静寂のひずみ
ここはあきれかえるほど平和な国、プププランド。
花々は咲き誇り、木々は緑を身に着け、心地よい風が吹き抜ける。
だが最近のプププランドには、どこか不気味なざわめきが漂っていた。
プププランドのいたるところに、突然ぽっかりと開いた黒い裂け目。
森の奥では、誰のものでもない風の声がひそやかに木々を揺らす。
その異変に近づいた者は皆、“冷たい何か”が肌を撫でていく感覚を口にした。
ある晩、マホロアはローア内で、計測器を操作し裂け目について調査をしていた。
画面に映る裂け目からは、青白い光が脈のように伸び縮みし、狭間のそばにあった小石がふわっと浮かび、煙のように溶けて消えた。
「……やっぱりおかしいネェ……
このエネルギー、間違いなくこの世界のものじゃないヨ。」
眉を寄せたまま画面を覗き込む。
そこに表示される数値は、どれも常識を逸脱していた。
裂け目の縁から溢れ出す不可解なエネルギーは、触れるだけで空気の密度が変わるほどだ。
「なんだろウ……この光ハ……柔らかいのに底が見えない……なんとも不気味な光だヨ……」
光はゆらゆらと揺れ、まるで奥から誰かが覗いているかのようだった。
(放っとくと危ないかもネェ……。使いようによっては面白いことができそうだケド。)
マホロアは少し考えを巡らせた。そして、
「マァ……ミンナを呼んで相談した方が良いカナ。」
マホロアは計測器を止め、最後にもう一度だけ光の裂け目を見つめた。
その奥で“何か”が動いたように見えたのは、気のせいだったのだろうか。
翌日。
マホロアに呼ばれ狭間の前に集まったカービィ達。
カービィとバンダナワドルディは不思議そうな目で狭間を見ている。
マホロアは昨日の調査で調べたことをみんなに伝えていた。
「……ってカンジなんダ。結局このセカイとは違うエネルギーが出てる...ってことしかわからなかったケド……」
「……最初はお前に呼ばれて半信半疑だったんだがまぁ近くに来たら嫌でもわかるな...なんとなくだがこの一帯の空気が違うぞ……」
過去に何度も敵の襲撃を受けているプププランド。幾度となくカービィ達はその危機を救ってきたが次いつ襲撃されるのかはわからなかった。
「……敵が関与している可能性は?」
「ソレも不明だヨ。タダ、その可能性もあるかもしれナイ。だからこそ、先に確かめたいんダ。敵じゃなかったとしても、友好的な関係を築けレバ良いしネ。」
「…………」
メタナイトは注意深く狭間を見ていた。
そのとき——
地面が低く震え、空気が急激に冷え込んだ。
「全員、下がれ!!」
メタナイトが叫んだ瞬間にはもう遅かった。
裂け目が突然ノイズを撒き散らし、次の瞬間――
その周辺一帯そのものが“きしんだ”。
黒い裂け目が、まるで生き物のように膨れ上がり、青白い風が逆流する。
抗う暇もなく、仲間たちの身体が引き寄せられていく。
「うわっ!?」「なんじゃあ!?」「くっ……踏ん張れない!」
「マズい!吸い込まれるヨォ!!」
四方に散る光が視界を白く染める。
伸ばした手は空を掴むだけで、声すら風にちぎれていく。
「うわぁぁ!」
最後にカービィが見たのは、
裂け目の奥へ吸い込まれていく仲間たちが、別々の方向へ飛ばされる光の軌道だった。
耳をつんざく破裂音。
裂け目は弾けるように閉じ、あたりにはただ、冷たい風の音だけが残った。
廃墟の中にそびえるビルの一室に佇む黒いスーツの男。
「……!クックック……また「外の世界」から新たなお客様方がいらっしゃいましたね……この方々はどんなものを見せてくれるのでしょうか……」
その男の額からは不気味な光が漏れていた……