桃色に塗りつぶされたキャンバスで。   作:烈風一一

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人尋ねは人伝に

見つけた。便利屋68、焚き火に当たって暖をとっているらしい。

申し訳ないが、少し邪魔させてもらいましょう。

「やあ、こんばんは、便利屋の皆さん。いい夜ですね?」

バイクを近くに止め、わざわざ見えるように僕の銃「レイヴン」のレバーを引く。

「な、あなた...誰?」

「...なんで来たのさ。」

「くふふっ♪アルちゃん気づかないんだ♪」

「ど、どちら様です...?」

この中で僕のこの姿を見たことがあるのはカヨコさんだけですから、そりゃ気づかないでしょうね...って言いたいところなんですけど、なんでムツキさん気づいてるんです?

「カヨコさん、僕を呼んだのはあなたでしょう?便利屋の皆さんにお話ししたいことがあります」

「気をつけて、社長。こいつ風紀委員だよ。それもかなり碌でもない方のね。」

あらあら、碌でもない方だなんて。まあ事実なんですけどね。触法行為だってしてるわけですし。

「碌でもないことをされてるのは貴女達も同じでは?まあ、今はそれはいいです。あなた方が校境で何をしようとしているのかが知りたいんです。お答えいただけますか?」

「...答えると思う?」

まずいな、カヨコさんにここまで警戒されてるとは思わなかった。

「ええ、あなた方のことはよく知っていますので」

「...場所を変えようか」

「え、ちょっと、カヨコ課長?」

「心配しないで、社長。すぐ戻るから」

ま、アルさんには聞かれない方がいいですものね。合理的です。

 

少し離れたところ。カヨコさんも銃のセーフティを解除したようです。そんなに警戒されるとちょっと悲しいですね。

「何の用なの、本当に。わざわざ警告したよね、来るなって」

「あれは来いと言っているようなものでは?諜報部の鬼方カヨコ元部長」

彼女は鬼方カヨコさん。風紀委員と万魔殿の一部メンバー以外で僕の過去を知ってる稀有な人です。

「はあ、その呼び方はもう辞めてって言ったよね...あなたと同じように過去は消したい派の人間だからさ」

「それはそれは、失礼しました。んで、僕がここに来た理由ですが...本当に何をしようとしているか知りたいだけですよ。貴女方は基本的にブラックマーケットかゲヘナ自治区を拠点にしており、今までアビドス側に来たことはほぼない。ルート的にアビドス自治区へ向かおうとしていることはほぼ明白です」

「...嫌な詰め方だね。誰が教えたんだか」

「貴女でしょうに。というわけで、何するか吐いてもらいますよ」

カヨコさんは少し悩んだ後、心を決めたようだ。

「...アビドスの方で仕事。これ以上は言えない」

「そうですか...それはいけませんね。傭兵でしょう?どうせ」

正直に話したからって許されるわけじゃない。この人たちの仕事は大体の場合軍事行動が多いんです。そして、アビドスに傭兵を雇うような余裕がある企業は1つしかいません。

カイザーグループです。

あそこは何件か違法行為が確認されてますし、アビドス高校に対する不正な圧力も確認されてます。

申し訳ないけど、この人たちをそんなことに巻き込ませたくはないですし、ゲヘナとアビドスの政治的対立ができてもいけません。

あそこには最重要警戒対象がいますから。

でも、貴女たちは考えを変えることはないんでしょう?

だから、僕は自分の心を鉄に変えます。

「...煙草、まだ吸ってるんだね。」

「やめてませんよ、煙草は。やめられません」

「...貴方を警戒する理由の一番目にそれが来るの、知ってるでしょ。触法行為をしてる人間と関わりたくはないからね。で、それ吸ったってことは交渉は決裂ってことでいいのかな?」

「ええ。答えは決まりました。」

「そっか、じゃあ戻ろうか。」

 

「おかえり、カヨコ課長。それで、なんの話だったの?」

「社長、みんな、戦闘準備して。どうやらこの戦闘狂は私たちを倒さないと気が済まないんだって」

全く、そんなに嫌われることしましたっけ。ああ、さっきカヨコさんがおっしゃってましたね。タバコ吸うなって。

「風紀委員の名に於いて。」

セーフティを解除する。もう優しさは要らない。

「貴女達を排除します。」

「な、な、なな...」

はあ、まあそうなるよな。ちょっと笑っちゃいそうになるからやめて欲しいんだけどな。

「なんですってー!?」

「...ふふっ」

あ、やばいです。笑っちゃいました。

「...ま、気持ちはわかるけど。」

見られました。ちょっと恥ずかしいですね。

「...さて、気を取り直して。」

サイトを覗く。十分やれる距離。

さあ、戦闘開始です。

「ゲヘナの隼の異名、その所以を知る覚悟は?」

ハルカさんを先頭にムツキさんとカヨコさんが中堅、アルさんが後方からの狙撃を担当。実に合理的で素晴らしいチームですね。

「でも、こっちも負けるわけにはいきません。風紀委員を背負っていますからね」

単発でできるだけ頭を狙って射撃していく。イオリさんみたいな切り込み役の人がいると助かるんですが、あいにく今は一人なので耐えるしかありません。

「だから、速攻で終わらせてもらいますよ!」

ガンガン、ガン!

狙撃銃用の弾薬三発がハルカさんの頭を捉える。

「う、うわあっ!?」

それでもハルカさんは止まらない。怖いですよね、全く。

「死んでください、死んでください、死んでください...!」

「やだね。死んでたまるか、まだ目的も果たしてないんだ」

小声だったがうっかり素が出てしまった、よくないな。

「何をアビドスでするんですか!何のために!」

「生きるためよ!それと私たちの意志を貫く!」

「アビドスを襲撃することが貴女達の意志を貫くことですか!?」

「全ては仕事よ...!仕事を通じて私たちは自分たちの意思を貫く!」

意志は硬いようだ。

「便利屋68、ここまでとは思いませんでした。」

一旦後退して距離を取る、でしょう。普通なら。

「だからこそ、貴女達は危険だ...!」

距離を詰め、銃剣を装着。まずは社長のアルさんから。

「これで、とどめ...!」

なーんて、ね。

「っ...!」

アルさんが目を瞑る。でも、僕は何もしない。

勝つ気なんて元からない。

その間にムツキさんやカヨコさんが撃ってくれましたから、よかった。

「...強いですね、やっぱり。これは勝てないですよ、退却します」

そういうと、僕は銃のセーフティをかけ直す。

「...何のつもりかしら?」

「いえ、ただ。行動できなかっただけです。最近肩こりがひどくて...さて。確認ですが、アビドス自治区で戦闘行動をされる予定なのは合ってますよね?もっと言えば、アビドス高校の襲撃任務をしようとしていますね?契約相手はカイザーPMC。」

「...なんでわかったんですか?」

「観察、ですよ。それと情報。情報は全てに勝る力になるんです。」

カヨコさんが苦い顔をする。貴女の言葉、お借りしましたよ。

「これは学園間の問題となるかも知れず、あなた方も触れたら二度と戻れないかも知れません。いいんですか?」

「ええ、戻れないなら戻れないなりに行動するまでよ」

これは、なかなか意思が硬いようだ。

「...わかりました、ただ責任は取りませんよ。ご自由に、行ってらっしゃい」

「...何の真似なのー?後ろから刺してきたりしない?」

「僕の目的は最初から一貫してあなた方が何をするか知ることです。戦闘して鎌をかければ教えてくれると思いまして。」

そう、元々排除が目的じゃない。だから本気を出す必要はなかった。本気を出せばハルカさんの頭にワンマガジン20発をそのままぶちこめましたし。

「...全く、貴方と戦うと嫌になるね。二度と会わないことを願ってるよ」

「ええ、全くです。会わねばならないようなことが起きないよう祈っておきますよ」

そうして、便利屋68の面々は去っていった。

 

セイアさんから絵画展の情報をもらった後、私はインターネットでひたすら兄の絵を探した。実際、兄はまだ絵を辞めておらず、幾つか賞をとって賞金を荒稼ぎし、その絵を二束三文で打っていたようだ。

今私はあるアトリエに来ている。兄の絵が飾られているからだ。

「...間違いない、兄さんの絵柄です。左下に名前を書く癖があるのも同じ、サインはM.Urawa。これは結構前のですかね...」

家を出る前に描いたものだと思う。多分家を出た後の兄さんは浦和の名前を使うことを好まない。ならこの表記は使わないはずだ。

「...まだまだ探そう」

別のアトリエ。ここにも同じような兄さんの絵があった。海からの日没を描いた幻想的な絵。

「...これも比較的古いものみたいですね。兄さんの字がまだ上手じゃない」

兄さんはあまり字が上手くない。努力で家を出る前はそれなりに描けていたと思う。

「まだまだ...」

そうして、私は一日で14軒のアトリエを回った。

「...ない、ですね。家を出て少し経った後の絵は。兄さん、私はいつあなたに追いつけるんですか?」

全部兄さんが家を出る前に完成させたと思われる絵だった。今日は手がかりなしだろうか。

気づけばブラックマーケットの近くに来ていた。こんなところ、本当は良くないんだけど。古美術品など価値のあるものもまた数多く流通していると聞く。

「...行ってみますか。」

そうして、私はブラックマーケットに足を踏み入れた。

 

「...目立たないように行動しないと。」

できるだけ普通のように振る舞いながら美術館系のような店を探す。すると、いかにもといった感じの店があった。

「...行ってみますか。」

入ってみると、兄さんの絵があった。間違いない、この画風は兄さんだ。

「こんなところで売ってるなんて、でも重要な手掛かりかも。」

問題はいつ描かれたか、だけど。

「サインが変わってる...?」

そう、サインがM.Urawaではなく、M.K.Ⅱとなっていた。でも確実に兄さんの絵だ。今までにはみられなかった特徴だし、浦和の表記がないから完全に家を出た後だろう。

「やっぱり絵、続けてたんですね。兄さん...」

写真をこっそりとって店を出る。

私は決意した。

「兄さん、私は絶対に貴方を見つけて、そして。貴方ともう一度兄妹になって見せます」




今まで毎日投稿をしてみましたが、体調を崩したので不定期更新になります。ごめんなさい。
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