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高市早苗首相の外交に対する認識はかなり危うい。7日、就任後初の衆院予算委員会で、「台湾有事」を巡り集団的自衛権の行使が可能となる「存立危機事態」に当たるかどうか、立憲民主党の岡田克也氏に問われたのに対する高市氏の応答にその危険性が端的に表れている。
〈(高市氏は)「戦艦を使い、武力の行使も伴うものであれば、存立危機事態になり得るケースだと考える」と述べた。(中略)/首相は台湾を巡る状況に関し「深刻な状況に至っている。最悪の事態を想定しなければならない」と説明〉(7日、琉球新報電子版)
この発言に「戦艦」という言葉があることに注目してほしい。戦艦という範(はん)疇(ちゅう)の艦船を中国は持っていない。また現代の安全保障の論議で、戦艦の使用について言及されることは皆無だ。従って、戦艦という言葉を用いたこの答弁は、外務省や内閣法制局の官僚が関与していない高市氏の独創的見解と見た方がいい。
〈「存立危機事態」は2015年に成立した安全保障関連法で新たに設けられた概念である。日本と密接な関係にある他国が攻撃され、日本の存立が脅かされる危機を指す。存立危機事態となれば、集団的自衛権を行使できるとの立て付けである。/ただ、歴代政権は台湾有事との関係については明言を避けてきた。高市首相は「最悪のケースを想定して答弁した」と釈明したが、明らかに従来の政府公式見解を踏み越えるものである。/そもそも、存立危機事態はどのように認定されるのか、依然としてあいまいである。仮に事態が認定され、自衛隊が派遣されるようなことになれば、大きな影響を受けるのは、台湾に近く、自衛隊増強が進む八重山や宮古、米軍基地を抱える沖縄本島である〉(12日、琉球新報社説)
筆者も高市氏の発言は「従来の政府公式見解を踏み越えるもの」と考える。
高市氏だけでなく、東京の政治エリート(政治家、官僚)は、沖縄が日本の付属物であるかのごとく考えている。これがそもそも間違っている。沖縄には、かつて琉球王国という国家が存在し、1850年代に当時の主要国であるアメリカ、フランス、オランダが琉球王国を国際法の主体と認め、条約を締結した経緯がある。1879年のいわゆる「琉球処分」(沖縄県の設置)後も、沖縄は日本に完全に同化することはなかった。
日本の存立危機事態なるもので、沖縄が戦争に巻き込まれることは避けなくてはならない。在阪中国総領事のSNSでの発信と、それに対する日本の政府や国会議員の反発のように既に日中間の感情面での軋轢(あつれき)が強まっている。このような状況で与那国島や尖閣諸島周辺で偶発的な銃撃が発生すると、一挙に本格的な武力衝突に発展する危険がある。
まずは、存立危機事態に対する政府の見解に変わりがないことを閣議で決定させ、首相を含む政府関係者を拘束する必要がある。
そのために有効なのが国会議員の提出する質問主意書だ。高市氏の7日の衆院予算委における発言が、政府の立場変更であるか、さらに存立危機事態を巡る政府の立場に変更がないかについてただす質問主意書を提出するとよい。質問主意書の答弁書は閣議決定を経て、高市早苗内閣総理大臣名で発表させる。高市氏の名の下、政府見解に変更がないことを書面で確認する必要がある。
(作家、元外務省主任分析官)
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