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米FRB、意見割れる中で3会合連続0.25%利下げ―1-3月は利下げ停止視野に(下)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表
記者会見に臨むジェローム・パウエルFRB議長=米NBC NEWSチャンネルより

FRBは今年最後の会合で小幅利下げを決めたが、3委員が反対票を投じた。FRBはインフレ再燃を警戒、追加利下げには慎重だ。1-3月は利下げ停止が予想され、2026年はわずか1回の利下げを予想している。

■パウエル議長会見

 FRB(米連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル議長は12月10日、FOMC(公開市場委員会)会合後の会見で、インフレ見通しについて、「インフレ率は2026年の最初の3カ月でピークに達し、その後再び減速し始める」とし、2026年1-3月期はインフレ上振れリスクが残るとの判断を示した。FRBの1月と3月の会合では金利据え置き、4月会合以降の金融緩和再開の可能性が高いことを示唆した。

 特に、議長は連邦政府機関の閉鎖によって発表が遅れている重要な経済指標(雇用統計やCPI(消費者物価指数)統計など)は、「当面は信頼できない可能性があり、額面通りに受け取るべきではない」とした上で、「データは歪んでいる可能性がある。データを入手しても次回1月会合を前に注意深く、そしてやや懐疑的な目で見なければならない」とし、当分の間、金融政策決定は慎重にならざるを得ないとの見方を示している。

 また、議長は金利水準について、「2025年は3回((1回0.25ポイント利下げ換算)の利下げにより、政策金利は中立金利のレンジの上限に位置しており、経済を押し上げるわけでも抑制するわけでもない」と指摘した上で、「FRBは次の行動(金融政策)を決める前に今後のデータを待つ好都合な立場にある」、「1月会合については何も決まっていないが、経済の動向を見守る態勢が整っていると考えている」とし、性急な利下げを避け、追加利下げには慎重な姿勢を示した。

 さらに、パウエル議長は、「FRBはより良いバランスを求めて政策を転換する必要性を強調するだろう。完全雇用と物価安定の2つの目標のバランスが取れていない」と述べており、市場では今回の利下げはインフレ抑制を優先したタカ派的な利下げで、その意味では今後は比較的長めの利下げ停止(据え置き)になると予想している。

 ただ、議長は、「(このインフレ見通しは)米国が追加関税を課さないことが条件」と指摘している。また、「以前の高関税は今年のインフレ上昇の一因となったが、新たな関税の影響は薄れ始めている」と述べている。

 今回の追加利下げ決定について、議長は、「労働市場が冷え込み、インフレを刺激するような好景気の兆候が見られなかったため」としている。特に、議長は4月以降の失業率の着実な上昇と雇用者数の伸び悩みを指摘している。

 パウエル議長の任期は2026年5月15日までだが、トランプ大統領は2026年1月にも次期議長候補として、国家経済会議(NEC)のケビン・ハセット委員長を推薦する予定で、市場では同氏が最有力と見ている。

■FRB、月400億ドルペースで国債購入を再開へ

 また、FRBは前回10月会合でバランスシートの減額(金融引き締め)措置を12月1日に終了することを決めたが、短期金融市場の流動性がひっ迫しているため、同12日から毎月400億ドル(約6.2兆円)規模で国債の買い入れを再開、流動性を潤沢供給すると発表、市場のサプライズとなった。

 今回の国債債購入は、「4月に予想される非準備負債(準備預金以外の負債)の大幅増加を相殺するため、数カ月間は高水準で維持される。その後、購入ペースは大幅に低下する可能性がある」としている。市場ではFRBによる債券購入の再開は株価などリスク資産の上昇を後押しする可能性があると見ている。

 FRBは過去の資産買い入れの量的金融緩和(QE)により、一時9兆ドル(約1400兆円)近くに達し、現在は約6兆5360億ドル(12月4日時点)にまで縮小しているバランスシートの減額(金融引き締め)措置を12月1日で終了することを決めた。これは保有する国債とMBS(不動産担保証券)の満期償還金による再投資(買いオペ)の減額、いわゆるロールオフ(市中の過剰流動性を吸収する不胎化政策)の中止を意味する。市場では最近、短期金融市場がひっ迫していることから、ロールオフは行き過ぎているとの懸念が生じていた。このため、将来、債券購入を再開する可能性があると見ていた。

 次回会合は2026年1月27-28日に開かれる予定。(了)

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ありがとうございます。
The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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