極めて理不尽で良識を欠く対応だと言わざるを得ない。
広島県の虚偽公文書作成問題を巡る公益通報の再調査で、通報した県職員ただ一人が法令違反と認定された。
組織ぐるみの不正をただそうと、勇気を出して声を上げた人にだけ罪をかぶせるようでは公益通報制度の根幹が揺らぐ。県は徹底的な調査と再発防止に取り組み、通報者の保護にも努めるべきだ。
これまでの経緯を振り返っても疑問点は多い。発端は2021年度に、県西部建設事務所呉支所が地権者と協議していないのに、うその協議をでっち上げて文書を作ったことだ。国に提出し、補助金を増額して受け取っていた。
県は公益通報で不正を認識したにもかかわらず、「事実の有無を特定できない」と頰かむりしようとした。懲戒処分と事実認定を混同したという人事課の苦しい言い訳も含め、組織的な不正の隠蔽(いんぺい)を疑われても仕方あるまい。
当初はうその協議録作りを認めた複数の職員が再調査で「覚えていない」などと否認に転じたことで、県の不公平な対応が浮き彫りになった。不正を認め、詳しく語った通報者だけは虚偽公文書作成罪に問えるというわけだ。到底受け入れられない。
県はこの認定を「弁護士が判断した」とし、通報者が求める再々調査には消極的だ。横田美香知事は先日の県議会での所信表明で「法令順守」を強調した。ならば真っ先に再々調査に乗り出すべきだ。
県費であれ、国費であれ、税金を粗雑に扱う空気が庁内にはびこってはいないか。他の部署で同様な不正がないかを総ざらいし、うみを出し切る覚悟を新知事に求めたい。
公益通報制度に対する認識の甘さも問題だ。通報者だけが罪に問われれば、内部告発をためらう事態を招きかねない。公益通報者保護法の理念を踏みにじることになる。
6月に成立した改正同法では、告発者探しや報復を厳しく禁じ、刑事罰も科す。今回は意図的でないにせよ、はた目には報復と受け取られかねないことにも自覚が必要だ。
他県でも公益通報の趣旨を履き違えた対応が後を絶たない。福岡県は用地買収を巡る不祥事で、内部資料がマスコミに漏えいしたとして、職員100人近くから事情を聴いたという。報道機関への告発も公益通報だ。公然の「犯人捜し」は理解に苦しむ。
兵庫県の斎藤元彦知事は論外だろう。自らのパワハラ疑惑などの告発者を捜すよう側近らに指示し、懲戒処分に。第三者委員会で処分は違法と断じられても「適切だった」と非を認めようとしない。
不祥事を棚に上げ、情報流出をとがめるような行為は許されない。とりわけ都道府県は企業や市町村の模範となるべき立場だ。公益通報の意義を再確認してもらいたい。
法整備も不可欠だ。現行法では通報者の刑事責任や、内部資料の持ち出しなどに関する免責が曖昧になっている。不利益な配置転換も事実上は可能だ。通報者への報復を絶対に許さぬ法律や条例づくりの議論も深める必要がある。