『はじめての和紅茶ガイド』読者のみなさま、ご協力いただいたみなさまへ
『はじめての和紅茶ガイド』著者の青嶋ひろのです。9月に発売した拙著はおかげさまでたくさんの方にご愛読、ご愛用いただいており、読者のみなさま、ご協力いただいたみなさまに心より御礼申し上げます。ほんとうにありがとうございます。
1月には拙著でも紹介したオンラインイベント「#和紅茶30daysチャレンジ」が開催予定ということで、その前に、一部の方からいただいたご指摘について、著者自身から皆様にお伝えしたいことがございます。
まず、『はじめての和紅茶ガイド』にはSNSでご指摘のあったような編集上の不備はございません。「掲載に許可を取っていない」とのご批判でしたが、取材した生産者のみなさま、大きく掲載した販売店のみなさまには、事前に原稿をお見せしています。その他は、わたしのおすすめしたい情報を、自信をもって書かせていただきました。ご指摘は、ごく短いご紹介文に関して「無断掲載」とのこと。
しかしたとえば拙著も、ネットニュースやYouTubeで「おすすめしたい和紅茶の本」としてご紹介いただきましたが、事前に掲載のご連絡はいただいていません。もちろんわたしの許可など必要なく、ただ取り上げていただいたことが嬉しいばかりです。
これは紙媒体でも同じで、わたしもこれまで、見るべき映画、おすすめアーティスト、ブックガイドなどの原稿を書籍にも雑誌にも寄稿してきましたが、掲載に許可をとることも、掲載先からクレームが入ることもありませんでした。もし映画会社などが「書くのなら許可をとれ」と言ってしまったら、それは一書き手に対する大きな圧力になってしまいます。今回に近い例を挙げればミシュランガイドなども、読者に有益であることを優先し、お店の掲載許可を必須としていません。(本書では原稿をお見せし、修正をいただいたページでも「これはどうしても伝えたい」とわたしが思う箇所はご相談の上、そのまま掲載したケースもあります。取材した生産者のみなさまは、同じ「ものづくりのプロ」として、こちらの編集権や執筆者としての思いも尊重してくださったのです)。
『はじめての和紅茶ガイド』では、どのお店も生産者さんもイベントも「ここのお茶を飲んでみて」「ここで美味しい紅茶が飲めますよ」と、わたしのリスペクトをこめた情報でした。どこから和紅茶に近づけばいいの? そんな疑問を持つ方へのガイドとして、最高の茶園、お店の数々をご紹介できたと思っています。
報道、文筆に携わる者は、自身がおすすめしたいものも、批判したいものも自由に書く権利があり、どこからの圧力にも屈しない、忖度しない姿勢こそが読者にとっても誠実な本作りにつながります。
今回「許可を取るべき」との声は当事者の方ではなく、SNSの第3者からあがりました(当事者のみなさまの多くは、掲載にご理解をいただいております。ありがとうございます)。SNSは今、とても強い影響力を持っている。一般の方の大きな声も、誤解を広範囲に広めてしまいます。
この先、「掲載には何でも許可が必要」がお茶の世界の常識になってしまっては、今回のような密度の濃いガイドブックは二度と作れないでしょう。またガイドブックに留まらず、この先、どなたかがお茶業界に深く切り込む本を書くことになるかもしれません。コンテストの裏側や、流通の仕組みをしっかり取材できる書き手が、現れるかもしれない。そんなとき「お茶業界は名前ひとつ出すだけでも許可をとらなければ」ということになったら? 「和紅茶ガイドは許可を取らなかったため、謝った」といった先例を作ってしまったら? 建設的な批評も何一つ書けなくなってしまう。日本のお茶ジャーナリズムを、ここで殺すことになってしまいます。
この先和紅茶、お茶のことを書く方には、誰にも臆することなく、自分の意見やおすすめが書ける環境があることを切に願っています。
次に本書に「間違いが多い」というご指摘が繰り返されていること。『はじめての和紅茶ガイド』で深くお詫びすべき修正点は、固有名詞の誤りなど、ごくわずかです。お名前などの誤りはほんとうに申し訳なく、関係者の方にご連絡し、増刷の際に修正をしてまいりました。その他にも誤植、数字の誤り等の修正は順次対応しております。が、「間違い」のご指摘には見解の違いや視点の相違も少なくなく、「間違いが多い」といったイメージが十分な確認もなく拡散されていること、一冊の本の作り手として非常に悲しく思います。
『はじめての和紅茶ガイド』には読者の方を惑わせるような、読む方に不利益になるような間違いはなく、その点でもガイドブックとして「安心して読んでください」と、胸を張っておすすめできる本になっています。
もうひとつ、一部の方より「自分がSNSで発信したことが本に書かれている」というご不満があるとのこと。わたしの仕事は、散らばった情報を集め、精査し、「はじめての」方に読みやすい形にまとめあげることです。どの情報を載せ、どんなエピソードを紹介するか、選び取り、取材を重ね、書き上げる。それが、本を作るという仕事です。
もちろん、独自の見解やその方だけの持つ情報に関しては、原稿を見ていただいたり、スペシャルサンクスにお名前を掲載したりしています。その他の、共有されているごく一般的な情報に関しては、発信されたすべての方にご連絡はできません。
とはいえ、生産者の方への密な取材とともに、ClubhousなどSNSでのみなさんとの対話があってこそ、わたしは和紅茶への洞察を深めることができました。改めて、すべてのお茶に関わるみなさんに大きな感謝を捧げたいと思います。批判されている方も含め、みなさんのおかげで、今回の本はすてきなガイドブックとして生まれることができました。
今はSNSなど新しいメディアと、古くからあるメディアが両立し、ひしめき合う、難しい時代なのかもしれません。本や雑誌を手に取る方も、少なくなってしまいました。報道や執筆の仕事のあり方が理解されにくい状況下で、「掲載許可が必要」など、もろもろの誤解は生まれたのかもしれない、と思います。一方でSNSを見渡せば、本のページや漫画の一コマ、雑誌のインタビュー記事の切り抜きなどが、出所も書き手も明らかにされず頻繁に転載、拡散されることが黙認されています。SNSの常識が正しいわけではないことは、みなさんも感じていらっしゃるでしょう。わたしたち、自身の名前を名乗って仕事をする書き手や表現者にも、権利や役割があるということ。どうぞご理解いただければと思います。
もしかしたらもう古いメディアなどいらない、SNSで十分情報は得られる、と思う方も多いかもしれません。しかしわたしは今回、書籍という形をとることで「まったく興味のなかった方にも届く」という出版物の役割を改めて知ることとなりました。ネット検索して和紅茶を知ろう、とは思わなかった方も、書店でたまたま見かけた、友人に勧められた、と、一冊の本があれば和紅茶に出会えるのです。そして「ハマりそう」「和紅茶おもしろい!」という声も、まったく「はじめての」方からたくさんいただきました。まだまだ書籍にも、テレビや新聞や雑誌にも、取り上げられる意味はあります。
長く尽力された方が多い和紅茶の世界で、専門家ではないわたしが本を出したことに異議のある方もいらっしゃるでしょう。しかしわたしは長年取材・執筆の仕事をしてきて、本を作るノウハウがありました。できあがったのは多くの方に親しみやすく、和紅茶の魅力をわかりやすく伝える役割を担った本、専門家の書かれる本とはまた違うものです。「はじめての」読者のみなさんに役立つ本、最適な情報量を考えた結果、たくさんの方の功績を書くことはできず、載せられなかったお茶もたくさんあるかもしれません。それでも今、この本がお茶に興味のなかった方まで届くことで、美味しいべにふうきやいずみの紅茶にはじめて出会える方がいる。生産者の方が手塩にかけた美味しい紅茶が、より多くの方に届く。そのひとつのきっかけになる本です。
今回、ごく一部の方の誤解が広められたことによって、「何か問題がある本なのかも」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし和紅茶の案内書として、はじめての方が和紅茶に出会う本として、何も問題なく楽しんでいただける本です、と改めて著者から申し上げたいと思います。
むしろ、ここまで日本の紅茶を美味しくしてくれた生産者さん、30軒。取材をお願いしたすべての方が快く受けてくださり、「全力で応援するよ」と言ってくださった。最高のメンバーのお話が、たくさんの情熱と物語がすべて詰まった、奇跡のような、宝物のような本です。
もちろんこれはわたしの手柄ではまったくなく、時代を代表するみなさんのお話をひとつずつ聞いていったら、みるみるうちにすてきな本ができあがったのです。
これまでほとんど知られることなく、日本で紅茶を作り続けてきたみなさん。様々な思いや、出会いや、大きな夢、たゆまぬ努力、創意工夫。たくさんの失敗と美味しいお茶ができる喜び、届く喜び。そのほんの一端ずつではあるけれど、一堂に会した本。そんな声は、もっとたくさんの方に読んでいただかなければなりません。そして今まで知る機会、触れる機会のなかった方にも、日本の紅茶に出会ってほしい。微力ながら、少しずつでもその使命は果たせる本だと自負しています。
ご協力いただいたたくさんのみなさま、ほんとうにありがとうございました。
そして改めて、お手に取ってくださったみなさま、ありがとうございます。
まだ読まれてない方は、ぜひ。
そして和紅茶30daysチャレンジ、始まりますよ!
今回は運営を別の方に引き受けていただくことになりましたが、これまで通り30のお題で毎日日本の紅茶がタイムラインをにぎわす日々がはじまります。詳細の発表まで、しばらくお待ちください。
オンラインの和紅茶のお祭り、ぜひ楽しんでください。
青嶋ひろの
追記:みなさんにもうひとつ知っていただきたいのは、SNSでは、言い争いで場を汚したくない、穏やかなお茶の世界を分断したくない――そう思った側ほど言われるがまま、黙さざるを得ない、ということです。
今回は著者であるわたしだけでなく、監修のおふたり、出版社まで業務や安全を著しく脅かされる事態もあり、こうした一文を出すことも長らく難しく、また大きな決意が必要でした。
よって今回の件のわたしからの発信は、この一文のみとさせていただきます。SNS等での本件に関する発言、返信なども、これまで同様いたしません。
またこのような状況でもあり、この一文はすべてわたし個人の責任で書いていること。監修者も出版社も関わりなく、著者であるわたしひとりの発信であることを申し添えておきます。
最後になりましたが、今回の件でご助力、ご助言、ご心配いただいたみなさま、ほんとうにありがとうございました。


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