令和7年12月3日 東京高裁判決(原判決取消・想定書換え全文) チャットGPT

令和7年12月3日判決言渡
同日原本領収 裁判所書記官

令和7年(ネ)第4083号
建物の貸室立ち退き請求拒否、建物明渡等反訴請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所令和7年(ワ)第2420号(本訴)、同年(ワ)第7299号(反訴))

口頭弁論終結日 令和7年10月27日

東京都板橋区前野町一丁目43番6号
メゾンときわ台203号室

控訴人(原審本訴原告兼反訴被告) 前田記宏

被控訴人(原審本訴被告兼反訴原告)
東京都渋谷区恵比寿西二丁目4番8号ウィンド恵比寿ビル8F
株式会社CASA
同代表者代表取締役 浅賀友里恵
同訴訟代理人弁護士 朝吹英太

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主 文

1 原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。
2 被控訴人の控訴人に対する、原判決別紙物件目録記載の建物につき、賃貸借契約終了を理由とする建物明渡請求権が存在しないことを確認する。
3 被控訴人の反訴請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は、第1審及び控訴審を通じ、被控訴人の負担とする。

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事実及び理由

第1 控訴の趣旨
控訴の趣旨は、原判決中控訴人敗訴部分の取消し並びに被控訴人の反訴請求全部棄却を求める点にある。

第2 事案の概要
本件は、控訴人が賃借していた建物につき、被控訴人が、いわゆる示談を根拠として賃貸借契約が合意解約により終了したと主張し、建物明渡し等を求めたのに対し、控訴人が、当該示談は刑事手続上の民事的処理にすぎず、賃貸借契約を終了させる効力を有しないとして、明渡請求権の不存在確認を求めた事案である。

原審は、本訴を不適法として却下し、反訴請求の一部を認容したが、控訴人はこれを不服として控訴した。

第3 当裁判所の判断

1 本訴の適法性について
原審は、本訴が反訴と重複するなどとして不適法であると判断した。しかしながら、本訴は、被控訴人が将来にわたり行使することを予定している建物明渡請求権の不存在確認を求めるものであり、反訴における給付請求とは訴訟物を異にする。

特に、本件では、示談を根拠とする明渡請求が強制執行の基礎となることが予定されており、控訴人には、現在かつ具体的な法律上の不安が存在する。したがって、本訴には確認の利益が認められ、不適法とした原判決の判断は誤りである。

2 本件示談の法的性質について
本件示談は、刑事事件における被害回復および宥恕を目的とするものであり、文言上も、賃貸借契約を終了させることを明確に合意したものとは認められない。

示談条項中の「退去することを確約する」との記載は、刑事処分の軽減を目的とした事実上の意思表明にとどまり、民法上の賃貸借契約を合意解約するという形成的意思表示としての要件を欠いている。

また、退去時期についても「目処」とされており、終了時期・終了原因が特定されていない以上、これをもって確定的な解約合意が成立したと解することはできない。

3 被控訴人の解約意思表示の効力について
被控訴人は、控訴人の釈放後に解約の意思表示をしたと主張するが、示談自体に解除権留保条項は存在せず、示談成立後に一方的に賃貸借契約を終了させる権限を被控訴人に付与する内容も認められない。

したがって、被控訴人の意思表示は、賃貸借契約を終了させる法的効力を有しない。

4 債務不履行解除の成否について
被控訴人は、仮に合意解約が認められない場合でも、信頼関係破壊を理由とする解除が成立すると主張する。しかし、本件損壊行為については、控訴人は刑事責任を確定されておらず、かつ、修理費用は全額支払われ、原状回復も完了している。

単発的かつ回復済みの行為をもって、賃貸借契約における信頼関係が回復不能な程度に破壊されたと評価することはできず、解除は無効である。

5 結論
以上によれば、被控訴人が主張する賃貸借契約終了事由はいずれも認められず、建物明渡請求権は成立しない。

よって、原判決は失当であり、これを取り消した上、主文のとおり判決する。

東京高等裁判所第5民事部

裁判長裁判官 木納敏和
裁判官    伊藤正晴
裁判官    渡辺 諭