Vol.558「勇ましい愛国女性がお好き?——日本型・女の利用法」
(2025.12.2)
【今週のお知らせ】
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…「高市総理、中国に負けるな!」なるネトウヨ的キャッチコピーを掲げて11月26日に発売された「月刊Hanada1月号」は、メインの執筆者としてひたすら右派の女性論客が集められている。メインは「高市総理への手紙」という特集だ。自分が高市に媚びるあまり、「女性首相を甘やかす」という女性蔑視にはまり込む、そんな人間が続々と現れている。そして、ここにあるのは、女性を盾にして、なんでもありの権力礼賛を作り上げてしまおうという構図だ。「女性首相を守れ!」という空気さえ作れば、批判は簡単に封じられる。そのためには、「女性による勇ましい言説」が欲しいのだ。女性を利用した権力礼賛づくりが、相当危険なレベルにまで達している現状を直視せよ!!
※「ゴーマニズム宣言」…孔子の言葉に、「まずは名を正せ」というものがある。政治において真っ先にしなければならないことは「名を正す」ことであり、名が正しくなければ言論の筋が通らなくなり、政事が達成できなくなるというのである。わしは高市早苗のことを「高市総理」とは決して呼ばない。せいぜい高市「首相」までだ。語源までさかのぼって見れば、「首相」と「総理大臣」には、大きな違いがあるのだ。「首相」と「総理大臣」の違い、日本における「権威」と「権力」のあり方、愛子さまのラオス訪問から見てとれること、高市早苗によって崩壊した「政府公式見解」というものの意味、そして「フェミニズムの本懐」とは何か?高市全体主義に屈せず、批判を続けなければならない!
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」…今井絵理子や山本太郎、生稲晃子、三原じゅん子、ラサール石井のようなエンタメ政治をどう思う?国際世論に台湾のことを訴える力のある政治家や頼りになる人物はいる?『最終フェイス』で男の最終フェイスが描かれる可能性はあった?「ガンダムシリーズ」と「おぼっちゃまくん」の奇跡のコラボはある!?万が一、台湾有事が起こり、中台衝突の影響で中台双方の難民が与那国島などに押し寄せた場合、日本はどうするべき?中国国内での日本のエンタメの公演が次々と中止になっている現象をどう見る?炎天下の中、選挙応援をしてくれた人たちの思いを、山尾氏は無にするつもりなの?日本の社会は「中流」が崩壊したのに、未だに多くの人が「自分は中流だ」と思っているのは何故?…等々、よしりんの回答や如何に!?
1. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第382回「勇ましい愛国女性がお好き?——日本型・女の利用法」
◆女、女、女が高市早苗を礼賛している
うわああああ! 女、女、女! 女という女が「月刊Hanada」で高市早苗を礼賛しているぞおおお!!
「高市総理、中国に負けるな!」なるネトウヨ的キャッチコピーを掲げて11月26日に発売されたこの号は、メインの執筆者としてひたすら右派の女性論客が集められている。
新聞広告は「女、かく語りき」で押し通せば何でも受け入れられるご時世だとばかりに、女の上に女を積んで、女、女、女、女、女。
さらに本誌表紙は、高市とトランプのニコニコ2ショット。トランプ来日時に、東京都港区六本木の米軍専用施設から米大統領専用ヘリで飛び立った時の「国辱記念写真」である。
メインは「高市総理への手紙」という特集だ。
寄稿者には、櫻井よしこ、金美齢、杉田水脈、飯山陽などのほか、着物で国連の女性差別撤廃委員会へ出かけて「男系男子尊重に口を出すな」などとスピーチした葛城奈海、それに同行した参政党の「さや」こと塩入清香など、《男系男子絶対》を叫ぶ女性たちの名前が並ぶ。
櫻井よしこは、トランプが高市の肩を抱いたことを「特筆すべきこと」と大喜びだ。櫻井の知人米国人によれば、あの肩を抱く仕草は「あなたは家族同様の存在です。私の腕のなかで安心しなさい」という意味があるという。
家族同様なんて言ったって、米大統領から見た日本は「うちの占領地なんだから、遠慮なく踏み入ってもかまわんよね」という感覚しかない。その米大統領に日本の女性首相が「私の腕のなかで安心しなさい」と抱かれた情景を大喜びするなんて、骨の髄まで敗戦国民だ。
米軍の前でキャッキャと飛び跳ねる高市を見て、櫻井の心も躍ったのだろう。オールドパンパンか! と言いたい。
葛城奈海は、男系男子で皇位継承問題に決着をつけるようにと要望を述べ、「初の女性総理大臣である高市早苗さんが、戦後日本の天照大御神となって、長く闇に閉ざされた戦後日本に光を取り戻すことを心から待ち望んでおります」などと書いている。
イキった最高権力者の高市を、天照大御神に例えて崇めるなんて、劣化するにもほどがある。
天照大御神に例えてよいのは愛子様だけ、日本人を心から沸かせて光を取り戻すことができるのも愛子様だけである。その愛子様を、男尊女卑の長い闇に閉じ込めてしまうべく着物姿で闊歩して、日本の女性の品位をも貶めている自分の罪深さに、いつになったら気づくのか。
これら執筆陣に加わり、山尾志桜里氏まで「高市総理の誕生を、心から誇りに感じています」と礼賛を捧げている。
山尾は、高市を「女性をことさら強調することなく」国家の土台を論じ鍛錬してきた政治家であり、「その延長線上で選ばれた『全国民のための総理』がたまたま女性であった」と述べる。
そして、高市に対する「媚を売るな」という批判を「女性蔑視の常套句」「職業人を侮辱する態度」と反論するのだ。
高市は男系男子に固執して「男の血が尊い、女の血は卑しい」という感覚をばらまくことで支持されている人間だ。「男性に媚びを売ることで出世した女性首相」そのものではないか。
トランプ大統領に媚びに媚びて、日本の属国ぶりを示した姿だって、その構図がわからないはずはないと思うのだが、どうしてしまったのか。
「媚び」という言葉の意味を誤解しているのだろうか。それとも、わざと「女性が男性に対して媚びる」というニュアンスに狭めているのか?
「媚び」は、表情、言葉づかい、服装など色仕掛けを含む意味ばかりではない。「媚びへつらう」「おもねる」「おべっかを使う」という言葉に直せば、男性が男性に対して行うことも、女性が女性に対して行うこともあるとすぐわかる。日本人の場合は、個人が世間に対して見せる態度の1つであったりもするだろう。
自分が高市に媚びるあまり、「女性首相を甘やかす」という女性蔑視にはまり込む、そんな人間が続々と現れている。
◆女性を盾にした右翼言説の量産
だいたい、女性ばかり集めて、全員に高市礼賛の原稿を書かせるという「月刊Hanada」の編集方針そのものが、女性を利用して高市礼賛を演出し、売り上げを伸ばそうという魂胆丸見えである。
女性という属性をゴリ押ししているのだから、「素晴らしい首相が、たまたま女性だった」というニュアンスとは正反対だ。
私から見えている「月刊Hanada」は、次の通り。
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小林よしのりライジング
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。 毎週、気に…
