剣狼相対すは雷火の獣 其の六
「十兵衛ぇえええええっ!助けてくれぇええええええっ!創作意欲が破裂してしまうううううう!!!パーンて!!!!!」
「一人でやってろ」(画像略)
端的に言って、その男は最強であった。
若い頃から獣のような勘を持っており、相手よりも先に相手の動きを嗅ぎ取り剛剣で機先を叩き伏せる。そんな尋常ならざる戦い方をしていた。
だが生きとし生けるもの全ては劣化し、衰える。己の筋力が落ちたと、そう悟ったその時から……同年代の他の剣士と比べればまだまだ力は上であったにも関わらず、男は戦いの作法を変えた。
若き頃より磨き上げ、積み上げてきた経験と、獣の如き荒々しさは失えどより鋭く敵を読む勘をさらに研ぎ澄ました事で得た達人芸の極致。
相手の動きを相手よりも先に見切り、最低限の動きだけで対応し面を打つ。
老いてなお最強の称号を独占する男と戦ったものは「幽霊と戦っているようだった」「竹刀がすり抜けた」「気づいたら負けていた」としか答えようのない敗北を喫して尚、その男に憧れと敬意を向けた。
そうして男が死期を感じ始めたある日、男が名付け男の背を追って剣の道へと入った孫娘と相対する機会があった。
男も人間、孫娘を可愛がるだけの情は持ち合わせているが剣の事となれば話は別だ。孫娘の力が及ばぬ事と己が手を抜くことは別問題、いつものように相手の動きを読み取らんとして……気づいた。
孫娘がまっすぐ自分を見ている事に、そして自分が孫娘すら見ていなかった事に。
なんて事はない、相手の動きを見て自分を制御する事に心血を注ぐと言うのなら、相手が誰であろうと関係がなかった。
仮に孫娘ではなく防具の中に肉を詰めただけの人形であったとしても男のやる事は変わらなかった。
相手の技だけを見て、相手そのものを見ていない。
そんな簡単な事実を悟ってしまった男はひどく絶望し、人生最初にして最後の酒に溺れ……そして己に届けられ、かつては一笑で放り捨てたそれを拾い上げた。
───最早自分が変わるには遅すぎた、だがのちに続く者の一助になるならば
結論から言えば、その思いは未だ一番届いて欲しい相手には気づかれていない。
だが、その願いは紆余曲折に三回転半捻り込みを入れた奇妙な偶然の末、男の孫娘の前で披露される事となる。
要するにバッティングセンターなんだよ龍宮院 富嶽スタイルって。ピッチャーとバッターの対決ではなく、飛んでくるボールに対して自分のフォームを直す。
別にそれが間違っている、なんて言える程偉い立場でもないけどさ、それならNPC殴るのと大差ないじゃん? せっかくの対人戦ならもっと相手を見ようぜって事だ。
とはいえ事実としてあの戦法は強い、こうしてガワだけを真似るだけでも従剣劇の乱舞に対応できるのだから。
「俺を袋叩きにするなら本数足りてねぇぞオラァ!」
幕末乱世と袋叩きFPSの中で鍛え上げられた袋叩きへの対応術! 基本的に人間本命には視線を向けちまうんだよ!
サイガ-100の視線が向く先、真下から掬い上げるような軌道で飛来したペガなんとかを迎撃して一念岩穿起動、同じ箇所に攻撃を命中させた事でペガなんとかの刀身が悲鳴を上げる。
「冗談だろう……どこでそれを会得した!?」
「通信教育だ!」
まぁ間違ってはないだろう。
いつまでも飛ぶ剣と戯れていても仕方がない、ここからは俺のターンだ。
「いろんな武器を使うのは、何もお前だけじゃないぜ……!」
武器変更、拳に纏うは紅蓮の拳帯。名前のかっこよさの割にあっさり毒になるわおやつにされるわと散々なイメージしかないアルクトゥス・レガレクスの素材から作られたこの拳帯は拳にきつく巻きつく事である条件を達成しない限り外れない。
まぁ実際は人差し指一本分は動かせるのでウィンドウ操作すれは普通に外せるがそこはご愛嬌、設定は大事にしようぜ。
「紅蓮海の拳帯」
拳に巻きついた余りを風に靡かせながら俺は役割模倣を維持したまま構える。
「やる事は同じでもここからは攻勢だ」
「なら見せてもらおうか!」
それを握る手は無くともそれを動かす者はいる、飛翔する魔剣やら猫じゃらしやらを見据え、俺は躊躇うことなく拳を振るった。
紅蓮海の拳帯には三つの能力がある。
一つ目は攻撃時、拳に命中した攻撃への自らへのダメージ軽減。要するにこれ装備した状態でなら剣の刃部分を殴りつけてもダメージ軽減処理が発生するという事だ。
二つ目は自身と攻撃対象の双方にダメージが発生した場合、「ゲージ」が溜まる効果。この武器はある意味では対刃剣と似たようなシステムを持っているわけだ。
「右だ! 左だ! 真上ぇ!」
ペガなんとかを殴りつけ、超猫じゃらしを弾き飛ばし、上から地面に突き立てるように振ってきた名も知らぬ剣と真紅の帯巻く拳が激突する。
鋼の切っ先と人の中指、本来なら拮抗などする筈のない二つがぶつかり合い、そして拳が剣を弾き飛ばした。
「ハッハァー! ストロングフィースト!!」
んでもってついでに装備変更! 俺が対人のいろはを教えてやろう!
なけなしの防御力をかなぐり捨てた魚面と化した俺が一気に前へと踏み込む。
同じ龍宮院流ならば、とでも考えたのか俺の前へ進む一歩を縫い止めんと俺の前へ剣が飛びかかるが
「おいおい、俺が通った後を塞いでどうすんだよ……」
今の俺は半裸に魚面、そして内側に夜空を持つ純白の外套を纏った防寒対策済み半裸! 変態はNGワードだからな!
瑠璃天の星外套を身につけた俺は魔法使いにだってなれる、あぁそうだとも五メートルの距離だって「射程距離」だ。
「【瞬間転移】!」
「なっ!?」
転移可能距離の限界、聖剣を持つ手からして恐らく利き手なのだろう右とは逆の左前方一メートル圏内に移動した俺にサイガ-100の動きが硬直する。まさか俺が転移魔法を使うとは思っていなかったらしい。
「質のいい剣を使ってるお陰でこっちのゲージも溜まりやすくて助かったよ……!」
紅蓮海の拳帯が持つ三つ目の能力。
ゲージを最大まで蓄積する事で発動可能なそれは、拳を縛り付ける帯の解放だ。
「この程度の対応……っ!」
「残念、依然として役割模倣だ」
剣を遠ざけるなら物理運動を越えるアドバンテージを稼がないとな。京極のアイデアは悪くなかったが従剣劇の制御が万全なままでの実行は悪手だ。
こういうのは相手を揺さぶってからやるのが対人の作法というものだ。
横薙ぎに振るわれた聖剣エクスカリバーを首の皮一枚の範囲で回避、正直ちょっとヒヤリとしたが相手の手札は切らせた。これであの発生が早い魔法よりも速くこちらが動ける。
「名刺代わりだ、受け取ってくれ」
弾けるように解放された紅蓮海の拳帯はまるで俺の手が一回り大きくなったかのように俺の拳の周りを包んでいる。
さながら帯で作られた中途半端なグローブと言うべきか、明らかに拳を守り切れていないように見えるが、見た目だけで判断するのは早計というもの。
「っオラァ!」
「ぐおっ……!」
拳の周りの空気を包む紅蓮海の拳帯がサイガ-100が纏う防具と激突し……硬い金属音を響かせた。
この状態になった紅蓮海の拳帯が発揮する能力はある意味では極めてシンプル、拳を経由するダメージの完全無効化だ。
要するにこの状態であればマグマに手を突っ込もうが毒の塊を殴ろうがリュカオーンに噛みつかれようが……そのダメージを受けるのが「肘から拳の先まで」であれば一切のダメージは無効化される。
どれだけ硬い鎧に攻撃したとしても、剣の刃を受け止めたとしても俺の拳は傷つかない、ダメージを受けるのは相手だけだ。
まぁ肘から先以外は普通にダメージ食らうしペガなんとかみたいな武器破壊で耐久も削られるから万能って程でもないが……
「それでもこの拳は砕けない、さっきの剣と同じくな!」
「なら胴体を狙うだけだ!」
はい役割模倣。
そろそろ集中力が切れかけてきたが、この後に勇者的覚醒が控えている以上ここで削れるだけ削っておきたい。
剣聖唯一の距離的弱点である超至近距離戦闘、下手に従剣を使えば自分に刺さりかねないこの距離を維持し続けて攻撃する。
簡単そうに聞こえるがこれがなかなか難しい。逃げようとする相手に追随しつつ、振るわれる迎撃を距離を維持したまま避ける。
「【迸る電り───」
「それ手から出す系だろ?」
なら後ろに回り込めばいい。
フォーミュラドリフト起動、加速する滑走で後ろに回り込んで……おっとここまでか。
「無茶するじゃねーか……!」
サイガ-100の背中を掠めるようにして俺とサイガ-100とを隔てる従剣、下手をすれば自分で自分の背中を斬り裂きそうなものだがよくやるよ。
「確信した……君はあれだな、至近距離に近づかせてはいけないタイプだ」
「まだまだ手の内の一割くらいしか見せないわけだが?」
「なに、そう決着を急ぐこともないだろう……手の内を見せ切っていないのは私も同じだ」
従剣が消え、聖剣すらも収納して。そしてラインナップを入れ替えるかのように先程までのものとは全て異なる剣の数々が展開される。
「おいおい……インベントリに何本武器入れてんだよ」
「ふふふ……三十五本だよ」
マジかよバリエーションが多過ぎるだろオイ。
というか聖剣を何故しまい込んだ? 覚醒を使わない? いや違う、覚醒を使わないだけのメリットが……!?
「時にサンラク、君は「同時に使われることで効果を発揮する」武器を知っているかな?」
「実演は結構なんだが───!?」
「ははは、遠慮は不要だ……「インペリアル・ファイブ」発動!」
うん、ちょっとこれはあれだな。役割模倣で遊んでる場合じゃないかも。
普通ならインベントリパンパンで動きに支障が出ますがサイガ-100はそこらへんをアクセサリーで解決しています
まぁそれでも重いものは重いのでいろんなバフを盛って動けるようにする、という見た目の優雅さとは真逆の地道かつ綿密な構築によってシャンフロ最高クラスの剣聖は成り立っているのです
スパルタ風の防具ができたり特定条件下でプレイヤーの拳絶対守る武器になったりとかっこよさの権化なのにその元になった武器は深海では捕食者に踊り食いされる模様
まぁ半分精霊の領域に足突っ込んだシャチだったり、あらゆる種族を自分の眷属に改造して発艦させてくるアンコウだったり、背中に独自生態系を作ってそこで作った危険生物に戦闘させるヤドカリだったりと海底の生態系が頭おかしすぎるのが悪い
ちなみに上記三種類のモンスターですがシャチはアンコウをゴリ押しでぶちのめせるがヤドカリのメタに弱く、アンコウはヤドカリが作ったモンスターを奪えますがシャチの力技に弱く、ヤドカリはシャチの天敵性能のモンスターを作成できますがアンコウが相手だと作ったモンスターを奪われるので弱い、という三すくみになっております