リクルートの“サクラ行為”内部告発者がSNSで誹謗中傷の被害 嫌がらせ投稿の発信源を情報開示した結果は“リクルートが契約する電話番号” 同社の責任が問われる可能性を弁護士が解説
社用携帯かは「回答しかねる」
そこでA氏は誹謗中傷の"犬笛"と思しき「元リクルート社員」のアカウントの開示請求を試みた。その結果に驚かされたという。 「開示された発信者情報に基づいて弁護士が調査すると、件のアカウントの電話番号はリクルートが法人契約する番号でした。アカウントが元社員を名乗ることから少なくとも私が在籍していた頃は社員だったと考えられます」(A氏) A氏は、それを踏まえてリクルートに対応を求めたが、満足のいく返答ではなかったと語る。 「リクルートは社用携帯かという質問に回答せず、投稿内容も『誹謗中傷には当たらない』と回答しました。裁判所が誹謗中傷にあたると判断して開示命令を出したにもかかわらずです。法的手段も含めて、誠実な対応を求めていきます」(A氏) 本誌・週刊ポストは件の電話番号に複数回電話を掛けたが応答はなかった。番号の使用者についてリクルートに事実確認を求めたが、「いずれも個人情報に当たるため回答しかねる」(広報部)とコメント。件のアカウントからの投稿内容についても、「社内調査で誹謗中傷は確認できませんでした」(同)とするのみだった。 裁判所が発信者情報の開示を認めたのは、件のアカウントの投稿が誹謗中傷に当たると判断されたからだとA氏は主張するが、会社側の認識は大きく異なるものなのだ。
リクルート社の責任は
リクルートの対応に問題はないのか。労働問題に詳しい中村和雄弁護士が指摘する。 「従業員が社内の不祥事を告発した場合、その内容が真実であれば会社側が従業員を解雇・処分することは原則禁止です。ただし告発と解雇や賞与減の因果関係について従業員側が立証する必要があり、それが難しい。他方、今年6月に改正された公益通報者保護法では告発者が1年以内に解雇・処分されたら、会社側に"告発が理由ではない"と立証する責任がある。仮に今回のケースが法改正後に生じていたらA氏の解雇は無効になった可能性があります」 社用携帯から社員によって誹謗中傷が行なわれた場合、会社の責任が問われるケースもあると中村弁護士が続ける。 「A氏が抗議してもリクルートが社用携帯からの誹謗中傷を放置した場合、従業員の不正行為を止める立場にありながら、会社としての義務を怠っているとして、民法上の『使用者責任』や『安全配慮義務違反』を問われる可能性はあります」 オンラインでのサクラ、SNSでの告発や誹謗中傷など現代のネット社会の問題が詰まった一件。今後の対応をめぐっては、リクルートの企業倫理が問われることになる。 ※週刊ポスト2025年12月19日号
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