12/15(月)から二週にわたって放送の『人魚が逃げた』。緩やかにつながる5つのエピソードで構成される物語、各話の主人公を演じていただいた皆さまのメッセージをお届けしています。
【石川禅さん】メッセージ
数寄屋橋に突如現れた、紫色の衣装を纏い、髪まで紫に染めて「バラ色の人生」を口ずさむ美しい青年。浮き世離れしたその姿に惹かれ、後に付いて銀座7丁目の地下の階段を降りると、そこはシャンソン喫茶銀巴里。あまりの美しさに巷の噂となったその青年は、当時20代の若かりし美輪明宏さん。ハーメルンの笛吹き宜しく、御自身で客入れをなさったのです。
演劇学生時代「あんたは絶対あの方の歌を聴くべきよっ」と同期生に手を引かれて僕が銀巴里を訪れたのは、紫の美青年の噂から30年後。目の前で、淡いテラコッタカラーの衣装の美輪さんが唱う「ミロール」を全身で聞き入りました。帰り道、興奮で汗ばんだ肌に心地いい夜風。それが僕の初めての銀座でした。
今回頂いた、5話6話に登場する渡瀬昇の不思議な体験は、この懐かしい記憶を想起させます。噂の美青年はもちろん王子。そして口ずさむ歌、地下へ続く階段、愛に破れた男を慰める「ミロール」の歌詞。さて種明かしは……。胸に沁入るハートウォーミングな物語、そして素晴らしい共演の皆さん。収録スタジオで至福の時間を過ごさせて頂きました。どうぞお楽しみに。
石川禅
演出担当スタッフ藤井です。いつも「青春アドベンチャー」では西洋史に材をとった冒険活劇のスーパー・バイプレイヤーとして大いに頼りにさせてもらっていますが、今回お願いしたのは「嘘は遥か」(第5回・6回)の主人公・渡瀬役。
定年後に絵画コレクションの趣味にのめり込むあまり、人生の道を踏み迷う渡瀬をペーソスたっぷりに演じていただいています。モノローグも絶品ですのでお楽しみに。
劇中に出て来るルネ・マグリットの作品「Song of Love」が掲載された図録を抱えて収録スタジオにお見えになったあたりから、すでに『人魚が逃げた』のマジカルな時間に迷い込んだような心持ちでしたが、収録後にいただいたメッセージの濃密さに圧倒されました。
都市のうたかたに浮かんでは消える、妖しくも美しく切ない時間と空間が封じ込められているような一篇の随筆に、石川禅さんの表現の基底にある世界の奥深さを垣間見させてもらった思いです。
今回はさらに、別のエピソードにもご登場シーンがあります。霧矢大夢さん主演の第4回(「街は豊か」後編)には渡瀬が一瞬“ゲスト出演”、第1回と第9回では芸能事務所のマネージャー江古田役を演じていただいています。どうぞお聴き逃しなく。
『人魚が逃げた』キャストボイス、次回は霧矢大夢さんのメッセージをお届けします。
(この記事は番組の「聴き逃し」配信終了までの期間限定公開です。)
『人魚が逃げた』(全10回)
~銀座に現れた“王子”と出会う5人の男女の物語~
【NHK FM】
2025年12月15日(月)~12月19日(金) 午後9時30分~午後9時45分(1-5回)
2025年12月22日(月)~12月26日(金) 午後9時30分~午後9時45分(6-10回)
★「聴き逃し」配信あり(放送から1週間)
【出演者】
田中亨 霧矢大夢 石川禅 谷田歩 仙名彩世
百名ヒロキ 石田圭祐 筒井俊作 平体まひろ
山本道子 金沢映実 鳳真由 桜一花 釆澤靖起
【原作】
青山美智子
【脚色】
菊地百恵
【音楽】
関向弥生
【スタッフ】
制作統括:桑野智宏
技術:山賀勉 林晃広
音響効果:今井裕
演出:藤井靖
【あらすじ】
ある週末の正午、東京・銀座の歩行者天国。テレビ番組の街頭インタビューで「失礼ですが、あなた様は?」とマイクを向けられた青年は「王子です」と答えた。「ぼくの人魚が、いなくなってしまって……。逃げたんだ。この場所に。」
生中継を目にした視聴者は、SNSに「#人魚が逃げた」「銀座に人魚逃げたの?」「王子やばい イケメンすぎる」など思い思いに投稿。人魚姫を探す王子の噂は、さざ波のように広がっていく。
銀座の街ですれ違う5人の男女が、童話から抜け出てきたような“王子”と遭遇し、それぞれ運命の岐路を横切っていく瞬間を描く5つの小さな物語。