芸人の山里亮太さんはNPOと協力し、フィリピンで低栄養の子どもたちに給食を提供する「赤メガネ食堂」を作った。著名人の社会活動には「売名だ」「偽善者」などと叩く声もあるが、「ブレーキにはならなかった」という。なぜフィリピンなのか、どうして子どもを支援するのか。思いを聞いた。AERA 2025年12月15日号より。
【写真】】「『偽善者』と呼ばれても、それがブレーキにはならなかった」と話す山里さん
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──8月下旬、フィリピン・マニラ首都圏北西部にあるタンザ小学校に、芸人の山里亮太さんとNPO法人ACTIONが手がけた「赤メガネ食堂」がオープンした。マニラ首都圏、特に貧困地域では経済的困窮を背景に多くの子どもたちが栄養失調に苦しんでいる。この食堂では、100人の低栄養児童に対して、1年間、月曜日から金曜日、給食を無料で提供する。山里さんは食堂の建設費を支援した。
「赤メガネ食堂」のオープンの日は僕も現地に行きました。子どもたちがすごくうれしそうに、おいしそうに給食を食べていて。「これからも食べられるの?」と聞かれて、「そうだよ」と答えたときの笑顔が良かったんです。
子どもたちの中には、父親の漁を夜中から朝4時まで手伝ってから学校に来る子もいるし、おなかが減って勉強ができない子もいて、学校がつらい場所になってしまっている。でも給食が食べられるようになると、学校は友達もいるし、ごはんも食べられる最高の場所に変わるんです。おなかがいっぱいになれば勉強だって頑張れる。
どの子も甥や姪のよう
──フィリピンの子どもたちへの支援のきっかけは、自身の「劣等感」だったという。
以前から、子ども食堂に寄付をしたりしていたんですが、ずっと、自分は人間としての厚みがないなあと思い続けていて……。それを知ったうちの妻(俳優の蒼井優さん)がママ友に、「もっと見識を広げられたら、自分のこともわかるようになると思うんだけど、何かないですかね」と聞いたんですよ。その方がたまたまJICA(国際協力機構)の方で、そのご縁で、2023年にフィリピンに一緒に行き、取材させてもらいました。
この取材で、フィリピンの子どもたちの支援をしているACTION代表の横田宗(はじめ)さんに初めてお会いして、いろいろと案内してもらいました。マニラは都市部の開発が進む一方で、スラム街の子どもたちはやせていて、ぼろぼろの服を着て、裸足で産業廃棄物の上を歩いたりしている。
最終日に宗さんに「僕に何かできませんか」と伝えました。僕にも娘が生まれ、親になったことで、どの子も姪っ子や甥っ子のような近い存在に感じるようになっていたことも大きかったです。