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ADHDの私には他人事に思えない事故ー車内に放置され、女の子が亡くなった

このニュースを見て、衝撃を受けた方も多いのではないでしょうか?

簡単に説明すると、父親が2歳の子どもを保育園に送り届けるのを『忘れた』まま在宅勤務し、7時間も子どもを車内に放置した結果、子どもが熱中症で亡くなるという痛ましい「事故」が起こった、というニュースである。

ネットのコメントなどを読んでみると、
「ありえない」
「殺人」
「理解不能」
「気の緩み」
といった言葉が並んでいた。
そして、
「親失格」「結婚するな」「子どもを持つな」という意見もあった。

私ならやりかねない

私はこのニュースを見て心底悲しくなった。亡くなってしまった2歳の女の子が不憫でならない。どれほど苦しかっただろう、怖かっただろうと思うと私の心からは「ごめんなさい」という言葉しか出てこない。助けてあげられなくて本当にごめんなさい。

そして、このニュースに投げられた「世間の声」も私には辛いものがあった。特に「親失格」という類の言葉は私に刺さった。私ならやりかねない、いつ同じことをやってしまってもおかしくないから。別に大げさに言ってるわけじゃない。夫からも「お前は同じことをやってしまってもおかしくない」と断言された。

私はADHDという脳の障害があり、注意力を維持することが一般的な人よりも難しい。新築の家のまだ家具すら運んでいないピカピカの我が家のドアに全速力でぶつかってしまって入居1日目で破壊した。うちのマンションは機械式パーキングなのだが、入居3ヶ月目で私の不注意によって駐車場のドアを壊した。

私は「不注意」とか「忘れる」ということと隣合わせで日常生活を送っている。私にとって「忘れる」ということは命の危険を伴う恐怖だ。うっかりする、のレベルが普通の人から逸脱している。

毎日毎日が恐怖だ。戸締まりはしただろうか、窓は閉めただろうか、ガスは止めただろうか・・・
事件の父親と全く同じ「事故」を起こす可能性も高い。駐車場が立体の機械式パーキングなので、パーキングブレーキをしっかりかけて、ドアミラーを畳んで、ドアを半ドアにならないようにしっかり閉めて、車庫の扉を閉めなければならない。脳内がいつも多動でいろいろな思考がノイズのように駆け巡る中、これらの動作を正確に確実に行わなければならない。これを怠れば車がリフトを通っている間に落下したり、車と機械がぶつかって大事故になる。何度も何度も確認する。扉を閉めるボタンを押す前にもう一度「パーキングブレーキ」「ドアミラー」「半ドア」を指差し確認する。

・・・そのことに頭がいっぱいになって、子どもをチャイルドシートから降ろしてあげるのを忘れそうになる。「ついうっかり」。

これが、ADHDである私の日常。実際に子どもを忘れたことは今のところない。でも、もし子どもが眠っていたら、子どもがなにかに集中して静かなら・・・私は、やりかねない。あの子の父親と同じことを。

悲しい事故を起こさないために

この「事故」を起こした父親がADHDであったかどうかはわからない。発達障害者であったという報道は今のところ無いようだ。

しかし、この父親は過去に相当いろいろな失敗をやらかしていたのではないかと推測する。「ハインリッヒの法則」という言葉を知っているだろうか?重大事故が1件起こる前には約300件近い軽微な事故やヒヤリとした経験がある、という法則でこれは統計的に証明されていると言われている。

この法則を当てはめれば、「事故」を起こした父親は数々の失敗をしている可能性が高い。となると、私と同じ種類の人間であったとしても何ら不思議はないと個人的に思っている。私の主治医の話によるとADHDなどの発達障害者は20人に1人程度は存在するらしい。

この父親がADHDであったかどうかは置いておくとしても、この父親も日頃からの「ついうっかり」「数々の失敗」に相当悩んでいたのではないか、と考えてしまう。もしもそうだったとしたら、この父親が診断を受けたり、悩みを相談できたりしていればこんな痛ましい事故は防げたかもしれない。そんな思いがあって私はこのnoteを書こうと思った。

私自身、「自分の頭の中の落ち着きの無さ」とか「うっかりミス」の多さに長年悩んできた。しかしまさかそれがADHDという障害であったとは思ってもおらず「自分の努力が足りない」とばかり考えてきた。

しかし、脳の神経物質の異常によって「不注意」を起こしやすいということを知ったことにより、私は「人一倍『失敗しない工夫』が必要だ」ということを自覚することができた。もちろん、『失敗しない工夫』はうまくいっていることもあるけれど、大半はまだ試行錯誤中。それでも、自分の特性を知れたことで自分をただひたすら責めるのではなく、自分や周りの人の身を守る手段を考えられるようになったことは大きな進歩だ。

自分を責めるだけじゃあなたは辛くなる。もしも私と同じようなことで悩んでいる人がいるなら、障害である可能性があるから勇気を出して病院を受診してほしい。
特性を理解して、特性とうまく付き合う工夫をして、自分と自分の大切な人を守ってほしい。

あと、このような事故を防ぐためには、私のような「異常なうっかりもの」でも失敗しないためのテクノロジーが今後開発されてほしいということも切に願う。例えば後部座席にセンサーがついていて人が乗ったままになっていたら警告音がなる仕組みなどだ。ADHDに限らず、不注意は誰にでも起こりうる。不注意に限らずパチンコに行く親によって車内に放置される子どもの防止にもつながる。問題をテクノロジーで解決できるなら、それはとてもたくさんの人を守ることになる。

☆   ☆   ☆

私は「普通の人になりたい」と何度も願ってきた。でもそれは叶えられそうもない。たくさんの迷惑をかけてしまう自分。結婚や育児に不向きな自分。それでも私はこの脳と生きていかなければならないのだ。

最後に私の「脳内の多動」を表現できるマインドマップを掲載させてもらう。いつもいつも思考が拡散的に広がっていって、ひとつひとつに注意を向けられない私の特性。そんな人もいるんだなと少しでも「感じて」もらえたらなら・・・。

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