【「みんなで大家さん」不動産投資トラブル】ゲートウェイ成田構想「地権者の合意がないまま開発申請し許可された」…「共生バンク」「成田市」「成田空港」の馴れ合いの構図
地権者の合意は…
「問題はこの5筆です」と土地の登記簿を広げながら、大和田が説明を加えてくれた。土地は登記上、区分けされ、その単位を筆と称する。1筆に所有者が1人だけの場合もあれば、複数人で共同所有するケースもある。成田空港に隣接するこの地域は、大勢の地権者が存在し、複雑な所有状況になってきたという。 「ここは明治時代から地権者がいて、そこから相続されています。相続人が1筆あたり数百人というケースもありますが、そこには生存者もいれば、亡くなってしまった人もいる。あるいは消息不明で連絡がとれないケースもある。5筆をトータルすると、おそらく1000人近い地権者となり、共生バンクは本来、その人たちの合意書をとらなければならなかったのですが、それは非常に難しい」(大和田) 成田空港の敷地の多くは明治維新後、宮内庁の所有する御料牧場となり、終戦後に満州など中国大陸からの引揚者が入植した。空港に隣接する共生バンクの開発用地にも、古くから所有者がおり、ただでさえ飛行機の進入路で都市開発の制限があるうえ、所有状況が複雑だったため、開発できず手つかずだった。ところが、共生バンクは規定される地権者の合意がないまま、成田市に開発申請し、すんなりと許可されているというのだ。 行方知れずの地権者がいるような地域を開発するには、裁判所に訴える方法もある。裁判所に所有者不明を証明してもらい、そのうえで自治体に開発を申請するわけだ。 「そのためには5年くらいかかるが、共生バンクはその前に申請して成田市から開発を許可されています。しかし専門家である市の担当者がそれを知らなかったとは思えない。この間、私の質問に対し『調査中』としてきましたけれど、地元の専門家だから調査なんてしなくともわかり切っていたはずです」(大和田) とどのつまり、共生バンクと成田市、さらに成田空港が馴れ合い、開発許可が出た疑惑で、みんなで大家さんによる法令違反の核心がこれだ。時系列にすると、それがよりいっそう鮮明にわかる。 地元説明会の翌2017年3月と10月に成田市に事前相談、12月6日には成田空港が開発の同意書を共生バンク側に提出している。その2日後の12月8日、成田市が開発申請書を受理し、26日には開発許可を決定している。まさしく共生バンクと成田市、成田空港が一体化し、法令違反の開発に向けて突き進んでいたように見えるのである。 * * * マネーポストWEBの関連記事【《ついに見えた問題の核心》「みんなで大家さん」2000億円超不動産投資トラブル“異常なくらいにプロジェクトに肩入れ”の便宜供与疑惑政治家たちを直撃、何を語ったのか】では、強引に進められた疑惑の“ゲートウェイ成田プロジェクト”の全貌に迫るとともに、便宜供与が疑われる政治家に直撃している。 【プロフィール】 森功(もり・いさお)/ノンフィクション作家。1961年福岡県生まれ。岡山大学文学部卒。新潮社勤務などを経て2003年よりフリーに。2018年、『悪だくみ――「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』で大宅壮一ノンフィクション大賞受賞。『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』、『菅義偉の正体』、『魔窟 知られざる「日大帝国」興亡の歴史』など著書多数。 ※週刊ポスト2025年12月26日号
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