鬼気迫るアナウンスが監獄に流れる中、リンクとパイモンはリオセスリの執務室の前まで来ていた。
リンクが押すと、扉はあっさりと開く。
「…鍵すらかかってないぞ、よっぽど切羽詰まってるみたいだ…!」
扉を越え、螺旋階段を駆け下りる。
最下層には、2人の人影があった。
l「おっと。こっちに来たか…」
s「…危ないから逃げてって言ったでしょ?」
「リオセスリとシグウィンか…予想通りだな。それで、ここで何をするんだ…!?」
『最終兵器の起動とか…!?』
l「違う。…あれを見ろ。」
リオセスリの眼の前にあるのは、この前にも見た巨大な蓋…
蓋についているメーターは既に振り切れていた。
l「俺達にも分からなかったが、恐らくこれは圧力が限界って意味だ。この蓋はまだ存在してはいるが、すぐに決壊する。」
「そうすると…?」
恐る恐るパイモンは聞いてみた。
s「このフォンテーヌが、原始胎海の水に沈む事になるわ。」
その瞬間。
ゴゴゴゴゴ……と形容されるであろう音が響く。
地面の下から巨大な何かが近づいてくる感覚……
『塞ぐ?』
「オマエの道具でも何とかなる話じゃないぞ!!」
リオセスリが前へ踏み出す。
l「下がってろ。これは俺たちの仕事だ。」
そう言うやいなや、原始胎海の水が、蓋が弾け飛んだ音と共に勢いよく噴き出した。
リオセスリが片手を突き出す。
瞬間、水が凍り付いて氷の壁になる。
「こんな量を凍らせるなんて…!」
l「……言われなくても分かってる。」
氷にはすぐにヒビが入り始め…
その向こう側からさらなる水圧が襲い掛かる。
l「シグウィン、今だ。」
s「了解よ。」
シグウィンは3数えた後、素早く腰のホルスターからハート型の銃を抜いて壁際の装置を撃ち抜いた。
巨大な隔壁が、地鳴りのような音を立てて降りていく。
リオセスリがスライディングで隔壁の下を抜け、原始胎海の水が噴き出そうとした、その瞬間。
隔壁が完全に閉じ、水流を塞ぎ切った。
『魅せプだ…。』
シグウィンは銃をクルッと回してホルスターへ収める。
リオセスリは額の汗を拭いながら、淡々と言った。
l「まだ終わってない。……あんたらは避難しな。最上階へ戻れ。」
「でも……!」
シグウィンも微笑みながら頷く。
s「私たちは大丈夫。あなた達は外で待っていてちょうだい。」
「…リオセスリ、シグウィン!絶対無事でいてよな!」
二人を残し、リンクとパイモンは急ぎ階段を駆け上がった。
階段を上る途中、リンクは一枚の扉の前で立ち止まった。
「まだ寄り道する気か!?ここって、リオセスリに止められた所じゃ…」
『最終兵器の部屋だ。』
「………?」
リンクが扉を押し開くと、奥には恐ろしく広い空間があった。
「なんだここ……!?」
中央には、特大の船が安置されている。
要塞の地下に隠されていた最後の秘密…フォンテーヌが沈没した時のための巨大な箱舟。
「まさか、……沈むこと前提でこんな物があるなんてな……」
要塞を抜け出し、急いで地上へ向かったリンクとパイモン。
地上に出ると、いきなりヌヴィレットが立っていた。
nu「君たち……戻ってきたか。」
『…ただいま。』
「ヌヴィレット!何があったんだよ!?」
ヌヴィレットは深刻な表情で、歌劇場の方を一瞥した。
nu「いきなりで悪いが、いますぐ歌劇場へ向かってほしい。」
「何が起きたんだ?」
nu「フリーナ様が危ない。」
「あの水神がか……」
ヌヴィレットはさっきのリオセスリ達を助けに行くらしい、
リンクとパイモンは、監獄の入り口からほど近い歌劇場へ駆け込んだ。
歌劇場の一角、この前はナヴィアと利用した会議室の前…
部屋の中から、フリーナの震えた声が聞こえてくる。
「…アイツ、もう限界みたいだな……」
『入るか。』
リンクは、大きな音と共にドアを勢い良く開いた。
室内の空気が凍りつく。
部屋の中では、ソファの上のフリーナが凍りついたように姿勢を正し、その向かいには見覚えのない女性が座っていた。
銀の髪に白と黒の服、真っ赤なバツ印のついた瞳。
優雅でありながら恐ろしく冷たい視線…
?「…ほう。フリーナ殿がおっしゃっていた二人とは君達の事だったか。」
フリーナは青ざめながら、こちらに困惑とともに助けを求めるような視線を送ってきている。
a「お会いできて光栄だ。私は召使…こと、ファデュイ執行官第四位、アルレッキーノだ。」
「し、執行官…!」
f「キ、キミ達の席はもう用意してある…。さあ、ボクの隣に座るといい。」
フリーナはリンクとパイモンを横に座らせた。
フリーナの横には明らかに一席分しかスペースが無いが。
よほど切羽詰まっているのだろう。
a「そんなに仲が良かったのか。…さっそくだが、ここにいる皆は知っているだろう?「公子」が失踪したということをね。全く心配で仕方がない。」
タルタリヤが失踪…つい数週間前の事な上、監獄内の出来事なのにアルレッキーノは知っているらしい。
f「あ、ああ、もちろん知ってるさ。僕から付け加えるなら…その者の武芸は、悪くない物だっただろう。」
見栄を張るフリーナ…
a「おや、フリーナ殿も彼について知っているようだ。そうだ、忘れていたが、彼は隣の者と共に最高裁判長殿に裁かれたんだったね。」
a「最も、彼が失踪したのはそれよりも後、つい最近の事だが。知っているとは実に恐れ入る。」
フリーナは嵌められていることに気づいたらしく、顔が青くなっている。
その時、地面が揺れた。
「地震…!?」
揺れはすぐに収まった…この世界で地震なんて今まで経験した覚えがないが…
a「これは…。予言が次の段階へ進んだのではないか?」
f「そうかも知れないけど…全く問題は無い。この僕、水神フォカロルスが居る限りこのフォンテーヌは安泰だ!」
a「そうか。」
その後は、有耶無耶のままに対談が終わった。
正確には、フリーナが怖くなって勝手に帰っただけとも言える。
その場に残されたアルレッキーノは、リンク達を引き止めた。
a「…タルタリヤからは妙に頼れる男だと聞いていたが…納得が行った。」
「ファデュイって言ってたけど、タルタリヤとはどういう関係なんだ…?」
a「同僚、と言ってもいい。彼に気に入られるという事は、君も戦いを好む性格なのだろう。」
『うん!』
アルレッキーノは、やっぱりと言いたいような表情を浮かべた。
a「…。それより、もっと核心的な話をしようじゃないか。」
辺りの空気が、さっきの対談と同じ重い雰囲気に戻る…
a「私は昔フリーナ殿を直接襲撃したことがある。結論から言うと、彼女は神の心を持っていなかった。」
「神を襲撃なんて大丈夫か!?」
a「私を心配しているのか?…なら、彼女はその時どうしたと思う?」
アルレッキーノは、怪しい事に笑顔で問いを投げかけて来る。
「えーっと…」
a「彼女は神の力を使うどころか、なんと命乞いを始めたんだ。」
「命乞い…、さっきもすっごく怯えてたもんな…」
a「誘拐も視野に入れていたが、流石に泣いて抵抗するフリーナを攫う気にはなれなかったという訳だ。」
真面目な顔に戻り、本題に戻すアルレッキーノ。
今の話を聞くに、彼女にも人間味はあったようだ。
a「先程、彼女は大口を叩いていたが、彼女が予言を止めるために努力をしていたという事実は全く無い。」
『つまり…?』
息を呑む2人。
a「ここから言える事はつまり、…フリーナは水神では無い。という事だ。」
「『……………な……何だって〜!?!』」
会話はそれ以上続かなかった。
アルレッキーノは必要なことだけを告げ、静かに去っていった。
リンクとパイモンは、重たい空気を引きずったまま歌劇場を出る。
外に出た瞬間、冷たい雨が二人を打った。
『雨…?』
「さっきまでは晴れてたよな…」
歌劇場前の噴水広場。
そこに、傘も差さずに立つヌヴィレットの姿があった。
何か悲しい事があったのか、ただ静かに雨に打たれて居るようだ。
「ヌヴィレット……?」
声を掛けても振り返らない、雨音だけが辺りを満たしている。
「……そういえば。」
パイモンが、ふと思い出したように呟く。
「フォンテーヌじゃ、雨が降るのは水龍が泣いてるからって話があったな…?」
『水龍か…』
岩の龍や草の龍をボコボコにした経験があるリンクは、同じ様に殴り飛ばせば泣き止むかな、等と碌でも無いことを考えた。
「ヌヴィレットって…、リンクをワンパンするくらい強いし、ひょっとすると水龍かもな…」
パイモンの小言を聞いたリンクは、ヌヴィレットを見つめる。
『……よし。』
「どうした!?」
次の瞬間。
リンクはヌヴィレットの前に回り込み、全力で変なポーズを取った。
沈黙。
nu「……ふっ。」
ほんの一瞬ヌヴィレットの口元が、わずかに緩んだ。
その瞬間、雨がぴたりと止んでいく…
『大成功。』
ヌヴィレットは空を見上げ、深く息を吐いた。
nu「……君たちは、本当に予想外だな。」
「まさか…本当にオマエなのか…!?」
nu「君達には隠すつもりも無かったが……改めて言おう。」
彼は二人をまっすぐ見た。
nu「私こそが水龍だ。」
パイモンは目を見開いた。
「やっぱり……!」
ヌヴィレットは、ほんの少しだけ微笑む。
nu「先ほどの地下の件……原始胎海の水は、私が元に戻した。」
「危なかったぞ…」
nu「だが、私の対応は間に合わず、既に何処かで犠牲を出してしまっただろう…」
原始胎海の水を止めるのが完全には間に合っていなかったらしい。
nu「そして……フォンテーヌの予言は、やはり避けられない。」
「予言か……フォンテーヌはやっぱり……」
『恐怖の大王が……!』
「海に沈むってやつだ!オマエはちゃんと話を聞いてろ!」
その時。
ドローンの様なマシナリーが飛んできて、ヌヴィレットに封のされた文面を手渡した。
どうやら、たった今届いた伝令のようだ。
彼は目を通した瞬間、はっきりと表情を変えた。
「…何て書いてあるんだ?」
nu「…やはり……。」
低い声で、続けるヌヴィレット。
nu「ポワソン町にて原始胎海の水が噴き出した。住民の大多数が行方不明……いや、恐らく……」
「そんな……!」
nu「……そして。」
最後の一文を、ヌヴィレットは絞り出すように告げた。
nu「自責の念に駆られたフリーナ様は…失踪した。」
静まり返る噴水広場。
止んだはずの雨が、また降り出しそうな空だった。
この先のスーパーシリアスを、はたしてこのギャグ小説に出来るのでしょうか…?
ネタバレになる前に自分の目で確認しておく事をオススメします。
フォンテーヌ編用投票箱
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フリーナ(やる気高)
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リネリネ
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レッキーノ
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ヌヴィレット
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エミリエ
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水仙十字
-
諧律のカンティクル
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クロリンデ(やる気低)
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シグウィン
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リオセスリ
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ナヴィア