総合型選抜に有利だから?…高校の「探究学習」で大学の研究者たちが疲弊 話がかみ合わず「1人に10時間」かかったケースも
近年、「探究学習」が大きな注目を集めている。探究学習(総合的な探究の時間)とは、生徒一人ひとりが課題を設定し、教科横断的・総合的に学びを深めることを目的とし、高校では新しい学習指導要領の目玉のひとつとなった。ハイレベルな探究学習ができることをアピールする学校も出始め、その“成果”は大学入試における「総合型選抜」「学校推薦型選抜」で有利になるともいわれる。しかし今、この探究学習を巡って思わぬ波紋が広がり始めている。探究学習が大学受験のための「手段」として利用されたり、高校生が大学の研究者たちの時間を奪ってしまったりする実態が露見してきたのだ。大学教授や高校の教員らに現状を取材した。 【写真】探究学習の研修を受ける教員。実際に質問を受ける研究者たちは… * * * 早稲田大学文学学術院の小塩真司教授(心理学)のもとにはここ2~3年、面識のない高校生らから定期的にメールが届く。「探究学習で調べている。〇〇について教えてほしい」といった内容で、素朴な疑問を気軽に送ってきている印象を受けることが多いという。 「ある程度調べたうえで質問してくれるケースもありますが、高校生ですし、かなりフワッとした質問や簡単な内容を聞かれることも珍しくありません。メールで返答して終わることもあれば、オンラインで話を聞きたい、研究室に行きたいと要望されることもあります」(小塩教授) これまで、基本的にはすべての要望に応えてきた。基礎的な疑問でも高校生の学びへの興味をむげにすべきでないとの思いからだ。実際に会って話をすればやる気や熱意も伝わってくる。一方で、疑念も積もる。 「高校から大学の広報部へ正式な依頼があり大学として対応するということなら、業務の一環として納得できます。しかし現状は生徒個人とのやりとりで契約も何もない無償労働ですし、数が増えると本業にも支障が出ます。また、相手の背景知識も、自分の答えがどう使われるのかもわからずに回答するのは、こちらにもリスクがあると感じます」(同) いま、多くの研究者らがこうした事態に直面しているようだ。一体なぜか。東京の高校で働く男性教員は背景をこう説明する。 「探究学習では生徒ひとりひとりがテーマを設定するので、教員の知識だけで指導するのが難しいことが少なくありません。また、学習指導要領の解説にも『専門家らの協力が欠かせない』などの内容が書かれており、教員側が『ダメ元でも』と連絡をすすめることもあると思います」 高校生側は1通のメールを送るだけと気楽に考えるかもしれない。しかし数が積もると、研究者にとって大きな負荷になる。