【「みんなで大家さん」不動産投資トラブル】ゲートウェイ成田構想「地権者の合意がないまま開発申請し許可された」…「共生バンク」「成田市」「成田空港」の馴れ合いの構図
本誌『週刊ポスト』が追及してきた不動産投資商品「みんなで大家さん」がいよいよ最終局面を迎えている。1500億円以上を集めた成田空港近くの一大プロジェクトで開発用地が使用できなくなったのだ。関係者への取材からは、この開発には数々の疑惑がありながら強引に進められてきたものであることが浮かび上がる。ノンフィクション作家・森功氏がレポートする。(敬称略)【前後編の前編】
成田にマスコミが殺到
共生バンクグループが進めてきた「ゲートウェイ成田」構想の地元・成田市議会が、大きく揺れている。さる3日に開かれた12月定例議会にはかつてなく新聞やテレビの記者が殺到して取材している。なかでも最大の注目点は、共生バンクと成田市や成田国際空港会社(NAA)とのかかわりである。 「なぜ成田市がこれほどいい加減な『みんなで大家さん』の計画を認めたのか。どうして成田空港が開発用地の4割を貸し、協力しているのか」 市議会の質問がそこに集中し、新たな事実や疑惑が次々と浮かんでいる。くだんのゲートウェイ成田構想の始まりは、2016年にさかのぼる。計画を定点観測してきた開発コンサルタントの大和田康夫が解説する。 「2016年2月に地元説明会が実施されていますので、その前に共生バンクによる事業計画が立案されていることになります。この年の11月には2度目の説明会が開かれています。これらは不動産特定共同事業法(不特法)の改正を見据えた動きでしょう。 空港に隣接するこの地域は騒特法(特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法)に規定された特別区域で、開発にはさまざまな壁がありました。飛行機の進入する真下に位置するので、建物の高さ制限があり、なかなか開発できなかった。もともとゴルフ場計画があり、その土地に目をつけたのが共生バンクでした」 何度も書いてきたように、不特法は複数の投資家から集めた資金で不動産開発をおこなうための法律だ。出資者に事業収益を分配するシステムになっている。が、1995年4月に施行された不特法はあまり広がりを見せず、3度の改正を経て事業者が一挙に増えた。1度目の改正が特別目的会社(SPC)活用の許された2013年だ。続く2017年の改正でクラウドファンディングを使った募集が許され、利用促進を図った2019年の改正で、さらに事業が広がった。 この法改正に乗じて投資を増やした業者が共生バンクであり、最大の事業がゲートウェイ成田プロジェクトである。ところが、このゲートウェイ成田構想には大きな問題があった。大和田が説明を続ける。 「土地開発許可を得るための成田市の条例には、申請段階で地権者の3分の2の同意が規定されています。法令の解釈は裁判所でも分かれるほど微妙な部分がありますが、こうした数字には規定に反しているかどうか、ゼロか百の判断しかありません。 しかし共生バンクは3分の2の同意がないまま市に開発計画を申請し、それが許可されているのです。どう考えても条例違反であり、私は当初からそれを市に訴え続けてきました。で、ようやくここへ来て、『条例違反でした』と認めたのです」 ゴルフ場開発なども同じだが、地元の自治体に申請する段階で地権者の同意を取り付ける必要がある。自治体の開発許可を得たうえで土地を買い取るなり、賃貸するなりする。ゲートウェイ成田では、2016年に成田空港が開発に同意。およそ46万平方メートルの開発用地のうち、4割にあたる19万平方メートルほどをみんなで大家さんに賃貸することが決まった。その賃貸料が年間1800万円と格安だ。 もっとも成田空港の所有地を借りるだけでは、開発許可される地権者の3分の2の同意に届かない。そこで共生バンク自らタネ地と呼ばれる土地を買うと同時に、他の地権者から同意を取り付けていったことになっていた。しかし、実はそれが虚偽であり、条例に触れるというのである。いったいどういうことか。
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