東大病院医師、寄付金の不適切使用指摘されなかったか 贈収賄事件
日本の医療を引っ張ってきた東京大学医学部付属病院の医師が、医療機器メーカーから研究目的の寄付金名目で賄賂を受け取ったとして10日、東京地検に起訴された。事件は、どのようにして起きたのか。識者は、寄付金の意義を認めつつ、公正性を保つよう訴える。 【写真】東大病院の寄付の仕組み 東京地検などによると、松原全宏被告(53)は、2021年と23年、医療機器メーカー「日本エム・ディ・エム」が扱う大腿(だいたい)骨のインプラントの使用について便宜を図る趣旨で、同社側から東大側に計80万円を寄付させ、うち計約70万円相当を賄賂として受け取ったとされる。認否は明らかにしていない。 警視庁捜査2課によると、同社など5社からは16~23年、起訴内容を含めて東大側へ計350万円が寄付金として振り込まれた。このうち約150万円は、被告が親族へのプレゼントとして米アップル社製のタブレットを購入するなど私的流用した、と同課はみる。 寄付の仕組みはどうなっていたのか。 企業や個人は事前に具体的な寄付先や金額、目的を記入した書類を東大側に提出して審査を受ける。その後指定口座に振り込まれると、東大側の取り分を除き、約85%は寄付先として指定された職員らが使うことができるという。 東大によると、会計規定などで「寄付目的の範囲で物品費、人件費、飲食費に使える」と定める。 物品購入の場合は、購入先業者から提出された納品書や請求書をもとに、大学側の口座から業者に代金を振り込む形だ。10万円以上50万円未満などの場合には「少額備品」、10万円未満の場合には「消耗品」として扱い、一部を抽出して、実際に使われているか、大学側が現場で事後確認するという。 東大のコミュニケーション戦略課は取材に「物品の所有権は大学にある。事務部門において、購入された物品が適正に管理されているかについて確認している」などと答えた。 捜査関係者によると、被告は、寄付金を不適切に使ったと大学内で指摘されたことはなかったという。(三井新、西岡矩毅)
朝日新聞社