ノールックで38万円
父はマンションに住んでいる。
そのマンションを父がいつ買ったのかは思い出せない。私はもう一人暮らしをしていて、母は亡くなっていて、弟も家を出て随分な時間が経った頃のはずだ。地主家は転勤族だったので、家を持っていなかった。父もいい歳なので、賃貸は借りることが難しくなったので買ったそうだ。私は十回くらいその家に言ったことがある。実家ということになるが、実家感はない。
別にマンションを買うのはいいのだけれど、父はノールックで買ったらしい。もちろん間取りや値段はネットで見ているのだけれど、現地に行くことはなく、内見することもなく、買ったと聞いた。引き渡しの日に初めて部屋を見たと言っていた。
カッコいいなと思う反面、お前マジか! とも思う。もうちょっと入念に調べてから買えばいいのにと思ってしまう。実際はなかなかいいマンションだったので、結果としては問題ないのだけれど、ノールックは思い切ったなと感心する。
その血は受け継がれていた。
私もノールックでカメラを買った。そのカメラの予約開始が10時からで、その日は9時50分からパソコンの前にスタンバイして、10時になるとF5を連打して、予約ボタンが出てくるともちろんクリックして、購入画面に進み、支払いを済ませて購入に至った。
値段は38万円弱。
高い。震えるほど高い。ポイントはノールックなことだ。このカメラのスペックは今年の春から様々な噂があった。こんな性能がある、いやない。こんな性能はない、いやある。そんな噂をたくさん見かけた。結局は公式の発表までスペックはわからなかった。私は噂だけを追っていた。
公式のスペックは見なかった。
自分でも驚くのだけれど、そのカメラの発表日から一切情報を見なくなった。公式サイトを見れば確定した詳しいスペックがあるのに、一切見ていない。一度も見ていない。最終的なスペックはカメラが届くまでわからない。噂の状態でしか、そのカメラのスペックを知らないのだ。発表から予約開始までには展示もあったそうだけれど、もちろん見にはいかなかった。
つまりノールックでカメラを買ったのだ。結果として、父の気持ちを理解できた。高い買い物ほど慎重になるのだけれど、慎重になればなるほど買わなくてもいい気がしてくる。というか、買わないのだ。理由は高いから。値段に慎重になってしまう。
ただ父は家が必要だったし、私もカメラが必要だった。どうしたって必要なのだ。買わない選択肢はないのだ。そうなるともはやいろいろ関係ないのだ。買えばいいのだ。カメラに限れば、新型は発売日に買えば、次の型が出るまで一番長く新型を使えることになる。私の仕事において、カメラがないことは考えられないので、先にも書いたように買う以外の選択肢はなく、もはや値段もスペックも関係ないのだ。
必要なのは勢い。
買うんだという勢いだけが必要で、その勢いはノールックで生まれる。石橋を叩いて渡らないのだ。後は野となれ山となれなのだ。
ちなみに今が後は野となれ山となれな状態だ。38万円か、、、と冬の空を光のない目で見ている。ノールックの代償は後で来る。現物より先に来る。38万円は痛い。年越せるかな、と思っている。あと買ったカメラ、入荷次第発送ってなっているけど、いつ届くのだろう。



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