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「このままで大丈夫?」赤ちゃんの頭の形への不安と対処法を小児科医が解説

佐久医療センター小児科医長 日本小児科学会指導医
写真:アフロ

最近、赤ちゃんへの枕の使用について、枕を使うことで頭の形を整えてあげることが大事なのではという意見と、枕があることで窒息などのリスクが高まるから使ってはいけないという意見が分かれているという記事がありました。

「枕なし」を信じたのに…赤ちゃんの頭がぺっちゃんこ、枕は必要か?国や医師の見解が真っ二つ

実際には枕を使うことが乳児の窒息リスクを高めることは医学的に明らかです。使わないという選択肢一択で、医療界の見解は決して真っ二つではありません。

米国の事例分析では乳児の窒息による死亡の22%が枕が原因だったとしています[1]。その理由として、特に生後6か月未満の乳児は首の筋力と可動性が限られているため、首の周りに枕を含む柔らかなものがあることで窒息のリスクが高まることが考えられています。米国小児科学会や日本小児科学会は乳幼児突然死症候群や窒息のリスクを減らすため、ベッドに枕など柔らかいものを置かないことを推奨しています。寝床は硬いものを使うことも、世界中の小児科関連学会が推奨しており、「枕を使わない」ことを推奨することは小児医療関係者にとって当然のことなのです。

そうはいっても、絶壁頭になると将来子ども自身が困るのではという保護者の不安も分かります。そこで今回は頭の形の不安にどう向き合えばいいのか、詳しくまとめました。

なぜ「絶壁頭」は増えたの?短頭症が急増している理由とは

 さて、絶壁頭は医学用語で「短頭症」といいます。短頭症は近年急増しています。その最大の背景はあおむけ寝が推奨されたことです。乳幼児突然死症候群を予防するためにあおむけ寝を推奨するキャンペーンが始まった結果、突然死の件数は半分以下に大きく減少しましたが、あおむけ寝で過ごす時間が長くなり、短頭症が増えたのです。短頭症のお子さんは、軽いものも含めると従来の3~5%程度から15~20%と5倍近くまで増えたとされています[2]。

早産・男の子は要注意?短頭症が起きやすい条件

ところで、臨床的に明らかに歪みのある短頭症の発症率は約5%と考えられていますが、短頭症の起きやすい要素はいくつか指摘されています[3]。まず、37週未満で生まれた早産のお子さんでは11.8%と、正期産児の2倍近く起きやすいです。これは、早産児の頭蓋骨が柔らかく、NICUなどで長時間同じ姿勢で寝かされていることが影響していると考えられています。

また、男の子は7.3%と、女の子(4.2%)よりも起きやすいことも分かっています。これは、胎児のときは男児の頭は女児よりも大きい傾向があるため、分娩時に変形を受けやすい点や、生後3カ月間の頭囲の成長速度が速いことがその要因として考えられています。

短頭症の起きやすさ

・37週未満の早産で生まれた赤ちゃん

・男の子

医師と親で違う?短頭症の“重症度”の感じ方

さて、短頭症に対して、保護者はどんな心配があるのでしょうか。保護者を対象に調べた研究では、おもに子どもの頭の形が目立つことによる将来的な外見や心理的影響、発達障害への影響に不安を感じるケースが多いようです。ある研究では、短頭症について親は医師よりも子どもの頭の変形の重症度を重く評価する傾向があり、治療の必要性を強く感じる傾向があると報告しています[4]。したがって医師から大丈夫と言われても、保護者の不安は解消されにくいのです。そこで私たち医療者もより丁寧に説明する必要があります。まずは頭の形と知的発達との関連について考えてみたいと思います。

頭の形と発達障害は関係ある?最新研究から分かってきたこと

 これまで、頭の形は将来の発達や認知能力に影響を与えないと考えられてきました。それに対して、短頭症と発達障がいが関連あるのではないかとか、短頭症の子は特別支援教育が必要な割合が高いのではという意見を述べる医師もいて、そうしたことが「頭の形を治さなくてはいけないのでは」という不安につながっている印象です。最近の研究ではどうなのでしょうか。

2024年に米国で報告された研究では、「赤ちゃんの頭の形の変形は、将来の発達障がいのリスクと関係があるのか」という疑問に対して、9900人の乳児を7年間追跡しました。短頭症と診断されたお子さんのうち、何らかの発達障がいと診断された割合は7.5%で、米国の一般的な割合(10~24%)と比べても特に高いという結果ではありませんでした[5]。また自閉スペクトラム症の有病率は2.2%で、一般人口の推定値(2.3%)と比べても変わりがないこと、頭の変形の程度が強くても、その後の発達障がいの診断率に統計的な関連も見られず、重度の変形があっても発達障がいのリスクが高まるわけではないことが示されました。したがって、頭の形を矯正しないと将来的な発達に影響する、と心配する必要は今のところなさそうです。

医学的に問題なくても、親の不安が消えない理由

では、外見や将来の心理的な影響についてはどうでしょうか。

たとえ健康や発達に直接関係なくても、将来のことまで想像して不安になるのは親だからこそです。「うちの子が頭の形が原因で将来いじめられたりしないだろうか」とか、「社会的に不利なことはないだろうか」と、心配になるのは自然なことです。医療者に「美容上の問題で、医学的には問題ないから気にしなくてもいい」と言われただけでは不安の解消につながらないかもしれません。

実は多くの親が「気にならなくなる」──成長後のリアルな評価

ちなみに最初にお子さんの頭の形が気になっていても、お子さんの成長にしたがって保護者の不安は小さくなっていくことが知られています。65名の短頭症のお子さんの保護者に対して、5歳時点での見た目の評価を行ったところ、約6割は頭の形が非対称であることを認識していた一方、それが気になると回答したのは2割程度にすぎませんでした[6]。年齢とともに保護者の外見上の懸念は薄れていく傾向があると知っておくと、少し気が楽になるかもしれません。

またある研究では2010年に87名の思春期の青少年を対象に頭の形を評価したところ、その変形の程度を示す指標が高いからと言って、彼らは自分自身の見た目の評価が悪い傾向はなく、生活の質が下がる傾向もみられなかったとしています[7]。

ヘルメット療法とは?効果・安全性・デメリットを整理

それでもやはり不安な場合には、頭の形を相談する外来があり、最近は都市部を中心に増えています。頭の形外来では、頭の形の不安について相談でき、ヘルメット療法といって、乳児の頭の形のゆがみを改善する目的で専用の矯正用ヘルメットを一定期間装着する治療法などについても相談できます。ヘルメット療法は個々の頭の形に合わせた理想的な頭の形を得られるヘルメットをオーダーメイドで作成し、長期間装着することで頭の形がヘルメットの形に合わせて矯正されていくものです。デメリットは病気に対する治療ではないため自費になる点や、定期的な受診による負担です。ヘルメット療法そのものは長期的にも安全性は高く、発達への悪影響もないと考えられています[8]。不安な場合には一度ご相談されるとよいでしょう。

まずはここから|家庭でできる安全な対策「タミータイム」

一方で、そこまでではないのだけれどちょっと気になる、という保護者の方に、比較的手軽に安全にできる方法をご紹介したいと思います。それがタミータイム(うつ伏せ遊び)です。

タミータイムは赤ちゃんが起きているときに、親の監督下でうつ伏せ遊びをすることです。産院を退院後、新生児期から無理のない範囲で始めることができます。1回あたり短い時間(数分間)から始め、赤ちゃんの機嫌などをみながら少しづつ時間を増やしていきます。アメリカ小児科学会は生後7週までに1日合計で15~30分を一つの目安として推奨しています[9]。

早めの正確な情報が不安を減らす──短時間の説明でも効果がある

ちなみに保健師が退院後に新生児訪問をする際に、親向けに短時間(2分間)のビデオを紹介し、タミータイムや寝かせ方の工夫に関するパンフレットを渡して頭の形について教育を行った結果、生後4か月時点での頭蓋指数(頭の幅を長さで割った比率で、頭の変形(絶壁や平坦化)を客観的に測る指標)の悪化が抑えられたという研究があります[2]。サンプル人数が少なく、限界のある研究ですが、短時間であっても医療者からのこうした情報提供は効果がある可能性を示唆する研究です。

我々医療者も積極的に情報提供していくことが大事だと改めて感じています。

今回の記事が少しでも皆さんのお役に立てたら幸いです。

参考文献

1. Erck Lambert AB, et al. Pediatrics. 2019;143(5).

2. Chekmeyan M, et al. Ann Plast Surg. 2024;92(4S Suppl 2):S204-s6.

3. Lynch ME, et al. JAMA Pediatr. 2024;178(9):899-905.

4. Ryu GS, et al. Childs Nerv Syst. 2025;41(1):176.

5. Straub L, et al. JAMA Psychiatry. 2022;79(3):232-42.

6. Steinbok P, et al. Childs Nerv Syst. 2007;23(11):1275-83.

7. Feijen M, et al. J Craniofac Surg. 2015;26(8):e770-3.

8. Park KE, et al. Plast Reconstr Surg. 2023;152(3):488e-98e.

9. Moon RY, et al. Pediatrics. 2022;150(1).

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ありがとうございます。
佐久医療センター小児科医長 日本小児科学会指導医

小児科専門医。2004年名古屋大学医学部卒業。現在佐久医療センター小児科医長。専門は小児救急と渡航医学。日本小児科学会広報委員、日本小児救急医学会代議員および広報委員。日本国際保健医療学会理事。現在日常診療の傍ら保護者の啓発と救急外来負担軽減を目的とした「教えて!ドクター」プロジェクト責任者を務める。同プロジェクトの無料アプリは約40万件ダウンロードされ、18年度キッズデザイン賞、グッドデザイン賞、21年「上手な医療のかかり方」大賞受賞。Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2022大賞受賞。

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