大分在住の女性Ｓ様から「頭がいっぱいで倒れそうです。お会いできませんか」とご連絡をいただいた。私の正しい使い方である。頑張れば報われると思って尽くしてきたが、旦那は病気になり、子供からは絶縁され、親の介護もあり、一向に楽にならない。一体いつまで頑張ればいいのかと思うと絶望的な気持ちになって死にたくなる。親から愛されて育って来たと思っていたが、違った。愛されたくてたまらないからこうなったのだと最近気づいた。Ｓ様は、そのようなことを言った。

Ｓ様と合流する前に「スタバでコーヒーを買っておいてください」と言われた。二分後、Ｓ様から「途中でドライブスルーに寄るので大丈夫です」と連絡が来た。Ｓ様と合流し、車で家に行く途中にドライブスルーに入った。Ｓ様は「何がいいですか？」と言った。私は「喉が渇いていないので大丈夫です」と言った。Ｓ様は「気を遣わないでくださいね」と言った。私は「スタバが好きなんですか？」と聞いた。Ｓ様は「嫌いです」と言った。私は「おい」と言った。子供が絶縁したくなる気持ちがわかった。何が気を遣わないでくださいだ。あなたが好きなら飲めばいい。自分も嫌いだし、相手もそれを必要としていない時に、決めつけて、押し付けてくるから絶縁されるんだぞ。

Ｓ様は「自分がなんでも先回りしてやるから、家族全員が依存体質になった」と言った。逆だ。Ｓ様といるとダメになると思ったから、家族全員が自立をしたのだ。私は「Ｓ様がやりたいことはないのですか？」と聞いた。Ｓ様は「結婚前はリクルートで働いていた。結婚後は旦那の介護や犬の世話もあるから、自宅でコンサルをしている」と言った。私が「それはやっていることだろう。俺はやりたいことを聞いているのだ」と言ったら、Ｓ様はザブングルの加藤みたいに顔面をぐしゃぐしゃにして「自由に旅をしながら働きたいです」と泣いた。泣き方が、小学五年生みたいだった。

Ｓ様には生命力があると思ったので「東京で暮らすのはどうですか？」と聞いた。Ｓ様は「東京はたまに行くくらいでいい。ハワイに暮らしたい。オアフ島に自分の家がある絵も描けている」と言った。私は「家を売ってハワイに行けばいいじゃないですか」と言った。Ｓ様は「一人は嫌なんです」と言った。私は「ハワイに家がある男と結婚をすればいいじゃないですか」と言った。Ｓ様は「パリも好きなんです。昔から日本は合わないなって思っていました」と言った。私は「しがらみも何もかも捨て去って、犬だけ連れて、パリでもハワイでも好きな場所に行けばいい」と言った。

Ｓ様は「坂爪さんに会ったらビルが倒壊するくらいの衝撃を受けると思っていたが、倒壊した」と言った。私は「ハワイやパリの夢が残ったなら、他の全部が倒壊してもなんら問題はない」と言った。Ｓ様は「最後にハグをしてください」と言った。長めのハグをしたら、Ｓ様は「優しい」と言って再びザブングルの加藤になった。みんな本当は悔しいのだなと思った。真面目になるほど脆くなる。頑張れば頑張るほど苦しくなる。頑張らなきゃいけない時点で道を間違えている合図。忙しいことはかっこいいことではない。忙しいことは恥ずかしいこと。忙しいことはダサいこと。こんなに頑張っているのにとか褒められたい認められたい愛されたいと思ったら危険信号。生き方を変える合図。Ｓ様は「困った時にまた連絡をしてもいいですか？」と言った。私は「別にいいけど、どうせなら次はハワイかパリで会おうよ」と言った。困ったらまた連絡するって、フェアじゃないよ。対等になって一緒にハワイかパリで会おう。