桃色の軌跡   作:逆襲

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あしたはあしたのかぜがふく

ゴリアテがアビドス中心街で暴れた翌日。

対策委員会のメンバーは、朝から復旧作業に追われていた。

 

道路には瓦礫が山のように積もり、砕け散ったガラスが陽の光を反射してキラキラと光っている。

折れた街灯、ひしゃげたガードレール、根本から折れた歩道橋の残骸――。

 

見る影もなく壊れ果てた中心街だったが、奇跡的に住民は全員無事だった。

それだけが、本当に救いだった。

 

〈おーい! そこの砂袋こっちに運んでくれー!〉

「はーい☆」

 

ノノミが軽々しくいくつもの砂袋を運ぶと、周りの作業員が目を丸くする。

 

〈嬢ちゃん、力持ちだなぁ! 助かるよ!〉

 

「ふふ、力仕事なら任せてください☆」

 

中心街の被害はひどいものの、破壊された範囲は歩道橋周辺だけで済んでいたため、復旧作業そのものは流れに乗り始めていた。

 

 

一方その頃カービィはというと――

 

道端に転がっていたフライパンを吸い込み、次の瞬間にはどこからともなく巨大な鍋を取り出していた。そして、大きな鍋で炊き出しを始めている。

 

その鍋からはなぜかオムライスやおにぎり、たこ焼きといったありとあらゆる食べものが沢山出てくる。対策委員会のメンバーは深く考えないことにした。

 

それを食べた周囲の住民は「おいしい!」と列をつくるほどの人気っぷり。材料はどこのものを使ったのだろう?

 

……ふと気づくと、山のように積んであった瓦礫が丸ごと消えていた。

誰かが片づけたのだろうか。

 

 

 

 

 

 

夕日が街を赤く染める頃、

カービィとシロコは、ベンチに並んで腰を下ろしていた。

 

「本当にありがとう。あなたがいてくれたおかげで……私たちの、いや、みんなのアビドスを守れた。」

 

「ぽよ?」

 

カービィは首をかしげる。

その無垢な反応に、シロコはふっと笑ったあと、ふと気づく。

 

 

……そういえば、自分はこの子のことをほとんど知らない。

 

「ねぇ。あなたは、どこから来たの?」

 

問いかけると、カービィは少し考えるように目を瞬かせてから、

たどたどしく口を開いた。

 

「ぽっぷ…すたあ……」

 

「ポップスター……」

 

あの黒い煙が言っていた星の名前と同じだ。

やっぱり宇宙から来たんだろうか。

 

「一人で来たの?」

 

カービィはすぐにぶんぶんと首を横に振る。

 

「ででで……めたないと……わどるでい……まほろあ……」

 

仲間の名前だろうか。

だけどどれもシロコには馴染みのない響きだった。

 

一人で砂漠に埋まっていたことを考えると……

きっと、ここに来る途中で離れ離れになってしまったんだろう。

 

ちらりと隣を見る。

カービィは、さっきとは違う、少し陰のある表情をしていた。

 

「……仲間に、会いたい?」

 

そっと尋ねると、カービィは小さく頷いた。

 

シロコはその頭をやわらかく撫で、静かに言う。

もう一人の私も思ったであろう。

 

一人ぼっちは、辛いから――。

 

「ん、わかった。あなたの仲間を探すの、手伝うよ。会えるまで……私がそばにいるから。」

 

その言葉を聞いた瞬間、カービィの表情がぱぁっと花みたいに明るくなった。

 

 

 

「ちょっとちょっと~、シロコちゃんだけ先に良いとこ持ってくのナシだよぉ~」

 

のんびりした声が聞こえてくる。振り向くとみんなが近づいてきていた。

 

「私達だってカービィさんの味方です!できることは何でもやります!」

 

「み、みんながやるなら...助けてやっても良いけど……」

 

「セリカちゃん、素直じゃないですねぇ~☆」

 

「う、うるさいってば!」

 

そんなやり取りを聞いて、カービィは嬉しそうにセリカに飛びつく。

 

「だから急に来るなってばー!!」

 

夕暮れの色に染まる街を、笑い声がふわっと包み込む。

ほんの少し前まで傷だらけだったはずなのに、今はどこか柔らかくて、温かい空気が流れていた。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

薄暗い部屋。冷えた空気の中で、黒服の男がモニターの電源を落とした。

 

「……まさか、本当に撃破されるとは。これは……想定以上ですねぇ。」

 

背後に揺らめく黒い靄が、嘲るように震える。

 

≪フン。あれしき、我が力をほんの少しだけ宿した器の一つにすぎん。だが奴が本気を出せば、あの器程度の強さでは足止めにすらならん。≫

 

男は肩をすくめ、小さく笑う。

 

「こちらとしては、それだけでも十分な“実験結果”が得られたのですが。クックック……」

 

男は不気味な笑いを浮かべる。

 

≪契約に従い、力は示した。次は貴様らの番だ……我らに協力してもらうぞ≫

 

「ええ、もちろん。あなたたちにも目的がありますからね。」

 

男は立ち上がり、別のモニターに手を伸ばす。

 

「ですが――先に次の対象を確認しましょう。あの方と一緒に来た“他の方々”も、確認しておかなければ。」

 

≪フン...さっさと済ませるんだな≫

 

 

不機嫌そうな声が、部屋の空気をさらに重く沈ませた。

 

そして、ゆっくりと画面が切り替わる。

新たな影が、そこに映し出される。

 

 

 

――アビドス編 完




コピー能力:コック
コピー元:その辺に落ちてたフライパン

おりょうりのじかんが やってまいりました!
きょうは、そこらへんにおちている
てきたちを、しょくざいにしようとおもいます。
1回ぽっきりの このチャンス、
ぞんぶんに おたのしみください!!


短いですがアビドス編はこれで終了です。
次はあの大王様が出ます。
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