桃色の軌跡   作:逆襲

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ゲヘナ編
太った訪問者?


ここはゲヘナ自治区の山奥。

真っ白な雪が木々も地面もすっぽり覆い隠し、異様なほどの寒気がひりつくように肌を刺していた。

吐いた息さえ白く溶けていくほどの静けさが、あたりを包んでいる。

 

「次はここ掘るよ! せーのっ!」

 

「うわぁぁぁぁ……冷たっ!」

 

今日も温泉開発部は元気に温泉を掘りまくっていた。

しかし、地面をいくら穿っても湧き出すのは冷水ばかり。

 

「部長、ここもダメだよ~!」

 

「むぅ……また冷たい源泉か……!」

 

今日だけで既に20回近い掘削をしているが、成果はゼロ。

部員たちの表情も、つららのようにしょんぼり垂れ下がっていた。

 

「よし……今度こそ当てるぞ! みんな構えろ!」

 

カスミが示した新しいポイントに、部員たちが向かおうとした――その瞬間。

 

ビリッ……!

 

空間が裂けるような、耳鳴りにも似た異音が響き渡る。

突如、空中に黒いひび割れのような裂け目が走った。

 

そして。

 

「うわああああああああああ!!」

 

ドォンッ!!

 

地面を叩きつける衝撃。

積もった雪が爆風のように舞い上がる。

 

「なんだなんだ!?」

 

視界を覆う白煙がゆっくりと晴れ――

 

そこには、大きな“何か”とハンマーが地面にズボッと突き刺さっていた。

 

 

 

その「何か」の方は雪に深く突き刺さったまま、足らしき部分だけをバタバタと動かしていた。

だが抜ける気配はなく、むしろじたばたするごとに雪にめり込んでいるように見える。

 

「おーい……誰かいないかぁ……! 助けてくれぇ……!なんだか……頭が、むちゃくちゃ熱いんだがぁ……!」

 

くぐもった声が雪の中から響く。

 

その “熱い” という単語に、カスミの表情がピクリと変わった。

 

「――みんな! アレを急いで引っ張り出せ!」

 

「え?」「だ、大丈夫なのかな?」「まぁ部長が言うなら……」「やるしかないか!」

 

部員たちは足っぽい部分へ一斉に飛びつき、声を合わせて思いきり引っ張り始める。

 

「いだだだだだ……!」

 

「あとちょっとの辛抱だ! 皆!もっと力込めて! 引け――っ!」

 

「おおぉーーーーーっ!!」

 

カスミの号令とともに引く力が一段と強まり、雪がバサッと舞い上がる――。

 

 

派手な音とともにそれは勢いよく抜け、部員たちは雪の上にひっくり返った。

それと同時に、地面の割れ目からドワッと熱い湯が噴き上がる。

さっきまでの冷たい水とは明らかに違い、もうもうと湯気を上げている。

 

「ハーーハッハッハ!やはり私の見立てに狂いは無かった!!」

 

「部長すごーい!」

 

「各員!久々の温泉開発だ!ここに温泉郷を作るぞ!」

 

「「「「「おおーーーー!!!」」」」

 

部員たちは待ってましたと言わんばかりに嬉々として木材や石材の準備に取り掛かる。

 

「さてと…キミ、怪我はないか――」

 

カスミが声をかけようとした瞬間、視界に飛び込んできたものを見て言葉が止まった。

 

「ふぅ……助かった。礼を言うぞ。」

 

青い肌、大きな目、丸っこい体。どう見ても人間ではない。

キヴォトスの人間は羽がついてたり角が生えてたりするが明らかにそのレベルではない。だが、普通に喋っている。

 

(な、なんだこいつ……? ペンギン?着ぐるみか?)

 

戸惑いつつも、カスミは律儀に名乗る。

 

「ゴホン……私は温泉開発部の部長、鬼怒川カスミだ。」

 

「おおっと、これは失礼。ワシはポップスターのプププランドの国王、デデデだ。」

 

(ポップスター?プププランド……? 聞いたこともない……星...というと宇宙から来たのか?空から落ちてきたのはそういう...)

 

「温泉開発部...といったか。名前の通りに温泉を作るのか?」

 

デデデは周りでせわしなく動く部員たちを見ながら聞いた。

 

「そうだとも。キヴォトス中に眠る温泉を掘り起こすのが我々の使命でね。」

 

「ほぉ〜。ワシも温泉は好きだぞ! こんな雪景色の中で入る露天風呂なんてさぞサイコーだろうな!」

 

「おお、キミ!話が分かるじゃあないか!!」

 

すぐに打ち解けた二人は、温泉談義で盛り上がる。

 

「我がプププランドにも温泉は沢山あってなぁ。特にキャンディ山の山頂にある温泉は最高だ。」

 

「山頂の温泉か……!趣があるな……。」

 

「それで温泉に入りながら食べる冷たいトマトがうまいのなんの...」

 

「ほほう、冷やしトマトか。試したことない組み合わせだな。」

 

「部下も温泉が好きでなぁ……。」

 

「部下?そういえばキミは先程国王と言っていたな。」

 

するとデデデ大王は思い出したように手を叩いた。

 

「おお、そうだった。すまんが――」

 

デデデが要件を喋りだした瞬間、その声をかき消すように鋭い一喝が周辺に響いた。

 

「おい!お前たち!そこから一歩も動くな!!」

 

温泉開発部の面々とデデデ大王が一斉に振り返る。

 

「なんだ?」

 

「おやおやバレてしまったか……」

 

雪を蹴散らしながら岩場の上に立っていたのは、銀髪の少女。冷たい空気以上に刺さる視線でこちらを睨み下ろしていた。




デデデ大王

プププランドの自称大王。星印のハンマーが自慢の武器だが、
カービィと同じように、すいこんだりはきだしたりもできる。
頭にかぶっている帽子のようなものは、実は冠。
デデデ山に城を持ち、手下たちと悪だくみをすることも。
プププランドを守ろうとしたり、
カービィの冒険をサポートしたりするなど、
こう見えてやさしい一面もある。
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