【ポケモン】人生を安価で decide…エンジョイエンジョイね【転生掲示板】 作:ユフたんマン
「さぁ、やりましょうか!」
第2戦、イッシュ四天王カトレア。
「さぁ、私に見せてください、貴方の力を…ですが…連戦だからといって欠伸が出ちゃうような退屈なバトルは勘弁ね…」
美しく微笑むカトレアとニィと好戦的に笑うアンカー。まるで美女と野獣というべきマッチアップ。
「頼んだぞ!!」
「お願いします…!」
繰り出されたのはゲッコウガとランクルス。
様子見は無しだと言わんばかりにアンカーが素早く指示を出す。
「距離を詰めろ!」
ゲッコウガがランクルス目掛けて走る。
初速からトップスピード。空気が爆ぜ、爆音を掻き鳴らし、音を置き去りにしながら接近を試みる。
「気合玉!」
ランクルスの気合玉。それがランクルスの頭上の空を埋めつくさんとばかりに展開される。そしてそれをガトリングの如くゲッコウガ目掛けて一斉掃射。正確無比に絶え間なく気合玉が襲いかかる。
それをゲッコウガは少し身体を逸らすことで無駄な動きをせず回避していく。右に重心をずらし、軽く跳び、姿勢を低く、地を這うように走り続け一瞬で距離を詰める。
全てすり抜けるように僅かな間を用い迫り来る気合玉の弾幕を掻い潜る。
「後ろだ切り裂け!」
ゲッコウガの手に現れたのは水の小太刀。
本来ノーマルタイプの技であるいあいぎりを水タイプに昇華させ威力を高めた技。新たに技名を付けるのであれば“みずのこたち”。
その小太刀で高速で背後から迫る気合玉を両断する。
「サイコキネシスか!!」
背後からの気合玉の強襲。避けたはずの気合玉が次々とゲッコウガに再度殺到する。
それはランクルスのサイコキネシス。元々命中率が低い気合玉をサイコキネシスで操作し、手足のように扱い敵を殲滅する。その技量は正しく四天王。
気合玉が包囲弾のように全方位から襲いかかる。
しかしゲッコウガには通じない。水の小太刀で容易く切り裂き、気合玉が爆散したエネルギーを逆手に取り、その衝撃でランクルスへと肉薄する。
「辻斬り!」
ゲッコウガの特性、変幻自在。使った直前の技のタイプに変化する一風変わった特性。現在のゲッコウガのタイプは悪単タイプ。ランクルスお得意のサイコキネシスといったエスパー技は通じない。
間合いを詰められて焦りが生まれたランクルスが10万ボルトによる電撃を放とうとするが遅い。
悪のエネルギーを込めた脚で、身体を沈み込ませ地を這うように回転しながら相手に脚払いをかける。
そのまま宙に浮かんだままのランクルスに蹴りを放ちながら回転上昇、螺旋蹴りを放つ。その勢いで吹き飛ぶランクルスをベロで拘束し地へと叩き落とす。
反撃出来ず地面へと叩き付けられたところを掌打で2連撃。そのまま流れるような動きで水の小太刀で切り裂いた。
「くる…ッ!!?」
悲鳴をあげながら大きく吹き飛ばされるランクルス。すぐさま追撃をかけるようにゲッコウガは距離を詰めようとするが、その足は止まってしまう。
「速い…貴方のゲッコウガは速すぎる。なら、その長所を消してしまえばいい…。ここからは私達の独壇場です…!」
空間が歪曲する。ペラペラとタイルのような薄っぺらい四角形のものがバトルコートを包み込む。
トリックルーム。それは───
ランクルスが掻き消える。否、ゲッコウガの背後へ。
「気合玉」
ゲッコウガはすぐさま飛び退くが身体が思うように動かない。ランクルスの腕に握り込まれた気合玉が超至近距離で起爆する。
「コウガァ!!?」
遅ければ遅い程速くなり、速ければ速い程遅くなる。
素早さの逆転。
だが動じない。
ゲッコウガはアンカーの手持ちで最も歴が浅い。セキエイリーグを周り始める前に急遽手持ちに加わったため他のポケモンよりもレベルも1段階低い。
そのためゲッコウガ、もとい元ケロマツはジョウト、カントーの旅路の道中、ずっと戦い続けていた。1匹遅れを無くすため、格上だろうが関係なく、先鋒として戦い続けた。
そして得たものが対トレーナー戦での経験。
このゲッコウガは手持ちの中で最も歴が浅い。が、最も対トレーナー戦を経験しているポケモンでもある。
トレーナーの戦い方は十人十色。個の力で押し潰す、多で連携して場を回す、状態異常でじわじわと削る、その他もろもろ。全てゲッコウガは経験し、対応してきた。
ゲッコウガは高速アタッカー。かつ、全ての事象に対応出来るオールラウンダーでもある。
つまりは───
「それも対策済みだッ!!」
刹那、無数に刻まれる剣筋。トリックルーム下で高速で動くランクルスですら捉えきれぬ超高速。
「くる!!?」
「ゲッコウッ!!」
そのまま手に握る小太刀で一閃。悲鳴をあげながらもランクルスが気合玉を再度展開し周囲一帯を薙ぎ払うが既にその場からゲッコウガは離脱している。
「……なるほど、先制技ですか…」
「御明答、今のは電光石火だ」
先制技。それは高速を超えた超高速。トリックルームは素早さを逆転させる。しかしポケモンの技である以上上限がある。その素早さの上限を超えるのが先制技と呼ばれる存在。
元の素早さにさらに素早くなる先制技の掛け算。それが歪む空間すらも捉えられぬスピードを生み出すのであった。
もちろん上限は使用したポケモンの練度に関わってくる。カトレアのランクルスのトリックルームともなれば並のポケモンでは例え最も速い先制技である神速ですら上限を超えることは不可能だろう。
「ですが…」
ゲッコウガが再度、小太刀を手にランクルスへと迫る。
「これならどうでしょう」
トリックルームが反転する。
ゲッコウガの姿がブレる。ランクルスへと迫っていたはずのゲッコウガは既に通り過ぎており、手に持つ小太刀は地面へと突き立っている。
そして目の前にあるのは──
「気合玉」
炸裂。
苦悶の表情を浮かべ、更なる追撃を交わすべく空へ跳ぶゲッコウガだが、身体が動かない。
反転。
すぐさま電光石火に切り替え跳躍するが、またしても力加減を間違えたのか、バトルコートが小さく見える程の上空へ。
反転。
「コウガァ!!?」
更にそこに待ち構えていたかのように展開されていた気合玉が頭上から炸裂する。
反転。
「ゲッコウガ!!」
堕ちるゲッコウガに追撃の気合玉が殺到する。それをゲッコウガは痛む身体に鞭打ち小太刀で捌いていく。
再度電光石火でスローになる身体を動かし距離を詰める。
「辻斬り!」
今度は変わらない。そのままランクルスへと辻斬りを放つゲッコウガだが、間に光が溢れる。
「技の切り替えには多少のラグが生まれる…そこに差し込むように展開すれば…」
炸裂。
大きな黒い土煙をあげながらゲッコウガの悲鳴がバトルコートに響き渡る。
「トリックルームの解除と再展開。その繰り返しでゲッコウガの動きのリズムを狂わせる…トリックルームの対策があってもその切り替えで対応させない…対策潰し…!!」
「…ふふ、対策されるなんて分かりきってますもの。それを更に対策するのは当たり前よね」
苦虫を噛み潰したような顔のアンカーと微笑むカトレア。ランクルスは悠々とバトルコートに浮遊し、油断なく黒煙を見据えている。
「がはは…!!楽しくなって来たなァッ!!ゲッコウガァッ!!」
ここでアンカーのボルテージが上がる。度重なる激戦を得て、敗北の文字が浮かび上がった瞬間、アドレナリンをドバドバと放出しながら嬉々とした表情で叫ぶ。
「…ッ!?いけません!!ランクルスッ!!」
ランクルスの揺らめく影。そこに潜んでいたゲッコウガが勢い良く飛び出し強襲。
影打ち。
水月蹴りをランクルスへと叩き込んだゲッコウガは再度ランクルスへと肉薄し、手に持っていた小太刀を破裂させる。その衝撃にランクルスがひるんだと同時に再度小太刀を創造。今度は両手に小太刀を持ち、大きく同時に振り上げ切り裂く。
「くる…すっ!!」
サイコキネシス。水小太刀を創造したことにより水タイプに変化、悪タイプが消え通用するようになった念力で弾き飛ばし距離をとる。
「もっともっと高みへ!駆け上がるぞッ!!」
「ゲッコウガァッ!!」
バトルへの興奮、勝利の欲求、そして湧き上がる、心躍る程の高揚感。重なり合う思いがシンクロし、更に更にボルテージが上がっていく。
「凄まじい力…ならばこちらも…!」
カトレアが放つは生まれ持ったサイコパワー。かつて制御出来ず暴走していたその力は今現在彼女の手中にある。それにランクルスが共鳴し、お互いのサイコパワーがシンクロする。
両者シンクロにより、120%の潜在能力を引き出すに至る。
「サイコキネシスッ!!」
ランクルスの眼光が眩く光る。
共鳴により強化されたサイコキネシスが、気合玉が破壊し生み出したバトルコート内の瓦礫を全て持ち上げる。
引力が逆転するかのように次々と舞い上がる瓦礫群。
それを期待した面持ちで待つアンカーとゲッコウガ。
相手の全力を、こちらの全力で潰す。強敵への最大の敬意。
口角が自然と吊り上がる。
舞い上げられた瓦礫は次々と密着していき集積していく。それは瓦礫から球体へ、さらに姿を変え超巨大な握り拳の形へと変貌する。それが空に多数。
ダイオウドウクラスの無数の巨岩が上空に鎮座する。
「それもうサイコキネシスじゃなくて違う技じゃ?」
「サイコキネシスとはこういう技よ…」
「そうだったのか!クソォ!!」
サイコキネシス。物理的な質量の雨。
ゴゴゴゴと轟音を鳴らしながらゲッコウガ目掛けて墜落する。それはもはや隕石と見紛う程の大迫力。
「行くぞッ!!」
ゲッコウガの手には水小太刀。トリックルームは未だ健在。電光石火で隕石の如く襲来する巨岩へと立ち向かう。
巨岩はそのデカさ故に超広範囲。逃げ場など存在しない。なら迎え撃つしかない。
迫り来る巨岩を小太刀で真っ二つに両断する。
時には足場にし巨岩を走る。狙いはこれら全てを操るランクルス。
瓦礫の巨岩は走る度に爆発し、欠片が弾丸のように弾けるがそれを全て切り飛ばし足を進める。
水小太刀を振るい再度巨岩を両断。
通り過ぎたと同時に両断したはずの巨岩が間にいるゲッコウガを挟み込むかのように動き出す。
それは一瞬。高速で動くゲッコウガを嵌めるために準備していたかのような周到さ。
ズシン…
巨岩がゲッコウガを巻き込み再度拳の形へと変貌する。ゲッコウガは中で、田舎で自動車に引かれた蛙のように押し潰されたのか…否。
巨岩に切れ目が走る。
それは次々と休まることなく増え続け、斬裂。
巨岩を形成していた瓦礫は粉塵となるまで切り刻まれる。そして中から現れたゲッコウガは次の瞬間にはまた跳び立つ。
反転。
急加速。先程のトリックルームが猛威を奮う。
電光石火の勢いそのまま制御を失い次の巨岩へ。避けることは不可能。
超高速で岩石と衝突し…
「コウガァッ!!」
持っていた片方の水小太刀を手放し足元へ放り、それを足場にさらに加速。もはや制御不能となった速度で自身から巨岩へと突き進む。そしてそのままで貫通。突き出した拳がシュウシュウと煙をあげるが気にせずそのまま宙へ。一気に上空へと躍り出る。
ランクルスの上をとった。と同時に四方八方から襲いかかる巨岩の拳。それは逃げ道を絞り、的確に誘導し追い詰める連撃。まるで嵐のようにズドドドドドと激しい爆音が鳴り響く。その中でゲッコウガは耐える耐える耐える。用意された逃げ道を用いない。
それに気づいたランクルスは逃げ道を用意することをやめ集中砲火。巨岩同士がぶつかり合い粉塵になるまでひたすらに殴り続ける。
およそ10秒程。次々と粉塵となり瓦礫が使い物にならなくなっていく。
「(トリックルームは展開中。今の私達ならこの状態下での先制技は視認から防げます…しかし何でしょうか、この違和感は…)」
刹那、視界が白く染まる。
電光石火、それを視界で捉えたカトレアとランクルスは迎撃を…
「(先程まで持っていた小太刀は何処に…!?)」
パリンッ
割れる音。空を見上げればトリックルームの最上部に蜘蛛の巣のような大きな亀裂が入っている。
その亀裂の中央には小太刀が突き刺さっていた。
「あの時に…!!」
ゲッコウガが巨岩を超加速でぶち抜いたその瞬間。
貫通し姿を現したその時には既に無手、超加速に遠心力が加わり更に加速し放り出された小太刀はトリックルームの最上部に突き刺さり、遂に破壊せしめたのだった。
「(先程逃げず耐えていたのはこの崩壊のタイミングを待っていたのですか…!!)」
初めて走る動揺。そんな隙が見逃されるはずもなく、トリックルームが崩壊したことによりゲッコウガの速度も元に戻る。電光石火で迫るゲッコウガのかかと落としがランクルスを大地へと叩き落とした。
ランクルスの動きが鈍い。共鳴しているからこそ、ランクルスの今の状態がハッキリと分かる。
動くことすら辛い状態。そんな絶望的な状況でも…
「こんな時でも慌てず騒がずに…」
動揺で乱れた心を落ち着かせる。いつものように冷戦沈着に。一族に伝わるトレーナーの心得、嗜み。
しかし依然心は燃え盛ったまま収まることを知らない。
楽しい、ワクワクが止まらない。かつて心から焦がれていた心躍る時。
こんな状況にも関わらず笑みが零れる。
心得等、嗜み等、今は関係ない。
ありったけのサイコパワーを身体から絞り出す。
感情が爆発する。無意識に抑えていた全力のサイコパワー。そのリミッターを外す。
ランクルスへと流れ込むカトレアの勝利への欲求。
「私を信じて戦うポケモンのためにも諦めませんッ!!」
解き放たれるサイコパワー。空間が歪み、主人の望みを叶えんとランクルスのボルテージが更に上がる。
出力200%から放たれるサイコキネシス。
普段の扱い方とは違い、球体にサイコパワーを凝縮する。まるでかの幻のポケモン、デオキシスが扱うサイコブーストと奇しくも酷似している。
それをゲッコウガは…
「コウガァッ!!」
水の小太刀で両断した。はるか上空からの降下速度で更に素早さを上げたゲッコウガに遮るものは無に等しい。
「激流の如く全てを押し流せッ!!」
ゲッコウガがランクルスを蹴り上げる。
宙へ放り出されたランクルスに追従し跳躍。
水の小太刀をランクルスの周囲一帯に次々と創造し投げ付ける。
一閃。
小太刀でランクルスを切り裂く。
先程放り出した小太刀を足場に加速。
一閃。
ゲッコウガのセキチクシティで培った秘奥義。
周囲一帯を小太刀を構えながら跳ぶ、跳ぶ、跳ぶ。
一閃。
残像が生まれ、周りの観客からはあたかも分身をしているかのように見えている。小太刀を足場に高速で跳び回り、斬り掛かる。
斬
斬
斬
次々と空に刻まれていく水の軌跡。
「まぁ…とてもエクセレントでエレガント…!」
そしてついに───
ランクルスは地面へと勢い良く叩き付けられた。
降り注いだ巨岩でクレーターまみれになったバトルコートの、より一層巨大なクレーターの中央でグルグルと目を回し戦闘不能。
勝者ゲッコウガ。
決まり手【忍の秘奥義】
「エレガントでエクセレントね貴方は。実りあるとても素晴らしいお手合わせでしたわ」
「ありがとうございました、またやりましょう!」
「ええ…その時はよろしくお願いしますね…」
申し訳なさそうな、そんな表情でカトレアはポツリと呟いた。
「申し訳ございません…私は貴方を誤解していたようです。今日、貴方と会うまではこの世に属せぬ理の外側の存在だと思っていました。我々の到底理解出来ない埒外の存在だと…
ですがそんなことはありませんでした…
バトルの際、サイコパワーを全開にしたでしょう?その時、貴方の感情も私に流れ込んできました。それは我々と変わらない、心からバトルを楽しむ純然な思い。
いや、私以上に楽しんでいたわね貴方は」
うふふと穏やかに笑うカトレアに思わず見惚れるアンカー。
「今一度、先程までの大変失礼な言動を謝罪致します」
アンカーは頭を下げるカトレアにガシガシと気まずそうに頭を搔く。
「気にしないでくださいよ、気にしてませんし」
ボソッと、周りの誰にも聞こえないように小声で。
「埒外の存在ってのはあながち間違いじゃないですし」
「え?」
「内緒ですよ内緒!これ人に言ったの初めてなんですから!」
「そ、それは勿論!ですが私に話してしまわれて良かったのですか!?」
「別に気にすることでもないし、特に皆と変わらないですからね。魂がちょっと違うくらいだから超能力者か霊能力者にしか気付かれないし」
「うふふ…そうね…分かったわ。私の心の中に留めておきましょう。
それにしても先程の戦い、久方ぶりに感情が爆発してしまったわ…少し恥ずかしい」
「がはは、恥ずかしがることなんてないですよ。俺もテンションおかしくなってましたしね。それにカトレアさんも生き生きとしてて普段とのギャップ差で惚れてしまいそうでしたよ」
「うふふ、お上手ね」
「がはは、本心なんですけどね!」
さて、とアンカーはカトレアと握手を交わしバトルコートへと再度足を進める。
バトルコートを整備していたジュドとコンドウが手を上げる。それに礼を言いながら手を振る。グッとサムズアップを返してきた。
ピオニーにカトレア。既に2戦。本来なら全力の2戦は大きく消耗する。だが今はその疲労感すらも心地よい。
「大トリは私ね」
「いい勝負を」
じっと数秒見つめ合う。相手はシンオウ地方元チャンピオンシロナ。しばらくするとアンカーは両手で顔を覆う。
「恥ずかしい…」
「あら?もしかして照れてる?可愛らしいところもあるのね」
「恥ずかシロナ」
「……ダジャレ?」
「ゲーミングシロナ…テーーテレレレレレレーレレレー…おんみょーん…う、頭が…」
「本当に大丈夫?」
「大丈夫、発作です。緊張もほぐれましたしね。シロナさんの美貌にちょっと脳がやられてました」
「ふふ、ありがとう。もし良かったら私の助手になる?」
「ひっじょーーーーーーに魅力的なお誘いですが辞退させていただきます。夢があるので」
「あら残念。けど魅力的には感じてくれるのね」
「私生活のギャップ含めてどちゃくそタイプですからね。どうっすか?俺カレー作るの上手いっすよ」
「こう面と向かってさらっと言われると照れるわね…っていうか何で私生活!?それとカレーってアピールするとこなの?」
「ガラルだとそこそこ」
「そ、そうなのね…ところで貴方の夢…というのは?」
聞いていいのかと恐る恐る尋ねるシロナにアンカーは躊躇無く答える。
「ポケモンマスター」
「ッ!?へぇ…!」
緩んでいた空気が飛散する。
「このアンカーには夢がある!全てのリーグを制覇しレジェンドであるレッドを超え、世界最強のポケモンマスターになる!そのために進み続けなくちゃあいけない!」
「そう、じゃあ貴方にとって私は夢への踏み台…ということになるのかしら」
「踏むにしては高すぎる壁ですけどね」
お互いに不敵な笑みを浮かべる。
「やりましょうか!」
「ええ!始めましょう!」
2人同時にボールを投げる。
「天空に舞え!ガブリアス!」
「怨嗟響めけ!イダイトウ!」
シロナが繰り出したのはガブリアス。シンオウ最強の龍種にして切り札。
艶やかな鮫肌が日光で照らされ鈍い輝きを放つ。
それに対してイダイトウ。ガブリアスを面前にしたその瞬間、魂が響めく。
敵だ。
敵だ。
敵だ。
ガブリアス…お前は…存在してはいけない生き物だ…
湧き出す怒り。魂の怨嗟が止まらない。そこから放たれる狂気とも思える響めきにガブリアスも気圧される。
溢れる吐き気を催す嫌悪感、肥大し続ける嫌悪感。
全身から滲み出る心の奥底から震え上がらせる異様な雰囲気…!
「(悪癖だな…だが…理性が軽く飛ぶのを除けば技のキレも威力も全て良くなる…問題はその隙を晒した状態であのシロナ相手に通用するのかどうか…)」
イダイトウの悪癖。というよりも進化に関わった非モテ共のバスラオの魂が影響している。
この魂は同性を一方的に敵視する。
生前に番と共にすることが出来ず、種を後世に残せず息絶えたバスラオの無念。死後に強まったその無念は
世代を超え強力な思念となり、まさに呪いのようにイダイトウへと進化するアンカーのバスラオに取り憑いた。
進化当初はウーラオスやポッチャマにまで嫉妬し、憎悪し、嫌悪し、まだ新しい身体に慣れていないイダイトウが身体を魂に乗っ取られよく暴走し暴れ回っていた。
しかしそれをイダイトウは押さえ付け、制御することに成功した。荒ぶる魂を屈伏させ、従属させる。このような魂でさえイダイトウは、強くなる為ならば利用する。先立に追いつくために、置いていかれないように。
イダイトウは非モテ魂共の頂点へ至ったのであった。
男の嫉妬は醜い、そうイダイトウは吐き捨てる。
従え、非モテ共。
が、まだ完全に制御出来たとは言えず、勇ましい雄と対峙する際は今のように気が荒ぶり、理性が少しばかり飛びやすくなる。
闘争心という特性と同じようなものと思えばいい。
モテたいという俗物的な願いから進化を果たしたイダイトウ。この力がメリットとなるかデメリットとなるかは本ポケ次第である。
「(まだ指示を聞いてくれるだけマシだな。何れ極めれば闘争心の上位互換になり得る個性。すいすいとの両立も夢じゃあない)」
「バッシャラァァァア!!」
「(まあ背鰭に切れ込みがないから♀なんだが…都合がいいし黙っとくか)」
ガブリアスが♀とも知らず怨嗟を振りまくイダイトウ。そんなイダイトウに呆れながらもアンカーは指示を出す。
イダイトウのアクアジェット。
高速で水流を纏い突進する。それにガブリアスはドラゴンクローで対抗する。
イダイトウとガブリアスが接触するその間際。
「ウェーブタックル!」
技の切り替え。余りにも滑らかに行われたそれにガブリアスは反応が遅れる。スピードをガクンと落とした影響により、ドラゴンクローのタイミングがズレる。軽くイダイトウを引き裂いたのと同時にウェーブタックルがモロにガブリアスにヒットする。
「畳み掛けろ!」
早業。
先程とは比べ物にならない速度のウェーブタックルが吹き飛ばされるガブリアスを追従し穿つ。
力業。
そしてそのまま大地へと叩き付けた。
有無を言わさぬ怒涛の3連撃。歓喜に震えるようにイダイトウの周囲をふよふよ彷徨う魂が揺らす。
特性の鮫肌によるダメージと自傷ダメージの連続行使。その程度イダイトウは気にしない。何度も何度も放つことで最適化されたウェーブタックルは既に自傷を最低限に抑えることに成功していた。そこに至っての皆伝である。
考慮すべきは鮫肌のみ。3連撃を既にしていて何だが出来るだけ接触回数を減らさなければ勝ち目は薄い。例え少量のダメージであっても自傷ダメージを加え、塵も積もれば山となるという言葉のようになってしまう。
イダイトウはゲッコウガと同じく高速アタッカー。
自傷ありきの自傷技を被弾覚悟の捨て身で相手に押し付けるという、勝っても負けても試合の時間は短い超短期決戦型。
ガブリアスは…
「ガブァァッ!!」
未だ健在。ウェーブタックルを3発モロに喰らったというのに首をフリフリと振り、大したダメージが無いように身体に付いた砂埃を払っている。
それが痩せ我慢なのかはわからないが初撃のダメージレースはイダイトウの勝利。
「今のは…もしかしてヒスイ地方の戦闘技法である早業と力業…!?文献で読んだことがあるわ!アンカーくん!何処でそれを!?」
「キタカミでちょっとね!イダイトウ!アクアジェット!」
まさか今の一瞬で種が割れるとは思ってもいなかったアンカーだったが変わらず攻める。
イダイトウは水流を纏いながらガブリアスの周囲を牽制するように泳ぐ。
「気になるけど…今は勝負よね!ガブリアス天空に飛べ!」
「追従しろ!」
ガブリアスが空を飛ぶ。それにイダイトウは追従し空を泳ぐ。普通の魚系のポケモンは飛べない。そもそも陸上ですら難しいポケモンもいる。だがイダイトウが併せ持つゴーストタイプがイダイトウの浮遊を可能としている。
さらに尾付近の魂を爆ぜさせそこから供給される推進力で速度をブースト。これにより空中戦を成立させていた。
「ドラゴンダイブ!」
「氷の牙!」
紫のオーラを纏ったガブリアス。それは巨大な龍を幻想させるほどに強大な迫力。
それに対しイダイトウは氷の牙。冷気が口元に収束し、アクアジェットで纏っていた水流が凍り、マンムーを思わせる巨大な牙へと変貌する。
激突。
凄まじい衝撃波が空間に走る。1度では終わらない。
何度も何度も激突が繰り返される。
ガブリアスはまるで戦闘機のように機敏に空を飛び、イダイトウはコイキングの滝登りの如く荒々しく空を泳ぐ。
ボーマンダに並ぶ空の王者とヒスイを生きた海の王者。それがまさかの空中戦。
敵の得意な領域に足を踏み入れ、叩き潰さんとイダイトウは吠える。
「ガブリアス!流星群!」
ポケモンバトルにおいて、試合中に使える技は僅か4つ。その4枠の内を同じタイプで埋めるのはバトルにおいて愚の骨頂、愚策も愚策ともいえる。だがそれはフルバトル等の連戦前提の考え方。
1on1のタイマンなら話は別。テラスタル等耐性を変えるものを考慮しないのであれば有利なタイプを偏らせるのも非常に有効な戦略となり得る。
降り注ぐ隕石群。
それをイダイトウは躱す。迎撃はしない。ガブリアスが放つ流星群の隕石はアクアジェットや氷の牙では相殺しきれぬ超威力。
ウェーブタックルなら破壊出来るが自傷ダメージが痛い。
よって選択したのは回避だった。
が、シロナも当然その事を読んでいる。
回避したイダイトウに横合いから衝撃。
「ガブッ!!」
「ばしゃ!?」
ドラゴンクローでイダイトウを切り裂く。そのまま空へ、天空へ上昇。
ドラゴンクローで体勢を崩したイダイトウは流星群を回避するので手一杯でガブリアスを追うことが出来ない。
「ガブリアスッ!!とっておきよ!」
ガブリアスが口から放つのは竜の波動。それがそのままガブリアスの身を包み込む。
そしてそこから放たれるドラゴンダイブ。紫色の龍のエネルギーがガブリアスの全身を覆い、背中から過剰なエネルギーが龍の翼の様に溢れ出す。
さらに腕からはドラゴンクローが鋭利な爪を剥き出しに。
「ついでに流星群!」
同じタイプの技。それで技の4枠の内、多数を埋めるメリット。それは同タイプの技が混ぜやすい、同時に使い易いというもの。
ゲッコウガでいうと電光石火と水の小太刀が顕著だろう。元は居合切りを改良して出来た水の小太刀、元のタイプはノーマルであるため、比較的容易に同時に技を繰り出す事が出来る。
ランターンは波の精密操作を行いながらの別のタイプの雷の精密操作を行うため例外。
「これは…やりすぎだろ…!!」
4つの技を組み合わせた必殺技。通常なら3つですら難しい。幾ら同じタイプの技だからといって容易に組み合わせられるものではない。
これがシンオウ最強であったチャンピオンの力。
ポケモンマスターになるためには超えなければいけない壁。
アンカーも舐めていたわけではない。元チャンピオンといえ、シロナから感じ取るのはワタルの時と同じ圧倒的な格上のオーラ。
「喰らいなさい!技の名はガブリュウセイグン!天統べる竜王の前に散りなさいッ!」
「サトシかよ!」
放たれる威圧感。空一面を覆い尽くす龍のオーラに冷や汗が溢れ出す。だがそれでもアンカーは笑っていた。
「イダイトウ!出し尽くすぞ!」
「しゃあ!」
おはかまいり。それは瀕死になった仲間の無念を力に変えて晴らすために放たれる技。
つまり本来なら瀕死になる仲間がいないタイマンならなんの意味もなさない技となる。
が…
「ばっしゃらあ!」
力を貸せとイダイトウが吠える。それに待ってましたとばかりに非モテ共の魂が激しく燃え盛る。
魂から立ち上るは嫉妬、怒り、憎悪。ありとあらゆる負の感情が抽出されていき、圧縮。
渦巻きのように超高密度となったそれはイダイトウへと吸い込まれるように取り込まれていった。
溢れんばかりの霊気。イダイトウの理性はもう殆ど残っていない。だがそれでも、なけなしの理性で天から舞い落ちるガブリアスを睨め付ける。
溢れ出る霊気は体全体を巡り、姿を変えていく。まるで鎧武者のように、朧気な実体を形成していく。
バスラオの魂を利用したおはかまいり。1日に1度しか使えぬイダイトウの最終奥義。
その破壊力は…手持ちの中でもランターンの蓄電を犠牲にした無制限最大出力放電に次いで最強。
「強い!強い!強い!けど負けられないッ!負けない!身体の奥底から震え上がるほど湧き出る快感!これだから、ポケモンバトルは辞めらんねぇ!!アゲてくぞイダイトウッ!!」
「君の勝利への欲求伝わってくる!君たちの熱い気持ちが流れ込んでくる!けれど私達もそれは同じ!全身全霊を持って!ガブリアス、打破せよッ!」
「どんな苦境でも楽しむのが俺たちだ!燃やせ闘魂爆ぜろや無念!おはかまいりッ!!」
応えるように、両者咆哮。
「ガブァァァ!!」
「ば■■■■■■■■■■!!!」
天から堕ちる巨大な龍と天へと昇る鎧武者。
龍と鎧武者が縺れ合う。
龍の鋭利な爪が鎧武者の鎧を削り取り、鎧武者の凶暴な牙が龍の身体を喰らい千切る。
龍のエネルギーと霊気のぶつかり合い。
凄まじい閃光がバトルコートを包み込み、衝撃と爆音が鎧島全土に轟く。
黒煙が揺蕩う中、一つの影が大地へと堕ちる。
それを誰もが息を飲み、見守っている。
黒煙が晴れ、その姿を晒し出す。堕ちたのはイダイトウ。敗れたのはイダイトウ。目をクルクルと回し戦闘不能。
勝者ガブリアス
決め手【ガブリュウセイグン】
「(まだまだ荒い…けれど…)」
ボロボロになりながらも悠然と佇むガブリアスに目を向ける。威力だけでいえばガブリアスの最高威力。それをして相殺しきれぬ威力。一歩間違えれば倒れ伏していたのはガブリアスだっただろう。
「(今回はまだ押し勝てたけれど先程のおはかまいりが完全に制御出来るようになれば…!)」
「(楽しみね…ワクワクしちゃう!)」
「……ッ!!」
「ありがとう、いいバトルだったわ」
シロナがアンカーに歩み寄り、手を差し出す。
それに対しアンカーは俯きながらギュウと握り拳を作っている。
そんなアンカーを心配そうに見つめる兄弟弟子達だったがそれは杞憂に終わる。
「だぁー!!負けたァ!!」
握り拳を解きシロナの握手に応じる。悔しげな表情をしながらもその顔には笑みが宿っていた。
「ありがとうございました!何ですかあの融合技!名前はあれだけど…」
「え…?流石に安直過ぎたかしら…」
アンカーはブンブンと手を握りながら振り回す。それに微笑まし気な笑みを浮かべるシロナ。
アンカーの中に駆け抜けるのは高揚感。バトルに負けても、悔いの無い戦いが出来たのなら気にすることでは無い。後悔よりも、それを次にどう活かすかを考える。
悔しく無くなんてないがそれ以上に楽しいという感情の方がアンカーの中では強かった。
「もう1戦やりましょう!リベンジリベンジ!」
「ええ!望むところよ、何度でも返り討ちにしてあげるわ!」
「おいおいそれなら俺もリベンジさせてくれよ!」
「私もリベンジよ。負けたままでは終われませんもの」
「よぅし!じゃあまとめてマルチバトル!」
「それじゃあアンカーくんは私と組みましょうか。マルチバトルならアローラで経験したし問題ないわよ」
「おいおい抜け駆けはなしだぜ!坊主とは俺と組む!」
「あら?彼のポケモンと心を合わせる技術は私の専門分野、彼と1番相性がいいのは私だと思うのですけど」
睨み合う3人を宥めながらもアンカーはバトルコートへと向かう。
ヒィヒィと悲鳴をあげるバトルコートの整備係であるジュドとコンドウに手を振る。今度ご飯奢ろうかなと申し訳なく思うアンカーであった。
「いけ!ポッチャマ!」
「震えよ、魂!ミカルゲ!」
「おんみょーん」
「急にどうしたの?」
「ボスゴドラァ!」
「行きましょう、ゴチルゼル!」
この後めちゃくちゃバトルした。
カトレア
相棒ポケモンがイマイチ分からない人。ムシャーナ、ランクルス、ゴチルゼルと印象に残るポケモンが多い。作者がBW世代だからかな?
サイコキネシスの巨岩を創るのはペインの地爆天星のイメージ。拳が降るのは禪院甚一の術式みたいな感じ。
共鳴は超能力者の実力者は全員出来る。というか必須スキル。マツバのような霊能力者もゴーストタイプと似たような事が出来る。
アルティメットアイリスは絆を育んだポケモンとならどんなタイプでも共鳴出来る。流石最年少チャンピオン!カキツバタもそう思うよな?
ゲッコウガ
相手に合わせてどんな立ち回りでも出来るオールラウンダー!近接攻撃も遠距離攻撃も出来るし、影分身で翻弄したり毒でネチネチしたりも出来るぞ!セキチクシティで学んだ秘奥義で敵を蹂躙するぞ!本来は影分身で連続攻撃だが技スペが無かったので再現になった。
セキチクシティの皆さん
忍びの秘奥義?何それ知らん、怖。
水の小太刀
居合切りが水タイプに昇華した技。辻斬りの水タイプバージョン。アクアブレイクの方が強いが急所があるので選考理由もある…のかなぁ?
スマブラの横スマとかのアレ。
シロナ
強い。滅茶苦茶頭の悪い技構成だがフェアリー以外には滅法強い。普段はこんなに思い切ったことはせずゲームのように剣の舞からの多彩な技で全抜きを狙うタイプ。
アイスが好きとかいうあざとすぎる設定を持ちつつ、虹色に光ったり家事が苦手とかいう属性モリモリお姉さん。
レッド達と同世代くらいかちょっとだけ上、多分。
イダイトウ
何故か非モテの魂が活躍してた。元々こいつらのせいでモテる♂に対して一瞬で暴走する予定だったがこれでワタルに勝ったんか?ってなって今の形に落ち着いた。非モテ魂消費おはかまいりは1日1回限定。使った直後は♀にモテるが賢者タイムなので♀に興味は無い。
シロナのミロカロスにアタックするが見事に撃沈する。