働き方

2023.07.24 08:00

キャリアを台無しにする「職場いじめ」にどう対処するか

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意地悪な言動は中学や高校で終わりだと思っている人もいるかもしれないが、残念ながら、いじめは大人の職場にも浸透している。米国の職場いじめ研究所(Workplace Bullying Institute)によると、同国では職場でのいじめが常態化しており、労働人口の3分の1以上が影響を受けているという。

職場の「いじめ常習犯」は、同僚を威嚇・侮辱するなどして心理的に追い込み、自分の権力と支配力を行使して他者の自信を損ない、その成功を妨げようとする。その主な目的の一つは、競争相手を排除することだ。加害者自身の不安感や、自分の能力への自信のなさが原因となっている場合もある。

また、幹部レベルの社員は、自分の個人的な利益のために、他人を操り、威圧することがある。このような有害行動は、不健全で敵対的な職場環境を作り出す。

自分をいじめてくる相手と、オフィスで顔を合わせたりビデオ通話をしたりすることを恐れていると、常に薄氷の上を歩いているようなひどい気分になる。他の人が「弱い獲物」の存在を察知し、いじめる側に加わることもある。

職場でのいじめは、時に取り返しのつかない形で人生を変え、キャリアを台無しにする。根深い疑念、恐怖、そして全体的な自信喪失を引き起こす。

職場いじめに対処するには

職場いじめに対処するには、勇気、自己主張、そして「自分でコントロールできること」に集中することが必要だ。早い段階で声を上げ、嫌がらせ行為の記録を残し、自分自身をいたわるようにしよう。

問題行為については、人事部門や所属部署の上司に報告しよう。忌まわしい行為について、日時や具体的な出来事など、詳細にわかりやすく伝えるのだ。会社の苦情解決プロセスに従おう。

セラピストやカウンセラーなど、職場いじめによる感情的苦痛に対処し、状況改善に向けた戦略作りの手助けをしてくれる人と話してみるのも役に立つだろう。違う部署やチームへの異動を考えてもいい。

会社が何もしてくれそうにないなら、社外に法的アドバイスを求めよう。いじめの影響で精神状態がひどくなり、家にいてもそのことが頭から離れないくらいになっているなら、転職を考えてもいいだろう。

長期的影響

職場でのいじめは、いじめを受けた人の健康、生産性、成長に、深刻で長期的な影響を及ぼし得る。職場いじめの被害者は、不安、ストレス、睡眠不足、うつ病、過度の緊張、自尊心の喪失、生産性の低下、常習的欠勤、プレゼンティーイズム(健康の問題を抱えつつも業務を行っている状態)など、長期にわたる心身の健康問題に悩まされる可能性がある。

職場いじめは、従業員の心身の健康だけでなく、組織の収益にも深刻的な影響を及ぼす可能性がある。雇用主は、職場いじめを認識し、それに対処する必要がある。

forbes.com 原文

翻訳=藤原聡美/ガリレオ・編集=遠藤宗生

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2025.11.25 20:00

空間がつくる、情緒的経営価値──世界ブランドを支える日本企業の戦略的デザイン力

表参道・銀座の一等地に並ぶ世界のラグジュアリーブランド。その多くを手がけるGARDEが創業以来築いてきた「情緒的経営価値」創造の真価とは。EcoVadisシルバー評価を取得するなどWell-being 経営でも注目される同社の強みを、役員陣の言葉から紐解いていく。


世界のラグジュアリーショップからホテル、高層レジデンス、百貨店や飲食店、オフィス、スポーツやエンターテイメント複合施設まで、GARDEが手がける空間デザインは多岐にわたる。1985年の創業以来、気鋭のデザイナー集団として実績を重ねてきたGARDEは今、建築・環境デザインをはじめとした「デザイン事業」のほか、不動産売買から新規事業企画開発、海外事業進出支援まで手がけるなど、国内外のビジネスマッチングを行う「コンサルティング事業」、アート活動やメタバース開発、地方創生サービスなどの新規事業を含む「コーディネーション事業」の3つを事業の柱に据える。「情緒的経営価値」の創造をキーワードに、長く世界的なブランド企業に向き合ってきた代表取締役社長の室 賢治は、「お客様の心を動かす体験をいかに つくり出すか」にこだわり続けてきた。

「店舗収益や不動産価値などの“経営価値”を高めるためには、そのブランドがもつ企業の歴史や技術、理念を深く理解することから始めなければいけません。ブランド哲学をいかに翻訳して空間に落とし込んでいくのか。そこで働く従業員や訪れるお客様に、“自分そのものがブランドの一部である”と感じてもらえるような、ブランドストーリーを体現した空間を生み出すことが、我々の仕事だと考えています」(室)

国際デザイン事業本部のクリストファー・ブルックスもまた、「社内外それぞれに向けたブランドメッセージの理解」が、GARDEの強みだと話す。

「店舗デザインからオフィスデザイン、ホスピタリティデザインまで網羅しているのがGARDEの独自性です。店舗やオフィス空間というものは、人材採用においても大きな影響力をもっています。我々はGAFAをはじめ大手企業やブランドの空間づくりを担っており、その経営を中長期的に支えている自負があります」(クリス)

80を超えるラグジュアリーブランドとの取引実績のなかには、ポレーヌをはじめ日本初進出支援の事例も数多い。その背景にGARDEが有するローカルアーキテクトの貢献も大きいと話すのは、「日本に初進出する企業やブランドはすべてGARDEが手がけたい」と意気込むクリエイティブ統括本部の太田勝也だ。

「海外の著名な建築家や有名ブランドの発信したデザインもしくはイメージを受け、国内店舗においてそれをどう具現化するかを考えるのが、ローカルアーキテクト(LA)の役割。日本の法規や国内で調達できる素材に合うかたちで、ブランドが大事にする思いを継承していきます」(太田)

用地取得からデザインまで一気通貫で生み出す経営価値

企画開発事業本部で開発段階からのコンサルティング提案を担う石川 渡は、「ニーズがある場所で情報を取りに行く」姿勢で数々のプロジェクトに参画してきた。

「当部門のミッションは、マーケット調査や分析をもとに、デザイン以外の付加価値を高めていくことです。不動産事業部が取得してきた土地の価値を最大化するために、ホテルかオフィスか商業施設か、事業収支上ベストな提案を考え抜きます。例えば『カンデオホテルズ京都烏丸六角』では、京都の土地売却を検討する売主にデベロッパーを紹介すると同時に、ホテルのオペレーターも選出して提案し、我々が手がけたかったホテルをカタチにすることができました」(石川)

コンセプト立案からファサード、基本計画、基本設計、実施設計、監修までを行った「カンデオホテルズ京都烏丸六角」
コンセプト立案からファサード、基本計画、基本設計、実施設計、監修までを行った「カンデオホテルズ京都烏丸六角」

ここで強みとなるのは、デザイン事業部との連携だ。「ホテルを提案する段階でデザインコンセプトが描かれているため、デザインコンペなどが生じることなく、土地の取得から建築デザイン・インテリアデザインまで、GARDEが一気通貫で手がけることができる」。そう話すのはデザイン事業部の山本 豊だ。

「デザインや建築の機能面などひとつの側面だけではなく、企画案との連携で話を進めることで、お客様が思い描くビジョンを膨らませることができるのだと思っています」(山本)

用地取得からデザインまで、すべての領域でプロフェッショナルが揃うGARDE。不動産事業部の月安崇徳は、「“まず動く”という組織文化による“動きながら考える”クイックさが、事業成長を後押ししてきたのではないか」と分析する。

「不動産が見つかったから動くケースもあれば、こんな施設をつくりたいという企画ありきで不動産が動き出す場合もあります。役割の異なる役員が、すぐに全員集まり議論できるのもGARDEの良さ。有機的に絡み合い、案件が生まれていきます」(月安)

現在、世界11拠点に現地法人をもち大型ショッピングセンターなどのデザイン実績も広げている。業界に先んじて2005年にイタリアの現地法人を設立して以降、ニーズのある国・地域での拠点を増やしてきたのも「経済成長力がある都市にまずは行ってみる」と動いてきて今がある。

「我々は単にカッコよくてキレイな複合施設をつくっているわけではありません。これまで中国やASEAN諸国など現地で実績を重ねてきた経験から『こういう動線を設計したほうがお客様はスムーズに流れます』といったコンサルテーションもできる。表面的なデザインではなく、いかにその施設の営業効率を上げていくかといった経営価値に直結した提案ができる点が、GARDEの信頼を築いているのでしょう」(室)

さらにGARDEの独自性は、メタバース事業や地方創生事業、アート事業といった新規事業への投資姿勢にも表れる。例えばメタバース事業では、GARDEが数多く所有するリアル店舗のデザインデータを活用し、メタバース上の店舗設計につなげていく。新規事業をリードする島田克哉は、「培ってきた資産を生かした事業の可能性」に期待を寄せる。2025年1月にはNYの一等地・チェルシーに300平米弱のアートギャラリー「GOCA」をオープンするなど、収益化が難しいとされる事業に挑戦を続けている。

2025年1月にニューヨークで開業したアートギャラリー「GOCA by Garde」
2025年1月にニューヨークで開業したアートギャラリー「GOCA by Garde」

「長期的な経営価値をいかに築いていくかは、我々がお客様に提案するうえで大切にしてきた考え方です。アート事業といったすぐには結果につながりにくい事業に投資をしているのも、GARDE自体が、長期的な視座に立って成長を続けていきたいという思いの表れであり、社内外にそのメッセージを発信し続けたいと考えています」(島田)


写真前列
中央:むろ・けんじ◎代表取締役社長
左:しまだ・かつや◎専務取締役グローバル統括本部本部長
右:おおた・かつなり◎常務取締役クリエイティブ統括本部本部長

写真後列
左:いしかわ・わたる◎執行役員 企画開発事業本部本部長 シニアディレクター 一級建築士
左から二番目:やまもと・ゆたか◎執行役員 デザイン事業本部本部長 シニアディレクター
右から二番目:つきやす・たかのり◎執行役員 不動産事業部本部長
右:Christopher Brooks◎執行役員 国際デザイン事業本部本部長 デザインディレクター Architect, M.Arch(米国資格)

Promoted by GARDE|text by Rumi Tanaka|photograph by Yoshinobu Bito|edited by Mao Takeda

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キャリア

2023.05.08 08:00

これらの問いの答えが「はい」なら転職のタイミング

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雇用市場が厳しくても、転職が必要なときもある。仕事で幸せになれるかは自分次第だ。どうすべきか迷っている人は、次の仕事が白紙の状態で辞表を提出する前に、以下の問いを自分に投げかけみてほしい。

満足感がまるでない?

今の仕事に不満があるのなら、新しい仕事を探し始めるべきサインかもしれない。仕事を楽しめない、満たされていない、やりがいを感じられないと思うと、人はやる気がなくなる。このような状況下で働き続けると、モチベーションが下がり、生産性は急落する。必要最低限の業務しかこなしていない「静かな退職」状態になり、それに気づいた上司から叱責されるだろう。何もかもが負のスパイラルに陥ってしまう。

社内に自分の未来はないと感じる?

今の仕事に、行き詰まりを感じることもある。成長も学びも、新しいことへの挑戦もない。何の変化もなく1日が過ぎていく。自分のスキルが十分に活かされず退化していくことがもどかしい。会社の中で成長し、発展し、前進できるような仕事を見つけるべきだ。

ワークライフバランスがとれていない?

仕事であまりに多くの時間とエネルギーを求められ、自分や家族のための時間がほとんど、あるいはまったくとれない状況なら、それは他の機会を追求する必要があるという警告だ。

このままでは燃え尽き症候群になり、身体的・精神的・感情的な健康に悪影響が出る恐れがある。ワークライフバランスが悪いと、家族や友人との関係もぎくしゃくして、有意義な人とのつながりを失ってしまいかねない。

有害な職場環境から抜け出せない?

有害な職場環境とは、ストレスが多く、コミュニケーションが不十分で、同僚や上司から敬意やサポートが得られない環境だと定義できるだろう。働いていてサポートがない、過小評価されている、いじめられていると感じると、メンタルヘルスや仕事のパフォーマンスに深刻な影響を及ぼす。職探しを始めるべきサインだ。

努力が評価されていない?

職場で自分の貢献が認められていない、評価されていないと感じるなら、今の仕事を辞め、自分が評価される場所を見つける必要があるかもしれない。

ただし、そうする前に上司と面談し、抱いている懸念について相談しよう。これまでしてきた仕事を明確かつ簡潔に説明し、成功例や担当業務の枠を超えて効果を生んだ事例を挙げ、期待以上の働きをしたことを上司に示すのだ。反論されたら、会社の期待に沿うためには何を改善し、どう行動を改めればよいのか具体的なフィードバックを求めよう。
次ページ > インフレが経済的なストレスになっている?

編集=荻原藤緒

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2023.04.18 13:30

「非モテ」男性の過激化が米国で問題に、その背景と解決法

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米国では「インセル(Incel)」と呼ばれる一部の男性が問題になっている。彼らは「意に反した禁欲(involuntarily celibrate)」を強いられており、自分たちの性的経験の欠如や恋愛での失敗は女性たちのせいだと感じている。

インセルのコミュニティは、メディアや研究者によって「女性蔑視主義者であり、暴力を助長し、過激な思想を流布して参加者を扇情している」として批判されている。インセルであると自称または推定されている人物が起こした無差別殺傷事件も複数回起こっている。

こうしたインセル現象は、心理学的研究の対象となっている。しかし、こうした危険で破壊的な潮流に、多くの若い男性たちが引き寄せられている根本的な要因への対処は、まだ進んでいない。

インセルに関連したムーブメントもある。例えば、男性権利運動(MRA:Men's Rights Activism)、MGTOW(Men Going Their Own Way=ミグタウ、女性との付き合いを極力避ける男たち)、父親の権利運動といったものだ。

以下では、問題を大局的に捉え、若い男性たちをこうした罠から効果的に遠ざけるのに役立つと思われる2つの知見を紹介する。

1. インセル運動に加わる若い男性たちは、社会から疎外されている傾向にある

ジョーダン・ピーターソンは、トランスジェンダー運動に対する批判的な姿勢などによって物議をかもしているカナダの心理学者だ。ピーターソンは、2022年に英国のジャーナリスト、ピアース・モーガンのインタビューを受けたが、このなかでピーターソンは、自身をインセルコミュニティの「知的ヒーロー」と考えているかと尋ねられた。

ピーターソンは、次のように答えた。「人々がどれだけ自信を失っているかを理解するのはとても難しいが、多くの若い男性たちは、間違いなくこうしたカテゴリーに当てはまる。彼らは、自分を女性にとって魅力的な存在にするにはどうすればいいかを知らない。当然のことながら、女性のほうは選り好みをする。こうした男性たちは孤独であり、誰もが彼らを嘲笑の的にする」

学術誌『Current Psychology』に掲載された論文によれば、インセル男性は、非インセル男性よりも社会的サポートを得られない傾向があり、孤独を経験しやすい状態にある。この事実は、複数のメンタルヘルスおよびそれに関連する問題と結びついている。

このような孤独な男性たちが、共通の経験によって彼らを「理解」してくれるように感じられるオンラインコミュニティに出会うと、帰属意識を求めてそこに引き寄せられる一方で、その本質的な有害さを見落としてしまいやすい。

インセルコミュニティの根幹には、劣等感や、自分はセックスや恋愛に関して無価値であるという感覚が存在しており、それが女性への憎悪というかたちで顕在化する。彼らは、自分自身の問題の直接的原因は女性にあると信じているのだ。
次ページ > インセル男性はメンタルヘルス問題を抱えていることも

翻訳=的場知之/ガリレオ

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