【ポケモン】人生を安価で decide…エンジョイエンジョイね【転生掲示板】   作:ユフたんマン

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いつの間にかこの作品を執筆し始めて一年経ちました。これまで見ていただいた皆さんありがとうございます!
更新は遅いですがこれからもよろしくお願いします!


【閑話】釣り

「天啓だ、釣りに行ってくる」

 

アンカーは部室で突如立ち上がり、事務作業のために使用していたパソコンの電源を切った。

 

「はぁ?またそれ?仕事は?」

「終わったぞ」

「じゃあオイラもいくぜぃ」

「あ!こら歯磨き粉頭!アンタは絶対終わってないでしょ!!」

「逃げるんだよォ!」

「逃げるな卑怯者!仕事から逃げるんじゃないわよ!」

 

部室から出ていくアンカーについて行く形でカキツバタが部室からヘラヘラと笑いながら退室する。

部室からゼイユの怒号が響き渡るも素知らぬ顔でアンカーの隣に並んだ。

 

「いいのかツバっさん、後が怖いぞ」

「ひえー怖いねぇ。ま、どうにかなるだろぃ。明日のオイラに任せるぜぃ」

「楽観的だなぁ…まぁ、行くか」

「どちらに行くおつもりで?」

「……天啓だ。今日の釣りスポットは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポーラエリア、それはテラリウムドームの北西部に位置し、氷山や氷河が点在する寒冷地帯。

環境整備用ブロックから降り注ぐ雪によりそのエリアは純白の世界となっている。

そのため多くの氷タイプを持つポケモン等気温の低い環境を好むポケモンが多くこのエリアに生息している。

 

その寒さ故に生徒たちの間では不人気のエリア。

そんなポーラエリアで釣りの準備をする2人の男子生徒、アンカーとカキツバタであった。

 

「なぁーんでよりにもよってこのエリアなんですかねぃ」

「天啓だって」

「だからその天啓っつーのが何なんだっつー話なんだけどねぃ。あとツバっさん的にはその服装で平気そうなのドン引きなんですけど」

「そこらのヤツとは鍛え方が違うのだよ。それにツバっさんも薄着だろ?」

「オイラは慣れてるからねぃ」

 

アンカーはバッグから釣り道具の入った箱を取り出し、カキツバタの前に並べていく。

 

「ここに3つのルアーがあるじゃろ?」

「何で唐突に博士の真似してんだ?」

「では1つ目、キャッチコピーは母なる海へ回帰せよ!カイオーガルアー」

「壮大だねぇ」

「2つ目、グララララ、馬鹿な大地(息子)をそれでも許そう!グラードンルアー」

「それ版権的に大丈夫なやつかよい」

「3つ目、隕石大好き!レックウザルアー」

「適当過ぎるだろ!?もうちょい何か無かったのか!?」

「因みに自作」

「すげぇなおい!」

 

アンカーが持つのはカイオーガ、グラードン、レックウザのホウエン神話のポケモンを模したルアー。

伝説ポケモンの威厳は何処へやら、小さく可愛らしいサイズで掌に収まっている。

 

「因みにグラードンは大人の事情でキャッチコピーは変更します」

「だろうねぃ」

「レックウザはOKでました」

「…嘘だろ?」

 

ホウエン伝説のルアー商品化希望中。キャッチコピーは置いておいてそこそこいい返事がアンカーの父が務める会社から届いているのだ。量産化も遠くない。

 

「それで釣れるのか?」

「初めて使うからわからん、ツバっさんも試しに使ってみてくれ。ドラゴン使いだからレックウザね」

「お、おう…」

 

カキツバタはアンカーから受け取ったレックウザリールをじっくりと見つめる。

 

「(無駄にクオリティ高ぇ…それに…)」

「カッコイイだろ?」

「かなりイイぜ」

 

男の子というものはどの年代でもドラゴンに惹かれるものである。ドラゴン使いのカキツバタも例外では無かった。

 

2人は同時にヒュッと竿を振りルアーを飛ばす。着水と共にゆっくりとリールで糸を巻いていく。

カイオーガはバシャバシャとクロール、レックウザはウネウネと波に煽られている。

 

「おおー!いい感じいい感じ!」

「カイオーガは溺れてる様にしか見えねぇしレックウザは緑色のシビシラスみてぇだな…ついでにグラードンは?」

「沈む」

「グ、グラードンッ!!?」

 

伝説の威厳は何処へやら(二度目)、情けない姿になってしまったホウエン伝説のポケモン達にカキツバタは憐憫の念を送る。

 

「どっちが先に釣れるか、勝負するか?」

「お、いいねぃ。負けた方が食堂で奢りなー」

「水専門のトレーナーに勝てると思うか?この勝負貰たで!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかしい…いつもならそろそろ釣れてもおかしくないんだが…」

「釣れないねぃ…」

 

釣りを始めて1時間、両者共に成果なし。

 

「こんな筈では…!まさかリアルを追求するあまりにルアーにした3体の威圧感が強すぎたか!?」

「威圧感…そうかな…そうかも…いや、そうか?」

「そうに違いない。だがしかし、今日のデータを参照に改善すればより良い商品になる」

 

無いはずの眼鏡をクイクイと上げるアンカー。エセデータキャラと化したアンカーを後目にカキツバタは退屈そうに腕を伸ばし寝転がる。

 

「暇だねぃ…」

「釣りってそんなもんだからなぁ」

「うーん…なぁアンカー」

「どうした?」

「この学校で気になる人とかいる?」

「急だな…恋バナか?」

「そーよ、この学校可愛い子多いじゃん?チャンピオン様のそういう浮ついた話聞かないからねぃ。気になっちまった。好きだろ?こういうの」

 

その暇を持て余したカキツバタの問いにアンカーは愚問だとばかりに頷いた。

 

「無論、大好きだ」

「で、気になる人は?」

「ブライア先生」

「あー、あの人な。…因みに何処が?」

「見た目、色々とデカい」

「性欲に忠実だねぃ…そう堂々言うもんでねーだろ…」

「他に何があるよ、中身テラスタルキチだぜ?まずあの人がテラスタル関連以外で興味を持つイメージが1ミリも湧かん」

「まぁ確かに生徒達への関心も薄いっぽいしその評価も妥当かねぃ」

「だが色仕掛けされたら堕ちるね、間違いない」

「自信満々に言うことじゃねぇぞ?」

 

内心ドン引きしながら、これブライア先生が聞いたらヤバくねーか?と冷や汗を流す。現在調査の申請中だと言うパルデアにあるエリアゼロとやらに2人で突撃しかねない。ブライアはテラスタル関連には手段を選ばなそうな人物の為尚更である。

その為早急にブライアの話を切り上げ次に進める。

 

「あ、そうそう。オイラが1番聞きてーのはゼイユとの関係だねぃ」

「ゼイユ?昔会ったって教えた筈だが」

「そういうんじゃなくてよ。ほら、ゼイユって性格はキチィけど別嬪さんだろ?だから周りの奴らからよく聞かれんのよ。アンカーと付き合ってるかーってねぃ」

「あぁ…そういう…」

 

ゼイユは自他共に認める美少女。そんな彼女と距離の近い異性であるアンカーがいれば年頃の生徒たちならその関係が気になる事だろう。

本人には聞き辛い為、複数人の恋する生徒達からアンカー達と距離の近い四天王のカキツバタに、真実を確かめてくれと協力を求められるのは必然でもあった。

 

「本人に聞けばいいのにな」

「それが出来ちゃあ苦労はしねーよ」

 

そういうもんかとアンカーは未だ動かぬ釣竿をクイクイと引き上げる。

 

「で、どうなんだ?」

「付き合ってねーよ」

「だよねぃ。距離感が友達って感じだし分かってたけどよ、実際そういう感情ってねーの?」

「無いわけでは無い」

 

その言葉にギョッとした目でアンカーを見つめるカキツバタ。しかしその驚いた顔は次第にふーん…と意地悪げな顔でにやにやと笑うにやけ面へと変貌する。

 

「意外だねぃ」

「そんなにか?そりゃあれだけ距離が近かったら意識はしちまうだろ。可愛いし話してて面白いしな」

「ほー!ほー!」

「ツバっさんがホーホーになっちまった…」

「じゃあ告白とかするつもりなのか?付き合ってねーって知れたら他の奴らに狙われちまうぜぃ?」

「いや…」

 

アンカーは首を横に振る。

 

「それは無いな。少なくとも今は。

アイツとは今の距離感が丁度いい。ポケモンバトルで互いに競い高め合うライバルっつー関係がな。この距離感が近くなっても遠くなっても壊れそうで、情けねぇが怖ぇんだわ」

「はぁ…そうかぃ」

 

アンカーの答えにせっかく揶揄出来そうなネタが出来たと思ったのに…とばかりに残念そうにため息を吐く。

 

「こういうライバルってやつ?前世も含めて初めてだからなぁ、勝手がわからん」

「ハハッ、なんだよそれ」

「カキツバタはどうなんだ?ライバルみてぇな奴はいたのか?」

「いたな…諦めたけどねぃ」

「ところでツバっさんにはいねーの?気になる人」

「ちょっとシンミリしたのが一瞬で吹き飛んじまったねぃ!?」

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼

 

その後も釣竿が動く事は一切なく、アンカーとの雑談が続いた。

 

やれあの子が可愛い、あの先生の授業が面白い、ポケモンがどうたらこうたら、恋バナから学園生活の日常まで様々な話が飛び交った。

 

そんな中、オイラが留年したという話の後に、アンカーが質問を投げ掛けてきた。

 

「そういえばツバっさんってジムリーダーのシャガさんの孫なんだろ?」

 

遂に来た。それはオイラにとって一番触れてほしくない地雷のような話題。

大体この話題になれば説教が始まる。ジムリーダーの孫なのに留年なんて恥ずかしく無いのかやら、ジジイを見習えなんて、人様の事情も詳しく知らない癖に、知ったかのような態度での説教。

龍の一族の奴らは勿論、この学園の教師にもされたしエリート思考の同年代のヤツらにも何度も言われたさ。

テメーらにオイラの何がわかんだって何度も怒鳴り返しそうになっちまったが何とか全て涼しい顔で聞き流していた。

 

あぁ、遂にアンカーにまで言われんのかと急速に冷えていく脳内。つい先程まで楽しかった感情は一気に消え去った。

何とか顔に出ないように張り付いたような笑みを浮かべながらアンカーの言葉を待つ。

 

 

 

 

 

 

 

「ということは他のジムリーダーとの交流があったりすんのか?」

「まぁあったねぃ…最近は行ってねぇけど小さい頃は何度か行事に付いて行かされたぜぃ」

「ほう!ならフウロさんやカミツレさんとも!?」

「…は?いや、まぁあるけど…」

「うぉぉーー!羨ましいぞー!」

 

いいなぁいいなぁと羨ましがるアンカー。これにはオイラも予想外過ぎて思わず素で変な声が出ちまった。

 

「因みにフウロさんにカワイイ(裏声)っつってギュッとされたぜぃ」

「アネ゙ッ!!?」

「カミツレさんにはヨシヨシされた」

「デパミッ!!?」

 

血涙を流しながらオイラを睨み付けるアンカー。そこからも歯を食いしばりプルプルと震えながら心底羨ましそうにするアンカーについ聞いちまった。

 

「聞かねーのか?」

「何が!?フウロさんの触感か!?自慢かコノヤロウ!聞いてやるよどうだったんだ!?」

「柔らかかったぜぃ「くそぉ!」いや、そうじゃなくて…オイラの今の現状についてだよ」

 

キョトンとした顔をするアンカー。先程と比べて風の音しか聞こえない。

 

はぁ、なんで聞いちまったんだろうかとため息を吐く。そこまで思っても無かったかのような反応をされると少しばかり気まずいったらありゃしねぇ。

 

「何で聞く必要なんかあるんですかね?」

「そりゃまぁ…周りの奴らから何度も言われて来たからねぃ…ジジイの話が出たタイミングで説教が始まるかと思っちまった…」

 

それを聞いたアンカーはガハハと笑いながらオイラの背中を強く叩いた。いきなりだったため少し噎せる。

 

「説教だぁ?まぁ多少ばかりツバっさんに思う事はある。授業もまともに出ねぇし課題も放りっぱなし。借りた教材はくしゃくしゃにするし部活の仕事も殆どまともにしねぇ」

「手厳しいねぃ…」

「でもまぁ、いいんじゃねぇの」

「うん?」

「仕事は流石にして欲しいし生活態度も直して欲しいが、留年はツバっさんが選んだ選択だろ?本人がそれで納得出来てんなら俺はそれにケチはつけねぇさ。けどさ…」

 

グイッとアンカーの瞳がオイラの瞳を覗き込む。灰色の、龍のような瞳。全てを呑み込んでしまうかのような、全てを見透かされているような不気味な色を放つ瞳。

本能的に恐怖を感じるオイラの苦手なアンカーの瞳。

 

「俺的には、ツバっさんが心の底から納得出来る『理想』の道を歩んで欲しいけどな」

 

ぞわりと背中を駆ける悪寒。思わず立ち上がってアンカーから距離をとってしまう。

 

「まぁ、実際『理想』を探し出すのも、『理想』を『真実』にするのも難しいんだけどな」

 

その言葉を最後に、アンカーは喋るのを止めた。

 

 

 

オイラの『理想』か…前までの緩ーい楽なリーグ部、そんなものでは無い。

けれど、思いつくものは全部もう既に捨てちまったんだなこれが…

 

ピクピクと動く竿を、無心のまま勢いよく振り上げた。

 

 




釣りバトルの結果
勝者はカキツバタ。この後ハリーマンを釣り上げるもどくばりセンボンで攻撃される。が、アンカーが間に割り込む事で無事無傷。当然のように無傷のアンカーを見てドン引きしたハリーマンはその場から逃げ出した。カキツバタもドン引きした。


カキツバタ
「最初はアンカーのやつ敬語だったんだぜぃ?何か途中から急に敬語が吹き飛んじまいやがった。何でだ?」


アンカー
最初はカキツバタに敬語を使っていたが、カキツバタの生活態度やらのだらしなさを目の当たりにし、更に何度も仕事を押し付けられ敬意と敬語が弾け飛んだ。
一応呼び捨てにはしないがタメ口。







次回『Re:キタカミ』
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