【2025年ベストバイ】料理研究家 土井善晴が今年買って良かったモノ
「福来純」本みりん
F:白扇酒造、伝統製法熟成の「本みりん」です。 土井:岐阜県加茂郡川辺町の白扇酒造という蔵の本みりん。今世の中に出回ってるみりんの多くは“みりん風”で、シロップにアルコール、化学調味料を混ぜたようなもの。スーパーマーケットに行っても本物のみりんはほとんど無いですね。でもこれは、純粋にもち米、米麹、米焼酎でできている。本来のみりんは元々飲み物やったんです。夏の栄養ドリンクみたいな。 F:飲めるんですか? 土井:飲んでみますか? こちらは3年熟成のもので色がちょっと濃いけども。 F:ありがとうございます。甘い香りがすごいですね。美味しいです。 土井:美味しいでしょ? これを料理に使うと本当に美味しくなります。このみりんと醤油を合わせて出汁にしたら、うどんやそうめんのつゆになる。丼ぶりにする時は、醤油とみりんと水が1:1:5。お玉に1杯の醤油、お玉に1杯のみりん、お玉5杯の水入れて、カツオ節ひとつかみ、中火で一煮立ちするだけ。沸騰したらもう丼ぶり出汁ができる。砂糖を入れずに1:1:4 にすれば、そうめんつゆにもなる。それくらい簡単で、自分で作ると美味しいんですよ。 F:他のみりんと比べてどう違いますか? 土井:何から何まで違います。これを隠し味に使えば何でも美味しくなる。調味料は自分のお料理の武器ですから、いい調味料を使えば、出来上がりがワンランク、ツーランク良くなるんです。 F:先生は最近、この本みりんをどんな料理に使われましたか? 土井:親子丼ぶりかな。醤油とみりん、玉ねぎと鶏肉を小切にして小鍋で炊いて、沸騰してちょっと色変わったくらいで卵とじたら、とてもおいしい丼ぶりができる。あとは、ドレッシングにちょっと入れてみるとか。ラーメンに入れても美味しくなる。万能に使えます。
「田野屋塩二郎」天日塩
F:最後は高知県「田野屋塩二郎」の天日塩ですね。 土井:高知県田野町で作られている天日塩です。日本は雨が多いから、自然の塩田がないんです。でも、塩二郎さんは、雨をしのげる温室ハウスの中で作業されています。夏場なら60〜70度にもなるところで、海水を手で混ぜて乾燥させて塩を作っていきます。ハウス内はものが腐らない。生のカニを入れて塩を作るとカニ風味の塩ができるんです。日本唯一の天日塩です。ものすごい手間と時間がかかっています。 F:直接、生産者に会いに行かれたのですか? 土井:はい。そういう人がいると聞いて、高知県まで一人で行きました。すぐに意気投合してそれからも2、3回伺っています。本当に修行僧みたいにずっと毎日海水をかき回してるんです。 F:天日塩ならではの特徴は? 土井:美味しさを言葉で説明するのは難しいけれど、全然違うものです。穏やかで、尖ってところがなくて、自然な美味しさだと思います。 F:大阪万博では、この塩を使った飲み物も作られたそうですね。 土井:そうなんです。坂茂さんの建築によるブルーオーシャンドームで、原研哉さんがコンセプトをプロデュースされていて、海洋プラスチック汚染への問題提起と“未来の海”がテーマでした。そこで私に「飲み物を作ってほしい」と依頼があったんです。 でも、スープや出汁ものを出すと、他にもあるし、比べることになる。おいしさを競うつもりはないんです。過剰な競争の結果が環境破壊を招いたわけですから、そこで競争を始めたら矛盾することになるでしょう。 そこで、“競争のない世界”を表現しようと思って、「熊野の山の湧き水」と「塩二郎さんの塩」、手作りで純粋なもの同士を合わせた 「海と山の超純水」 という飲み物を作ったんですね。塩0.2gに、熊野の湧き水の熱湯40ccを注ぐだけの、シンプルなものです。 ブルーオーシャンドームのコンセプトにぴったりで、とても評判が良かったようです。 F:普段はどう使われているんですか? 土井:ご飯にかけたり、卵に使ったり、そのまま塩を味わうときに使います。高価なもんですし、料理に使うのは勿体無いです。