前ではなく、360度全方向に進んでいる雰囲気漂うスマートグラス業界。まだ正解が何か定まっておらず、各社が試行錯誤しているところが、ガジェットとして最高にわくわくします。
スマートグラスを次々とレビューしている米Gizmodo編集部が、スタートアップEven Realitiesの最新モデル、カメラもスピーカーも非搭載で「視覚」に特化した「Even G2」をレビューしました。
スマートグラスとは、メガネに何を乗っければスマートになるのか?
業界を牽引するMeta(メタ)にとっては、その答えはカメラとオーディオなのでしょう。Meta Ray-Ban Displayならスクリーンも乗っています。すでにスマートグラスを複数モデル展開するMetaですが、全モデル共通なのはメガネで写真や動画を撮影できること。魅力的な機能ではありますが、これにはプライバシーという非常に大きな問題もついて回ります。あと、物理的に重くなってしまうのも難点。
Metaとは異なるアプローチ、引き算で答えを出したのがEven Realities。その結果、最新モデルのEven G2は確かにユニークでわくわくはするものの、イラっとするアイテムにもなっています。
指輪で操作する

カメラもスピーカーもないEven G2。これがEven Realitiesの手法で、初代のEven G1も搭載なしでした。スクリーン(グリーンの単色、デュアルレンズディスプレイ)、つまり視覚にコミットしたメガネ。初代から最も大きく変わったこと、かつEven G2最大の個性は、別売のスマートリング「Even R1」があること。これ、メガネの操作にも使えますが、単体では単純にヘルストラッカーとして使えます。
指輪の操作性が発表時から気になっていましたが、セラミック製のリングを親指でスライドしての操作は、思いのほか快適。レビュー中ほぼ思った操作ができました。ディスプレイをオンにするのは、親指で指輪をダブルタップ。メニューのスクロールは、指輪表面をさらーっと撫でる。選択はワンタップ。長押しでダッシュボードを出したり、プロンプター表示、翻訳などの機能発動もできました。
思ったよりはうまくいったものの、完璧というにはまだまだ。慣れもあると思いますが、ダブルタップが検知されず何度かやり直したり、スクロールがうまく止まらなかったりはあるある。スマートグラスの操作のみを目的として、このスマートリングを装着する(または別のスマートリングから乗り換える)ことはないでしょう。
メガネ以外のアイテムで操作をするのはMetaも同じ。MetaではNueral Bandというリストバンドを導入しています。操作の直感的なしやすさはMetaが上。ただ、バンドよりも指輪の方が、物理的に体に占める割合が少ないのはうれしい。問題は279ドル(約4万3000円)で別売なこと。その価値があるほど操作性がいいとは思えないんですよね。あくまでもオプション、期待はしたいけど改善の余地大ありなオプションです。
別売オプションなので当然ですが、指輪なしでもメガネのツルで操作できます。
物足りない&不安定な機能
カメラもスピーカーもないEven G2なので、撮影もしないし、通話もしないし、音楽を聴くこともありません。ディスプレイ搭載なので、各種アプリの通知を確認することはできます。Instagram、WhatsApp、Snapchat、TelegramのDM、通知、メール、電話、カレンダーなどのアプリが対応。
ただ、これも安定して常にうまくいくわけではなく、例えばレビューではiPhone 17(iOS 26)でメッセージの確認がどうしてもできませんでした。InstagramのDMも表示できたりできなかったり。ソフトウェアが非常に不安定なのです。
え?と思ったのは、表示されたメッセージの確認はできても、そこで終わりなこと。そう、返信ができないんです。Meta Ray-Ban Displayはこれができるので、比較するとどうしても不便。

他にはヘルス機能もあります。ただ、これもリアルタイムではなく断続的なので、例えばランニング中の消費カロリーや心拍数をチェックしたい場合は物足りません。何がトリガーでデータがアプデされるのかがわからないのにヤキモキします。
ここでもソフトウェアの不安定さがあり、ヘルスデータ表示がウィジェットから急に消える事件も発生。これが発生すると、スマートグラスを接続し直す必要(たまに再起動しないとダメなことも)があり、単純に面倒くさい。さらに何をやってもダメなときもあって、こうなるともう待つしかない。何かのきっかけで機嫌直して再表示してくれるのをひたすら待つだけ。この不安定さは致命的です。
別売リングのEven R1は、Oura(オーラ)のリングと同じような機能があります。つまり、万歩計、消費カロリー、睡眠トラッキング、心拍数、温度、血中酸素濃度測定など。
睡眠トラッキングは、レム・ノンレム睡眠や起床時間などいろいろなデータ収集してくれて好印象。睡眠スコアも出ました。ただ、ヘルストラッキングとしてスマートリングを求めるなら、Even R1よりもOuraやSamsung(サムスン)のリングの方が、使い勝手や測定値の正確性は高いと感じました。スマートリングが欲しい、かつEven G2も操作するというなら選ぶかな…程度なのです。

比較的使えたと思った機能はナビ。音声アシスタントでも発動可能で、「Hey Even、どこどこに行きたいからナビして!」でいけます。今回は自宅からブルックリン博物館へ。
右下に小さな地図、左下に各段階のナビ、右上には目的地までの距離と所要時間が表示されます。大きく表示したいときは、Enve R1をタップするか、メガネのツルをダブルタップで。このナビは自転車やバイクで重宝すると感じました。ただし、映画『マトリックス』ぽい表示で、どことなくアナログマップ感があり、好き嫌いは別れそう。
スマートグラスあるあるの翻訳機能も完備。パートナーがスペイン語を話すので試していました。スペイン語から英語への翻訳(テキスト表示)は、他社グラスよりも英語ベースの人にわかりやすい表現に感じて好印象。翻訳スピードも実用できるほどには速めです。
一方で聞き取りが不安定な部分も。これは搭載されているマイク性能なのか、ソフトウェアの問題なのか、どうも苦手(聞き取りづらい)な音やフレーズというのがあるようで、全体的なヒアリング力はMeta Ray-Ban Displayの方は上です。
他に「Conversate」という文字起こし機能もあり。他社グラスが会話をただ文字起こしするのと違い、Even G2は会話の状況なども追加メモしてくれます。
ですが、これがお節介な気が…。仕事のミーティングで使ってみたのですが、会話の文字起こし自体はほぼできているものの、この状況説明追加テキストがなんか違う。違うがゆえに、このテキストだけ見たら誤解を招くと思います。
例えば会議で出てきたあるウェブサイトの名前、そのまま名称文字起こしでよかったのですが、このサイトの背景を説明するテキストが入っていて、「それはいらないんだよな」という仕上がりに。これ、AIがもっともっとスマートになったら、かなり使える機能になるかもと期待はしつつ、現状はプラスにもマイナスにも働く賭け機能になってしまっています。
ニュースと株価が個別ウィジェットになっているので、このカテゴリをよくチェックする人は見やすいかも。個人的には、スマートグラスで絶えず株価をチェックする必要があるくらいの投資家なら、Even Realitiesに投資してUIをもう少し使いやすくしてほしいなと思いました(株価やニュースをスクロールするの、悪くないけど良くもない)。
機能に関してはネガティブ発言もしつつ、全体的にはよく考えられているとは思いました。ただ、その考えに現実的な動作が追いついていない。挙動が不安定なのが残念です。将来的にもっとソフトウェアが改善されれば、理想とする使いやすさになるんじゃないでしょうか。
改善といえば、接続をなんとかしてほしい。Bluetoothバグがあるのか、iPhoneとの接続がなかなかうまくいきませんでした。掲示版Redditをチェックすると、Bluetooth接続不具合は、Even G1のときからのあるあるクレームのようです。これ、使い始めの印象に大きく関わることなので、早めになんとかしてほしいですね。
ハードウェアはいい

機能、主にソフトウェア面で改善すべき点が多く見られますが、ハードは非常にいいと感じました。まず、スマートグラスはスマートガジェットではなく、あくまでメガネであると捉えているところが好印象。カメラ、スピーカーを搭載せず、普通のメガネとほぼ同等の36.5gに抑えたところは、ウェアラブルとしてはプラスです(Meta Ray-Ban Displayは69g)。チタンフレームも軽量化に一役買っているかと。

モノとして非常にかけ心地がいい。メガネなのでこの一点だけで大きなプラスです。Even G2とEven R1を1日中(10時間ほど)着けっぱなしで生活しましたが、何も感じませんでした。つまり、あー早く外したいと思うような不快感がなかったということ。もし絶対にスマートグラスを常にかけなければいけないというルールができたら、たぶんEven G2選ぶかな。装着感はそれくらいよかったです。
指輪なしで操作するメガネのツル部分も反応に問題なし。

あとはやはりスクリーン。Even Realitiesのいう「3Dフローティングディスプレイ」(デュアルレンズのmicroLEDディスプレイ)は、初代から50%シャープになったとのこと。Meta Ray-Ban Displayよりもシャープで、文字は非常に見やすいです。また、設定からディスプレイ表示の距離(近・中・遠)が選べるのがよし。これができないグラスも使ったことありますが、オプションにあることで、より多くの人の使用感が上がると思います。
ディスプレイの明るさは1,200ニトで、Meta Ray-Ban Displayの最大5,000ニトにはおよばず。
フルカラーディスプレイではないものの、情報サポート的なスマートグラスの狙いとしては、Even G2の単一ディスプレイは大成功といっていいレベル。
ディスプレイに表示される内容で視界が遮られるようなこともありません。通知ならデフォで10秒表示、メインメニューはレンズの25%程度のサイズで表示。ニュースを読むなら、見出し・小見出し・第1段落程度は表示可能です。これも設定次第なので、自分好みでどうぞ。
メニュー表示も一目でチェックできるように、シンプルでわかりやすく作られています。時間や温度、数字、簡単なグラフ、短い文章など、ぱっと見て確認する情報が多い人にとっては、Even G2の満足度はかなり高くなりそう。
Even G2、Even R1共にバッテリー持ちもそこそこ。公式いわく2日間はいけるとのことですが、使った感じ、2日以上いけそうな気もしました。1日10時間使って帰宅すると、バッテリー残量は80%ありました。バッテリーはアプリで確認可能。
あと、度ありレンズにも対応します。

改善すべき点は多いものの

ディスプレイが素晴らしく、ハードとしてのモノはいい。ただし、ソフト面ではまだバグがあり、改善の余地大あり!
Enve G2に感じたのは、接続・設定に手間取ったり、さっきまで使えていた機能が止まることがあっても、なぜかイヤにはならなかったという不思議さ。これを魅力というのでしょうか。まだ開発途中にあるという雰囲気は感じるものの、それは他のスマートグラスも同じ。アイデア自体は魅力的なものも多く、そこが憎めないところでしょうか。
ただし、モノとしてそこそこ値が張る(本体659ドル+リングが279ドル)ので、この値段出して商品として欲しい?と聞かれちゃうとな…。未来を買うと言うなら止めませんが、現時点で実用性はありません。初代ユーザーの中には、ソフトウェアバグ修正がないままに新モデルが発売されたことに不満を持つ人もいます。
ソフトウェアアプデとBluetooth接続バグが修正されたらあるいは…。
いいところ:シャープできれいな単色ディスプレイ、アイデアとしてはよく考えられた機能、別売Even R1がなかなかいい、軽い
残念なところ:Bluetooth接続のバグ多すぎ、機能が不安定、高い、メッセージの返信はできない
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