桃色に塗りつぶされたキャンバスで。   作:烈風一一

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物語は動き出したから、僕もそろそろ身の振り方を考えないと

「...おはよう」

無機質なアラームに急かされ僕は目を覚ます。朝の四時、いい時間だ。

「乾いたかな、っと...」

絵は予想通り乾いてくれてたようだ。よかったよかった。

「...にしても、ここ。意外と人の形跡があるんだよねー。」

寝袋を片付けてイーゼルとキャンバスをリュックにしまう。

「ちょっとだけ時間があるし、見て回ろうかな」

マダムが言うには、ここをゲヘナ侵攻の拠点にするらしい

誰かの小さい声が聞こえる。迂闊だった。トリニティ生だったら本当にまずい。

「だが、同時にゲヘナも潰さねばならない。風紀委員は2個師団いるからまずそこを切り崩す

待て、今なんと言った?

ゲヘナを、潰す?

マダムのご命令だからな。必ず成功させるぞ

声が遠ざかっていく。

思ったよりまずいかもしれないね、これは。トリニティの一派にゲヘナを潰そうとする動きがあったのは知っている。パテル分派とか言う野蛮な派閥だと聞いている。

だが、公然と話すほどのものだったのか?また、同時にとは?

それに、トリニティはここまでゲヘナの情報を正確に知っているものなのか?

ともかく、今は少し息を潜めないといけないだろうね。戻ってこない保証なんてない。

 

そうして時間が2時間ほど経った。いいタイミングだし出よう。

トリニティにあんな勢力がいるとは本当に思いもよらなかった。

どうやら、少しずつ物語が動き出しているようだね。

そんなことを考えながら森を出て、バイクのエンジンをかける。

「さて、頼むよ...もう登校時間には間に合わないだろうからね」

そうなのだ。謎のトリニティ生から隠れている間に登校に間に合う時間はとっくに過ぎてしまった。おまけに自由気ままにここに辿り着いたせいで帰り道がわからない。

「...ま、なんとかなるでしょ」

バイクをふかしてゲヘナ方面へ駆ける。

今日もまた、いつもと同じ一日を過ごせますように、と言いたいけど。

そろそろ僕もトリニティごとあいつを潰す準備をしないと。

 

あれから数日経った。兄さんの痕跡は全く見つからなくなった。

どうやら昔はブラックマーケットで絵を売り捌いていたらしい、と言うことはわかったけれど。

「...で、私を頼りにきたと言うことかい?」

と言うことで、私はセイアさんを頼ることにした。

「ええ、セイアさん。なんとか探していただけないでしょうか...?」

「残念だが、ティーパーティーの力は今エデン条約の方に割かれていてね...私の方も助力できる状況じゃない。」

やはりそうでしょうね...トリニティは今エデン条約で持ちきりですから。

「それに、君の方も...かなり立場が危ういだろう?」

「あら、なんのことでしょうか?」

「とぼけるのはやめたまえ...昨年からの君の奇行は知っている。と言うか、知らないほうがおかしいだろう。」

「勘違いしないで欲しいのですが、これには複雑な事情が-」

そうなんです。私は去年の終わり頃からやや...いえ、かなりの奇行に走っています。

水着を着て徘徊したり、聖堂に水着を着て乗り込んだり...

でも、それにはちゃんとした理由があるのです。

「政治に巻き込まれたくないから、だろう?もっとも、こんなところで私と話しているのを誰かに知られたら避けられないが」

「その通りです...もっと言えば、兄さんを見つけた後は退学しようと思っています。」

「...そうかい。退学した後はどうするんだい?」

退学した後は...兄さんのために動かないと。

「...兄によります。ですが、私は兄のしたいようにさせてあげたいなと考えています」

「そうじゃないんだ。君は何をしたいんだい?」

「私、は...」

私が何をしたいか?

そんなの要りません。

私は兄さんの居場所を奪ってしまったんですから、兄さんに居場所を提供するんです。

私の全てを捧げてもいいです。そうしないと私が奪ったものには釣り合いませんから。

私は兄さんの全てを奪ったんですから。

「君がしたいことを見つけてからでも決して遅くない、覚えておきたまえ。それと、だが。君の兄の件も一応尋ねておいてもらうよ。張り紙も出させておく。」

「ありがとうございます...!」

ああ、この人が友人でよかった。

 

「それでは、失礼しますね。今日はありがとうございました」

「ああ、気をつけて帰りたまえ。それと、だが...」

「どうされました?」

「今度ゲヘナからエデン条約絡みで風紀委員が来るらしい。君は確か苦手だったと思うが...一応その日は徘徊はやめておいてくれよ?」

私をなんだと思っているのでしょうか、セイアさんは。流石に私でもそんなことはしません。

「安心してください、徘徊"は"しませんから♡」

「はってなんだはって。まあいい、気をつけて帰ってくれよ。」

そうして私は部屋を出た。

疑われないように水着に着替えたのは言うまでもないだろう。

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