紹介:広山詞葉 聞き手:宮原奨伍
宮原奨伍(以下、宮原):「つかこうへいを読む旅」、今日は第4回目です。よろしくお願いします。
広山詞葉(以下、広山):よろしくお願いします。
宮原:今回、詞葉さんが紹介してくださいます。今回紹介してくださるのは?
広山:はい。今月は『シナリオ 青春 かけおち篇』です。
宮原:これは映画化もされていますよね?
広山:そうなんです!主演は大竹しのぶさんと風間杜夫さん。お二人ともかなり若い頃で、めちゃくちゃかっこいいです。定価が300円という時代感もたまりません。昭和61年発行です。
宮原:1986年ですね。
広山:私はまだ1歳ですね。でも、そんな時代の作品でも、読んで「面白い」と思えるんですよ。
宮原:どんな話なんですか?
広山:誰にも求められてないのに駆け落ちするっていう、青春物語なんです。で、宿に泊まって「誰か迎えに来てくれないかな〜」って待ってるんだけど、誰も来ないんですね。
宮原:自分たちを探す人たちがいると。
広山:そう。探してもらうために私たちは駆け落ちするんだ、と。自分から電話したりして(笑)。
宮原:駆け落ちの意味とは…(笑)。
広山:別にそんなに反対されてないんですよ。「この二人が一緒になっても、まあいいんじゃない?」みたいな感じで。でも本人たちは「青春だ!駆け落ちだ!」って盛り上がってる。その温度差がまた面白いんですよ。私は映画でこの作品を知って、演出もすごく印象的だったので、「台本ではどう書かれてるんだろう」と思って買いました。
宮原:この本はシナリオなんですか?
広山:そうなんです。映画のシナリオがそのまま載っていて、キャスト・スタッフ表や劇中の写真もある。映画好きとしてはたまらない内容です。
宮原:実際に現場で使われていた、大竹しのぶさんや風間杜夫さんが持っていた台本の、ただ小さい版ってことですね。
広山:そうなんです。読んでいると、シーンを思い浮かべながら楽しめる構成になっていて、すごくワクワクします。
宮原:普段から戯曲や脚本を読むことが多いんですか?
広山:小説よりも戯曲や脚本を読むことが多いですね。本棚はほぼ戯曲と脚本です。
宮原:「青春かけおち篇」は、つかこうへい作品としては、どんな魅力を感じたんですか?
広山:圧倒的に“テンポ”ですね。読んでいて、声に出さなくてもリズムがある。会話のスピード感、テンポの心地よさは、まさにつかさんならでは。シナリオの段階からそれが感じられるのがすごいです。
宮原:声に出さずともテンポが伝わる脚本って、すごいですね。
広山:この本が面白いのは、脚本なので当然セリフが書かれているんですけど、それだけじゃなくて、例えば「ここでタイトルが入る」とか「ここでクレジットが始まって、どこで終わる」とか、演出に関する指示がすごく細かく書かれてるんですよ。
宮原:そこまで?
広山:はい。そういう部分って、私の認識では映像だと監督が決めるものだと思っていたんです。でも、つかさんのこのシナリオでは、そういった演出面までしっかり指示がある。
宮原:そうですよね
広山:以前、倉本聰さんのドラマに出演させていただいたときも、台本がすごく細かくて。音楽がどこで入って、どこで止まるかまで書いてありました。だから、つかさんのこのシナリオを読んで「なるほど、やっぱり演出家なんだな」って思いました。
宮原:ああ、それは確かに。つかさん自身が演出家でもあるから、映像化されるときにも「ここはこうしてほしい」っていうのが明確にあったのかもしれませんね。
広山:もしかしたら、映画も自分で監督したかったんじゃないかなって想像しちゃいました。
宮原:そうですね。『蒲田行進曲』も映画版の監督は深作欣二さんですし、他の映画もつかさんご自身が監督したものはないですよね。
広山:つかさんの中では、自分の作品の“画”も見えてたのかもしれません。だからこそ、シナリオの中に細かく書いているのかも。
宮原:この作品、登場人物も多いんですか?
広山:多いですね。ざっと見ただけでも20人以上はいます。
宮原:それって、読み合わせとかしたら面白そうですね。
広山:絶対面白いと思います! 実は私、不定期で戯曲を読む会をやってるんです。シナリオを声に出して読むと、ただ読むだけでは分からなかったニュアンスや違う印象を受けたりしますよね。
宮原:そういう会があるんですか?
広山:はい。以前にそこで、難解な岩松了さんの作品を呼んでみて、声に出してみると圧倒的な言葉の美しさがより伝わってきたりして、発見があるんです。
宮原:つか作品でやったら楽しそうですね。
広山:やってみたいんです。たとえば、今回の企画のイベントの中で『熱海殺人事件』など、つか作品のファンの方々と一緒に戯曲を読む会を開くとか。輪になって、一人ひと言ずつセリフを読んでいくだけでも、十分に面白いと思うんですよ。
宮原:参加のハードルも下がるし、掛け合いの面白さが体験できそうですね。
広山:はい。読むだけで、つかさんの言葉の力に触れられますし。
宮原:やりたいですね。
広山:ほんとにそう思います。
宮原:ありがとうございます。
広山:この『青春おけおち篇』は私は映画を先に観てから脚本を読んだんですけど、脚本を読んでから映画を観るのもいいかもしれません。
宮原:戯曲や小説とも違う、シナリオならではの魅力をすごく感じました。
広山:はい。今月のわたしのおすすめ本は『シナリオ 青春 かけおち篇』でした。
宮原:ありがとうございました!
広山:ありがとうございました!