一般常識人に新エリー都は生きづらい   作:こなひー

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 すごくお久しぶりになってしまいました。

 AIお題100をやったらいい感じに創作意欲が戻ってきたので、一本書けました。ゼンゼロのプレイは続いていますが、今のストーリーは音声が無いのでかなり飛ばしてやっちゃってます。後で見返すから許して……。


39.サクのVR訓練 その5『スターズ・オブ・リラ』

 ホラーから脱出した先は、ライブ会場だった。流行に疎い俺でも、これがかの有名な歌姫のライブだという事はすぐにわかった。

 

 

 

「みんなー、ちゃんとついてこられているかしらー? ふふっ、それじゃあ次の曲、行くわよー!」

「おぉーっ……」

 

 次のステージに着くや否や、特等席でのアストラ・ヤオのライブへと招待された。流石VR空間、アストラさんが実際にいるわけじゃないけれど、臨場感は本物に近い。

 

『サク様、恥ずかしがっていてはこの場に置いていかれてしまいますよ』

「いやあの、こういうの初めてだから許して……」

 

 俺はこういうライブとか参加したことが無かった。なのでFairyに応援の手ほどきをされながらの参戦である。……予想はしてたけど、思い切り応援するのは、結構はずいね。

 

『いやー、他のお客さんを気にせず特等席で見られちゃうなんて最高だね!』

『ああ、これもVRのいいところだと言えるだろうね』

『なーに冷静ぶってんのお兄ちゃん、ペンライトブンブン振り回して、誤ってログアウトしかけたくせにー』

『そういうリンこそ、客席から何度も飛び出して、見えない壁に激突していたじゃないか』

 

 アキラとリンは終始テンション上がりまくりだった。ファンと言うほどの熱量がない俺でも、歌姫のライブはすごく興奮した。ああいうのに参加したのは初めてだったから、とてもいい時間だった。

 

 

 

 

 

 まあ、まさかの全曲口パクという離れ技には驚いたけどね。

 

 

 

 

 

 口の動きと歌声が全く合ってなかったアストラさんという、絶妙にシュールな光景だった。イヴリンさんなんでこれでGOサイン出しちゃったんですか。ライブ自体は楽しかったし、そもそも無料で観られちゃってるんだから全く文句はないんだけど。

 

『ところでお兄ちゃん、異変とか特に無かったよね?』

『ああ、今が訓練中だったことをすっかり忘れるくらい、ライブに熱中してしまっていたよ』

「えぇ……」

 

 何でもいいんか君ら。そんなんじゃ某格付けチェックで真っ先に画面から消されちゃうよ。俺も高級品とか興味ないから向いてないけどね。

 

 

「これでライブは終了だ、この後は控室に行って、お嬢様と会ってもらうぞ」

「あ、イヴリンさん」

 

 いつの間にか近くに来ていたイヴリンさん、時々気配を感じないんだよね。もしかしてスパイの経験とかあったり……無いか。アストラさんを裏切るようなこと、しなさそうだもんね。

 

『凄いな、ライブ直後のアストラさんにまで会えるだなんて……』

『お兄ちゃ~ん? 何か変なこと考えてない? うへへ……』

『リンだって人の事言えないだろう……?』

 

 ダメだ、パエトーンが完全にオタクモードになっている。トワとレムの体じゃなかったら、よだれとか垂らしてそう。

 

 

 イヴリンさんに控室へと案内してもらった直後、アストラさんがライブ衣装のまま控室に入ってきた。

 

「あら、アキラ君とリンちゃん、サク君も来ていたのね」

「……あれ?」

 

 アストラさんの開口一番に、ちょっと違和感を感じた。俺はともかく、パエトーン二人が客席に来ていたら必ず気づいているのに、今初めて知ったというリアクションだ。

 

『……うん?』

『……あれ?』

 

 リンとアキラも、ちょっと不思議に思ったようだ。いつものアストラさんなら、ダッシュ攻撃かってくらいの勢いでリンへハグをしにいっているはず。なんかこう、歌姫とファンの適切な距離感って感じ。……それが普通なのでは?

 

 

 違和感を感じつつも、ライブ後に会えるという特別なファンサに、2人は一応喜んでいる。俺も少なからず心は踊っている。さすが世界の歌姫、やっぱりオーラが違うな。

 

「お嬢様、この後のドラマ撮影に向けて、手すきのタイミングで台本をもう一度見直しておけ」

 

 そして本人が最高の相棒だと認めるイヴリンさん、スケジュール管理はいつも通り完璧で――。

 

 

 

「えー、もうめんどくさいわー。今日はもう頑張れない!」

「えっ」

『えっ』

『えっ』

 

 今、アストラさんめんどくさいって言いました?

 

 

 

 あんまり会った回数は多くないけど、俺の中では、そういう言葉とは無縁の人だというイメージがあった。何事にも興味深々というか、とにかく手を抜かず楽しんでるって感じ。

 

 アストラさんのわがままに対して、イヴリンさんはというと……。

 

 

 

「……まあいい。別にここで読まずとも、結果さえ出してくれれば私は問題ない。過程や方法など、どうでも良いからな」

 

 うわぁ、イヴリンさんが嫌な大人みたいなこと言ってる。アストラさんのメンタルケアとかも積極的にやっているはずなのに、ここだと全然やる気がない。

 

「ふぅ……」

「……」

 

 あとなんか空気が冷たい。お2人さん、いつものイチャイチャはどうしたんだ。

 

『ワ、ワタンナ……?』

『ンーナワタ……?』

「えっ、なんか2人がショートしかけてない!?」

 

 仲良しオーラが欠片もない2人の様子に、オタクは混乱している! バイトを経てイアス達と仲良くなったけど、ボンプ語はまだわかんないや。なんて考えていたら、横からFairyが、俺の袖をちょいと引っ張ってきた。

 

『警告。これ以上異変を放置した場合、マスターの精神が崩壊してしまう恐れがあります』

「そんなにショックなの!?」

『解釈違いには致死量がある、との情報があります』

「どこの情報だよそれ……」

 

 本人たちの関係よりも、先にパエトーンのほうが危険になってしまうとは予想外だった。俺の訓練なのになんでサポート役のほうが苦戦してるんだよ。

 

「まあ、いいか。もう異変は何かわかってるし」

 

 これ以上長引くとマズイらしいから、早くツッコんでおこう。もうすっかり手に馴染んだハリセンを構える。

 

 

 

 

「2人とも、もっと仕事楽しんでましたよね!?」

 

 スパァーンッ!

 スパァーンッ!

 

 ボンッ。

 

 

 

 やっぱり、俺の違和感は正しかったらしい。アストラさんとイヴリンさんは、今の仕事を本当に楽しそうにこなす人だ。そういう所は素直に尊敬している。あとイヴリンさんは常識人だからね、これ重要。

 

 心から楽しんでいる人と、雰囲気を壊さないよう楽しく振舞う人では、うまく言い表せないけど何かが違うのだ。

 

 ボンプ姿になった2人はすぐに目を覚ました。アストラさんは新鮮な光景に目を輝かせて、イヴリンさんは少々動きづらいことに不満を感じている。

 

「ふむ、流石にこの身体では、お嬢様の護衛にあたるのは難しそうだな……」

「えー? けど、今のイヴとってもキュートよ! えいっ!」

「こ、こら。あまり引っ付くな!」

 

 見た目はボンプだけど、いつもの調子に戻ってくれた。ボンプ2匹がころころもちゃもちゃしている様子は、見ていてなんだか癒される。

 

『はぁー……、やっぱり2人は百合百合してないとね』

『リン、どこでそんな言葉を覚えたんだい……?』

 

 そんでいつの間に正気に戻ってんだこのオタクたち。オタク度で言ったら、ビビアンの事あまり言えないんじゃないかなーって思った。

 

 

『サク様、ステージ5クリアおめでとうございます。数秒後、次のステージへ移行します』

「……なんか、普通に移動するの久しぶりじゃないか?」

 

 前回までスリル満点だったから、逆にちょっと物足りなく感じてしまった。いかん、毒されてる。




 この2人は新エリー都での日々を一番楽しく過ごしているのではないか、と勝手に思ってます。
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