ラブライブ!は2万人しか映画を見に来ないダメコンテンツなのか?
ある日、「蓮ノ空は2万人映画になる」という言葉をXで見かけて、最初は何のことかと思った。どうやら、虹ヶ咲の映画が「2万人くらいのコアファンしかみてない」と推測し、来年春に公開される蓮ノ空の映画も同様に2万人のファンしか見ない映画になるのではないかということらしい。
『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 完結編 第1章』は11日間で動員8万3000人&興収1億6700万円
— 元編集長の映画便り (@moviewalker_bce) September 18, 2024
『きみの色』は18日間で動員19万4636人&興収2億8165万9700円
『サユリ』は25日間で動員27万3725人&興収3億6337万3820円
ちなみに実際の実績は、11日間で動員8万3000人・興収1億6700万円なんで2万人よりは全然多いのだけれど、何回も見てる人が多い(というか大半?)ので、見てる人数は2万人くらいに収れんするのかもしれない。
また、個人的な印象としては「ライブのような客単価10000円を超えるところでも500円でも確実に2万人のファンは来てくれるけどそれ以外の人は見向きもされない」という印象があるが実際はどうなのかを定量的に分析したデータはないかとずっと思っていた。
長年の疑問に答えた日経エンタ
そんな折り、興味深いデータがあった。日経エンタテイメント2025年10月号(P30~)に「徹底研究『推し活』」なる特集があった。これは、GEMPartnersという会社が「推しエンタメブランドスコープ」という調査を継続して実施しており、3万人の標本検査から自由回答方式で「推していると答えた」人数を元にどのくらいか推計した調査が乗っていた。以下、この数字から引用するデータは全て推定であることに注意して、読み進めていってほしい。
それによると、ラブライブ!シリーズのファン数は12.7万人、支払金額の平均は毎月9842円を超えてるそうだが、これを単純にかけると年間137億円程度を売り上げるIPということになる。
現在このIPの収益の中心はライブと言うことになろうが、実際2025年のライブ回数を数えてみると、Aqours 2公演(フィナーレ)・Liella! 18公演(6th 10公演、FG&CS 5公演、ちゅーとりえら 3公演)、蓮ノ空 16公演(3th 2公演、4th 6公演、5th 8公演)・越境5公演(アジアツアー 2公演、万博 1公演、AiScReam 2公演で合計41公演。
ファンミーティングやμ’sのオーケストラコンサートをのぞいて、ざっくりと数えてるので数え間違いはありそうな気がするけど、基本的に土日で2公演やるので、1年が52週とすると月2~3回はどこかでシリーズのライブをしているということになる。
入場料だけでチケット代がかからない万博を除けば40公演となるが、売り上げを下記の式で推定すると、約60億円となる。これはおよそ推定される売り上げの半分をライブで占めていることになる。なお、これは保守的な試算なので実際にはもっと売り上げが多い可能性はある。
平均動員 1万人
客単価 15000円(物販とチケット収入)
公演数 40公演
総売上(概算)=40公演 × 1万人 × 1.5万円 = 約60億円
ミニ宝塚
さて、ファンはこのイベントを当たり前のように全通をすること前提で話されているし、実際に客単価の高さをみたら、マスに向けて広く浅くではなく、可処分所得が高い層が中心のコアで深いファンに向けた作品ということになるのではないか。エンタテイメントは熱心な支援者(いわゆる“太客”)がいることが前提ではあるが、ラブライブ!は群を抜いているように見える。
実際、毎月平均9000円の出費というのは極めて高い分類にはいり、例えばウマ娘やアイマスが6000円/月。男性中心のエンタテイメントでこれほど高い物はそうは無い。
ビジネスモデルとしてはアイドルや一般的なアニメコンテンツよりも、可処分所得が多い少数の濃い客層によるライブの高頻度リピート消費に支えられた「ミニ宝塚歌劇団」ともいうべきコンテンツであろう。ちなみに、その宝塚歌劇団は15000円/月。旧ジャニーズの男性アイドルは軒並み9000円/月を超えており、客単価はそれとくらべてもかなり高い部類ある。
ただ、こうした強固なコア層をつかんでいるということは、マス層に届きにくいことへの裏返しである。TikTokでいくら楽曲がバズってもコンテンツに還流している印象は無い。
あえて新規をと気張らない
私も常々新しいファンに向けて物を作らないとならないだろうと思っていたが、誰に向けてコンテンツを作れば良いのかと考えれば、私は全く思いつかない。100億円の売り上げって一大コンテンツだけど、例えばゲームだとかハイクオリティの映画だとか、大規模な投資をしてしまったらあっという間に溶けてしまうし、そういうものを作ってマスに響くという印象がどうしてもわかない。
要するにそれなりに金は持ってるけど、コンテンツ再拡大の投資先がないという状況である。そもそも100億以上儲けてる萌え系コンテンツもウマ娘や学マスや中華萌えゲーとゲームセクターにはいくつも生まれてきており、そうしたコンテンツと札束の殴り合いになってしまったら勝てないだろうし、アニメも最低2~3年という長期スパンで、なかなか移り気な人々の心をつかむ物も難しい。
そもそも現状は声優業の他に本業に引けを取らないパフォーマンスのクオリティを要求というベクトルと、高密度・高頻度に役になりきってもらうというベクトルの二つの負荷がキャストにかかっているがそのようなキャストに頑張りに依存するやり方はいつまでも通用はしないだろう。
となれば、発想を逆転させるしかない。フィールドを変えて、コンテンツが市場から退場しないように、コアに向けてとにかく新しいものを作り続けて時間の厚みを味方にするしかないのではないかなと思う。
そして、打席に立ち続けるというのは大きな博打を打つべきではない。自ずと、持続可能で省エネな方向に向かっていくだろう。
もし仮にコアなファンが5万人いるとして、新規ファンが年間1000人入るとしたら、10年で1万人、50年続ければ閉鎖的なコンテンツだってファンが入れ替わるし、中には親子数代のファンという人も生まれてくる。宝塚はそれが出来ているから100年以上のサイクルが出来てるのである。
世間に届かないことは悪いことか?
日経エンタによると、ラブライブの月額支出額は劇団四季と同じ9000円代であるが、その四季は7万人のファン層があるとされており、宝塚のファン層は12万人とほぼ同じくらい。もしかしたら、深く狭い層に狙い撃ちするというのは人口の0.1%程度が限界ということなのかもしれない
四季や宝塚を「小さい」と評する人はいないし、宝塚に至っては膨大な時間が作り上げた映像資産を武器に専門のCSチャンネルを持ってさえいる。
しかし、ラブライブ!はファンが一番マスに届けることにこだわっているような気がする。その結果作り手は勝ち目のない展開をさせられ、リソースや金をどぶに捨ててたりブランドを傷つけていたり、あるいはファン自身がコンテンツの本当に持っている価値を評価できずに、「落ち目」と揶揄しブランドをけがしてることが多いように思う。
ラブライブ!もまた、宝塚のようにマスに届かずとも強固な文化圏を築きつつある。目指すべきはメジャーなアイドルではなく宝塚である。「偉大なるニッチ」として、深く長くファンとともに歩む道を選ぶことこそ、このコンテンツの持続可能なあり方だと思う。


宝塚は300億円超、四季も300億円近く売り上げるようなので、コアなファン層のほか、一見さんの取り込みも順調にできている気がします。共通するのは、常設の劇場での公演と地方公演を組み合わせていることでしょうか。常設公演は一見さんに配慮した後ろの方の安いチケットがあり、地方公演の回り方はか…
ヅカは確かに見るだけなら3500円で配信が見られるし、一番儲かるはずのサヨナラ公演も普段よりボリューミーなのにたった500円増し(来年から双方とも500円ずつ上がる)ですからね。イキズライブがCD買わなくてもライブに行けますと言ってるんだから、全く関心が無い訳ではないのでしょうが。
”てえてえ”な状態と認識されるには、受け手側に 一定の属性が求められるということですかね。 宝塚しかり、プロレスファンしかり。。。 大好きなコンテンツが、大好きな状態で 続いてもらえること願うばかりです。 エンタの情報、面白い記事ですね。 興味深く読ませていただきました。 …
どうもです。ずっと疑問があったのだけど、日経エンタテイメントにズバリその答えが載ってたので助かりました。あくまでも推測ですが、そこまで外れてるような感じが無いような肌感覚はあります。(個人的には)
逆の例を目の当たりにしたことがあります。 YouTube登録者130万のボカロP系バンドのライブに行ったことがあるのですが、都内Zeppで一階スタンディング、二階指定席の両方で当日券を出してました。 130万アカウントの登録者がいても3000人未満の集客力。 結局そのバンドは活動休止しました。 長く…
数は少なくても大箱でやるのが偉い、落とす額は少なくても人が多い方が良いという謎の価値観があるのかなとは思います。まあ、どれだけ落としてるから見えづらいけど、どこでやってるかはわかりやすいですからね。