桃色の軌跡   作:逆襲

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どうしてぼくはこんな所に

洞窟の出口付近から差し込む白光に目を細めながら、デデデはそっと顔を覗かせた。

 

 

――そして、目を見開く。

 

「なっ……なんじゃ、こりゃあッ!!?」

 

視界の先。

 

そこには――

黒い靄をまとい、異様に肥大化したアイスドラゴンがいた。

本来の青白い身体は暗い靄に覆われ、背びれも尾の先端も不気味に黒ずんでいる。

 

 

その巨体が空へ向かって大きく息を吸い込み――

 

ゴォォォォォォッ……!!

 

凍りつく息を天に向けて吐き散らす。

吹き上がる氷の粒は白い嵐となり、上空へと吸い込まれていく。

 

「こ、こんな大きさのアイスドラゴンなんて見た事ないぞ……」

 

デデデの声に、わずかに震えが混じる。

 

その両隣に、ヒナとカスミも静かに顔を出した。

ヒナは細い目で怪物を見据える。

 

「……この氷の息。これがゲヘナ全域の大雪の原因ね」

 

そしてカスミは、恐怖より好奇心が勝ったような声で呟く。

 

「こんな巨大な生物が存在するんだな……。データが取れたら面白そうだが……」

 

三者三様の反応のまま――

巨大な黒きアイスドラゴンは、なおも空へ向けて氷雪を撒き散らし続けていた。

 

 

「……ん? あれは何かしら。」

 

ヒナがふいに空を指さした。

一行の視線がその先へ向く。

 

そこには――

黒い丸い影がいくつも、ふわりと宙に浮かんでいた。

 

デデデの表情がみるみる険しくなる。

 

「うわ……気持ち悪……」

 

温泉開発部がざわつく。

その光景を見たデデデはごくりと唾を飲み込んだ。

 

「あれがキミが言っていたダークマターかい?なんか数が多いように感じるが……」

 

「半分合ってるな。あいつらはダークマターではあるがただの雑兵だ……一体何を……ッ!!」

 

デデデがそう言いかけた途端、ある目的にたどり着く。

 

「アイツら……もしかして自分の体の一部を雪に乗せてばら撒くつもりか!?」

 

「なるほど……キミの話の通りだとこのままじゃゲヘナ全土があいつらに支配されるということか……」

 

黒い影たちは、不気味に蠢きながら氷の息を撒き散らすアイスドラゴンの吐く息の周囲を漂っていた。

 

 

「じゃあ――打ち合わせ通り。あなたたちはアイスドラゴンの注意を引きつけて。私は、あの黒い連中を片づけてくるわ。」

 

ヒナの言葉に、温泉開発部とデデデは一斉に頷いた。

 

「おう! 任せとけ!」

「ひっ……ゴホン、了解……!」

 

みんなが動き出そうとした、そのとき。

 

「……おい、嬢ちゃん。最後に一つだけいいか?」

 

デデデが飛び立とうとしたヒナの肩に、そっと手を置いた。

 

ヒナが振り返ると、いつもの豪快な表情とは違う、

どこか影の差した目でデデデが言った。

 

「奴ら……ダークマターは、他人の心に入り込むのが得意な連中だ。ほんの一瞬でも気を抜くと……洗脳されちまう」

 

握った手がかすかに震えている。

 

「俺様は……守れなかった。自分の心も……プププランドも……」

 

デデデの声はかすかに震えていた。

彼の記憶と悔しさが、重たく伝わってくる。

 

ヒナは短く息を吸い、静かに答えた。

 

「心配いらないわ。こんなところで負けるつもりは、さらさらないもの。」

 

その一言に、デデデは強く頷いた。

 

「……なら、頼んだぞ。嬢ちゃん!」

 

ヒナが翼を広げ、黒いオーラの漂う空中へ向かって跳び上がる。

 

それと同時に、カスミが手を上げ叫んだ。

 

「それじゃあ皆!! 行くぞッ!!!!」

 

「おおーーーッッ!!!!」

 

一行は洞窟の穴から飛び出し、

火口の開けた空間へと勢いよく駆け込んでいった。

 

氷雪が渦巻き、黒い靄が漂う決戦の場へ――。

 

 

 

-------------------

 

 

 

空に浮かぶダークマターたちが、一行の侵入に気づいた。

 

《――侵入者だ!!》

《アイスドラゴン、あいつらを排除しろ!!》

 

アイスドラゴンの黒い靄と連動するように、ダークマターたちは一斉に攻撃態勢へと移ろうとした。

 

しかし。

 

その直後――

紫色の弾丸が、光のような速度でダークマター達へ突っ込んだ。

 

「あなたたちの相手は――私よ」

 

風が裂ける音とともに、ヒナが終幕:デストロイヤーを構え、

旋回しながらダークマターたちの前に立ちはだかる。

 

鋭く光る眼差しが、黒い球体の群れを正確に捉えていた。

 

ダークマターたちがざわつく。

 

《な、なんだコイツ!?》

《気をつけろ!他のやつと格が違うぞ!》

 

ヒナはただ、静かにその銃口を上げた。

 

 

 

------------------------

 

 

 

「うおおおおッ!!」

「くらえぇぇっ!!」

 

下では温泉開発部が一斉に突撃を開始した。

 

銃撃、ダイナマイト、シャベルでの乱打――

ありとあらゆる攻撃がアイスドラゴンへ向けて放たれる。

 

アイスドラゴンはつららを落とし迎撃するが、部員たちは器用にそれを避け攻撃を続ける。

 

「行くよーーーっ!!」

 

メグの火炎放射器が火の奔流を吐き出し、

アイスドラゴンの体表を焼くように包み込む。

 

だが――

 

アイスドラゴンの皮膚は、傷つくどころか微かに蒸気を上げただけ。

 

「……えっ?」

「効いてない……!!」

 

通常より巨大化したアイスドラゴンの皮膚は、分厚い脂肪と氷の鱗によって、生半可な攻撃をまったく受け付けなかった。

 

デデデが歯を食いしばる。

 

「ちっ! なんて防御力だ……!!」

 

アイスドラゴンが、のそのそとこちらへ振り返る。

巨大な瞳が狙いを定めるようにギラリと光り――

次の瞬間、胸の奥まで空気を吸い込む不気味な音が洞窟に響いた。

 

「――氷の息だ! 全員退避!!」

 

カスミの指示が飛び、部員たちは散開しはじめる。

 

だが……

 

「わっ……痛っ!」

 

氷の床に足を取られ、部員の一人が転倒した。

 

「危ない!!」

 

デデデが迷わず前に飛び出した。

その瞬間、アイスドラゴンの巨大な口から凍てつく暴風が一気に吐き出される。

 

 

「うおおおおっ!!」

 

デデデは地面にハンマーを叩きつけ、砕けた巨大な岩塊を一つ掴み上げる。

それを盾のように掲げ、倒れた部員の前に仁王立ちした。

 

凍結の吐息が岩壁を叩きつけ、白い霜が一気に広がっていく。

 

「ぐ……ぬぅぅぅっ!!?」

 

腕に伝わる感覚は、まるで骨の髄まで凍りつくようだった。

それでもデデデは歯を食いしばり、一歩も退かない。

 

 

 

 

やがてブレスが収まり、

盾となった岩は完全に凍り――パキン、と砕け散った。

 

そこに立っていたのは、

息を荒げながらも部員をしっかり庇い切ったデデデだった。

 

「おい……無事か?」

 

「あ、う……うん……!」

 

震える声ながら、部員はしっかりと頷いた。

 

 

 

 

だが、巨大な影が再びうねりアイスドラゴンはまだ攻撃の手を緩める気配を見せない。

凍てつく咆哮が洞窟全体を震わせ、一行に圧を加えてくる。

 

(くっ……奴には生半可な攻撃が通らない……どうすれば……?)

 

カスミは呼吸を整えながら、じりじりとアイスドラゴンを観察する。

分厚い皮膚。脂肪。氷の鱗。どれも銃弾も火炎も通さなかった。

 

だが――

 

ふと視界に、アイスドラゴンが息を吸い込む瞬間の“口の奥”が映った。

 

「……ッ!!」

 

カスミの目に閃きが走る。

 

(外殻が駄目なら――内部から!!)

 

「メグ!! 火炎放射器の準備をしろ!!」

 

「えっ!? でも部長、さっき全然効かなかったよ!?」

 

「違う! 今度は口の中にぶち込むんだ!!」

 

メグが息を呑む。

 

「口の……中……!」

 

「そうだ! 奴の鎧みたいな皮膚も脂肪も関係ない!内部なら、火炎が直撃すればダメージは入るはずだ!!」

 

カスミは振り返り、全員に鋭く指示を飛ばす。

 

「皆!! メグがあの口に近づけるようにサポートしろ!!撃てるやつは援護射撃を!!」

 

「「「おおーーっ!!!」」」

 

温泉開発部の士気が一気に跳ね上がる。

各々が武器を構え、アイスドラゴンの巨体へと陣形を組み始めた。

 

そして――

戦況は、攻めへと転じていく。




アイスドラゴン

ドラゴンと よばれる、まぼろしの 生き物の
ホログラフ。いく年月もの 時間を生きてきた
古代の生命体。炎を はくタイプも 存在する
ようだが、この青いドラゴンは 体内で氷を
せいせいし、こうげきする タイプのようだ。

サブタイトルの元ネタはみんなでカビハンの火山にいたアイスドラゴンです。
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