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フィンランドは日本ではとてもクリーンなイメージだが、実は他の民族に対しては最も慎重な姿勢を持ち、国内政治では一定の譲歩をしつつもフィンランドの他の少数民族に100%迎合しない気質を持つ。そのため、おそらくフィンランド人は少数派の立場になって考えることは日本人同様、苦手な性格があると考える。 しかしながら、フィンランドでは、少数民族の権利は憲法レベルで明記されるなど日本とはレベルが飛び抜けた政策も行っている。しかし、それは戦略があると思っている。 フィンランドは歴史的にサーミやロマなどを同化政策で追いやってきたことは日本では知られていない。サーミにはサーミ語などの伝統的な言語使用や伝統的な居住区域を認めなかったり、ロマの子供たちを親から引き剥がしてより「真っ当な人間」にしようと教育を行った。その結果、サーミ諸語は衰退し、フィンランドのロマニ語のネイティブはほぼいなくなってしまった。サーミやロマなどは言語の継承者をがんばって育てている状態だが、特にロマニ語は運用できない状態にあり厳しい。 フィンランドは自発的に反省したわけでもない。1995年に少数民族の権利が憲法に登場したが、それは先の同化政策に反省したから、というよりも東西冷戦後の国家の立ち位置を考えてEUに加盟をするにあたり、国内の少数民族状況を直視しなければならなくなったからだと考える。 そのため、フィンランドは先住民族・少数民族の政策を見直し、否が応でも反省しなければならなくなった。しかし、全面謝罪を行うとサーミやロマへの賠償はどうする、EUの中で裁判が起き、フィンランドのイメージが悪化する、などさまざまなデメリットがある。最も大きいデメリットは北方県ラップランドの中にあるサプミ(Sápmi)である。 フィンランドは土地の開発や資源の権利を持つが、フィンランドがサーミの伝統的な地域の使用権利を認めるなど、全面謝罪に至った場合、フィンランドは自由にラップランドにある土地を使えなくなる可能性が出て、先住民族に国家に迫る権利を分け与えた前例になる。 そのため、フィンランドは謝罪しない、そしてその代わり一定の権利を認めてあげるから静かにさせる戦略を取った。すなわち、権利を憲法に明記した上で、伝統的な土地利用、言語の継承権に基づく教育システムの拡大、議会の設立など地方行政において多大な権利を与えた。 今回の差別騒動で私の知り合いのフィンランド人と日本人の夫婦など色々な人が声を上げている。一方で、一部の政治家などの根本的な「こんなの差別じゃないよ」という考えはフィンランド人の根源的な、他の民族を歴史的に省みてこなかった歴史ともオーバーラップする気がしてならないのだ。
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