはサンラク様、このような夜更けに……」
「開拓者故夜型の生活を送っていてな……例の彼は?」
「サンラク様がお呼びである、と伝えればすぐにでもこちらにいらっしゃるでしょう」
「そうか、では呼んでくれ……ここで待たせてもらっても?」
「勿論でございます、サンラク様は我が「黄金の天秤商会」のお得意様ですから」
それからしばらくして、商会の一室……曰く「王城の貴賓室にすら匹敵する」らしい部屋でマフラーに人参を食わせていると、コンコンとドアがノックされる。
「サンラク様、お連れいたしました」
「通してくれ給え」
「サンラクサン、見た目と言動がちぐはぐで笑っちゃうですわ……ぷぎゅっ!」
マフラーは喋らないんだよなぁ? んー? ちょっと黙ってような?
扉を開いて中へと入ってきたのは、随分とくたびれ、煤けた服を着た青年。
筋肉質ではあるがどこか丸い印象が拭えない青年はオドオドと貴賓室を見回していたが、俺に視線を留めると慌てて頭を下げようとして……二度見した。
「え、なんで裸に……」
「気にしないでくれ、ちょっとした因縁によるものだ……君がノーマン、だね?」
「は、はい…………その、黄金の天秤商会の方から、融資をしていただけると、お聞きしたのですが……」
ドズン! と貴賓室に置かれた質の良さそうな机が揺れる。俺がインベントリから取り出したものに青年……ノーマンの目が見開かれる。
丸顔の青年は俺の言葉など聞こえていないか、ゾンビのような足取りで机の上に置かれた美しく……そして巨大な宝石へと近づいて行く。
何せこれはこの青年が莫大な融資を注ぎ込んででも求めていたアイテムであり、現状こちらの大陸では地獄と同義である水晶巣崖を攻略しなければ入手できない宝石なのだから。
「ラピステリア星晶体……君が求めているものはコレだろう?」
「あ、あぁあ……こんな大きな……嘘だろう……? まさか、一等星……!? そんな、王家でもなきゃ、えっ……えぇ……?」
「話を続けても?」
「は、はひっ!」
ペンシルゴン流交渉術、交渉において己の手札は限界まで隠すか、必要以上に見せびらかすのどちらかが推奨される。
最初に最大級の情報を提示する事でその場における主導権を奪い取り、相手に譲歩を引き出させる。
気分は謎の強キャラ臭を漂わせる金持ちの足長おじさん、ちょっと前にこの商会でペンシルゴンの名前を出してどうにか「対価の天秤」を使えないかと交渉していた時にふと耳に入ったある話……是非とも一枚噛みたい。
「ノーマン君、俺は君の……そう、君が造っているものに非常に興味があるんだ……是非とも、詳しく話をしたいと思っていてねぇ……!」
俺は金に糸目をつけない男、五十億までなら出せるぜふはははは……!!
リュカオーンの刻傷(威圧感+50)
圧倒的資金力(威圧感+20)
商会のVIP待遇(威圧感+10)
圧倒的半裸(威圧感+80)
やたら目力が強い鳥頭(威圧感+40)
「仲良くしようぜぇ……!(威圧感200%)」
ちなみに水晶群蠍が威圧感300くらいです