経済産業省が、経済安全保障の強化に向けて企業が取り組むべきことをまとめた経営ガイドライン(指針)案を策定した。経済的威圧を強める中国との取引に伴うリスクを念頭に、レアアース(希土類)のサプライチェーン(供給網)維持への備えなどを求める。企業はどのような対策を練っておくのが有効なのか。
経産省の経営ガイドライン案では、時代認識として効率重視から地政学リスク対応の時代へ変化したことが指摘されている。
レアアース備蓄、代替調達という地政学リスクを踏まえたサプライチェーンの強化や、自社の重要技術の流出防止、有事の際の企業間連携の必要性などが盛り込まれる。中国の経済的威圧を念頭に、安定供給できる製品は新たなビジネス機会にもなると強調され、年内の正式版公表を目指し、パブリックコメント(意見募集)が行われている。
この指針は、経済安全保障推進法(経安法)に基づき、企業が主体的にリスク管理して国家安全保障に資する事業活動を行うことを促すためのものである。
このガイドラインの対象者は、主に経営者等(執行役員およびそれに準ずるしかるべき責任者を含む)。自社を取り巻く経済安全保障リスクを把握・評価し、必要に応じて調達先や販売先の変更、研究開発投資、企業買収などの経営判断を行うことが想定されている。
また、経営者らを補佐する実務者による利用も考慮されており、さらに、社内の共通認識醸成や、取引先や株主などのステークホルダーとの対話にも活用することが推奨されている。
これまで中国に対し、政治と経済は別という考え方で接してきたが、その時代は終わったと政府が宣言した格好といえる。
1972年9月に日中国交正常化が実現し、その後、政治も経済も日中関係は活発だった。ところが、90年代以降は「政冷経熱」といわれ、政治的な関係は冷え込んでいる(冷)が、経済的な交流は非常に活発で熱い(熱)状態になった。
これは、中国の胡錦濤国家主席が作った言葉であるが、その胡錦濤氏も2022年10月の中国共産党大会で習近平主席から途中退席を強いられた。今では、「政冷経冷」の時代になったと言わざるを得ない。もともと中国は専制国家であり、自由な国ではない。一方、経済取引は自由を求めるので「政冷経冷」も必然だ。専制国家との経済取引には注意が必要であり、それが経済安全保障になっている。
(たかはし・よういち=嘉悦大教授)