京都新町病院「廃院」 副院長ら幹部、差し止めを求め仮処分申請
京都新町病院(京都市中京区)を運営する医療法人知音会は、2026年3月に廃院することを決めた。病院の幹部らは11日、廃院の差し止めを求める仮処分を京都地裁に申し立てたと発表した。幹部らは地域医療の拠点が失われると訴え、知音会側は「多額の赤字を計上し、やむなく廃院を決めた」としている。
申立書などによると、京都新町病院は、日本郵政が経営していた「京都逓信病院」が前身。2022年に知音会が譲り受けた。内科、外科、肛門(こうもん)外科、耳鼻咽喉(いんこう)科などがあり、訪問看護ステーションを開設し、訪問診療もしている。
知音会が譲り受ける前から赤字が続いていた。賃金を段階的に減らし、病床数を99床から90床に削減した。譲渡時に9・7億円の赤字だった収益は24年度に1・2億円の赤字見込みになるまで改善した。
知音会は、建物の老朽化や人件費の高騰もあり、法人全体の経営が厳しく、法人全体を守るためなどとして、今年4月に廃院を決めた。病院の幹部らは10月の臨時会議で廃院を告げられた。知音会は他の医療法人への譲渡も検討したが見つからなかったという。
仮処分の申し立ては10日付で、副院長や看護部長ら26人に上る。今後、労働契約法に反するとして、従業員としての地位を認めることも求めるという。
会見した幹部は「職員や患者の今後について全く説明されず、廃院は一方的に進められた。法人の都合だけで地域医療を奪おうとする今回の方針は到底見過ごすことはできない」と話した。
知音会側は取材に「これまでも職員とは対話を続けてきましたが、一部の職員からの理解を得られず、このような申し立てをされたことは残念です。患者さま、地域の皆さまのことを第一に考えながら廃院の手続きを進めてまいります」と答えた。