東京都立呪術高等専門学校二年転校生早川那由多 作:同じ顔の別人
【side:?】
【俺って、車に轢かれても死なないんだ……】
知らなかった。だって人身事故にあったこととかなかったから。新しい発見だ。
生意気なガキに痛い目をみせてやろうという俺の企みは、
あまりの急展開に呆気に取られ思考が停止する。瓦礫の隙間で呆然としている間にひき逃げ犯は逃げてしまった。どんどん事態は大事になっていく。何だか急に面倒臭くなって、残穢を残さないように気をつけながら現場を立ち去った。偉そうな口を叩いたガキが罪をなすりつけられて動揺している顔が面白かったのでひとまずよしとする。
呪霊は呪力無しでは祓えないのだと、単眼の呪霊が言っていた。だから俺は無傷だったのだろうか。思い浮かべた仮定を即座に否定する。あの感触は、呪力がこもっていた。運転手は術師だ。
魂の形を変えれば肉体の形も追随する。生まれてまもない俺が知覚する数少ないこの世の真理から、もう一つ仮説を立てた。
(魂の形が揺るがないのであれば、いくら肉体が損傷しようと問題がない……?)
魂の形と肉体の形の関係性。分からないことがたくさんあって、結び目を解くように一つずつ感覚を掴んでいくのが心地よい。自分は何もかもが不確定で、未熟だが、それは成長の余地に等しいのだと確信する。なんだか愉快で、喉を鳴らした。
だけど一個だけ決めた!
【あいつ、殺したいなぁ〜!】
瓦礫の隙間から見えた黒い三つ編みを思い出す。俺を車で轢いておきながら、一度もこちらを見ることのなかった女。頭にいくつものツノを生やした、受肉を果たした混ざり物。人と呪霊、どちらでもあってどちらでもない。あいつのおかげで俺は『快』と『不快』からさらに一歩踏み込んだ情緒を学んだ。
これは
【ただ殺すのはやだな……うーん、でもあれが何やったら嫌がるのか全く想像できないんだよなあ……】
重要なのはタイミングだ。
俺が何なのか、誰の味方かなのはまだ決めない。――でも、あの女は敵。これだけは揺るがない。
そうと決まれば、早速準備だ。まずは居場所を突き止める。それからたくさん観察して、ゆっくり作戦を練ろう。
また一つ、己の本質を自覚する。俺は、他人を嘲り、踏み躙り、侮辱することが大好きだ。生まれたての悪意に浸る。心のままに笑みを浮かべた。
※
【side:伏黒恵】
伏黒恵には義理の姉がいる。
伏黒津美紀。典型的な善人で、いつも笑っていて、いつも綺麗事を言っていた。誰よりも幸せになるべき人だった。
なのに津美紀は呪われた。原因不明。あの胡散臭い白髪の男ですら『何も分からない』と言うことしか分からない呪いに犯され、今も病院のベッドで眠り続けている。
世界は不平等だ。決して優しくない。そんな現実を少しでも公平に正すために呪術師は存在する。少なくとも、伏黒恵はそう在ると決めた。
「一つだけ、彼女をどうにかできる
恵と津美紀の後ろ盾である男――五条悟はある可能性を提示した。今の恵には手に余るかもしれないなどと、意味のない前置きをして。覚悟があるかという問いに、二つ返事で了承した。姉を救う手段が少しでもあるのなら、挑まぬ理由はない。
初めから会わせるつもりだったのだろう。そいつは直後に俺の家に連れられて来た。
「な……っ」
「君の父親の置き土産さ。上手に使うといい」
隠しもしない禍々しい気配に、反射的に身構えた。白い髪を後ろで二つ括りにしている男。身長は恵よりやや高い。脳みそが溢れ出し、飛び出した眼球が揺れたまま、満面の笑みを浮かべている。
受肉した呪霊だ。それも、今まで見た中で一番強い。
冷や汗をかく俺を無視して、五条悟は説明を続けた。
「見た目でわかると思うけど、
この受肉呪霊の頭の中には、無限の知識が詰まっている。つまり、
六眼でも分からなかった伏黒津美紀の呪い。手がかりがあるとすれば残るはここしかないと五条悟は告げた。それが取り出せるかどうかは恵次第だとも。
「僕は嫌われちゃったからどうしようもないんだよねえ。こいつ死ぬのも全然怖がらなくて、脅しも効かないからさあ」
【ハロウィン!】
「禪院の顔面と武闘派スパダリ女性と武闘派ヒモ男が好きなんだって」
【ハロウィン! ハロウィン!】
「食べることと寝ることとセックスとオシャレと観光も好きなんだって」
「適当言ってませんか」
「えー、僕って五条悟だよ?」
「何一つ信用できる理由にならないんですが」
【ハロウィン】
「まあこいつ、四大欲求に忠実だから上手くコントロールしなよ。あ、これ次の課題ってことでヨロシク」
「数一つ多いですよ」
「食欲、性欲、睡眠欲、観光欲」
「……」
「もー! ツッコミが遅いよ! ノリ悪いぞ!」
(どうしてこの人こんなにテンションが高いんだ……)
――本当は恵が高専に入学するまで僕預かりだったんだけど、
そう言い残して、五条悟は立ち去った。後に残されたのは、恵と、得体の知れない呪霊混じりのみ。
なんだかんだ言っていたが、要するに――面倒ごとを押し付けていきやがったのだ。あの人は。
【ハロウィ〜ン!】
「お前ふざけてんのか……」
とはいえこれを放置するわけにもいかない。
津美紀を救う知識を秘めているというのも、おそらく本当だ。あの人はいい加減だがそういう嘘はつかない。
一人で過ごすに広すぎるアパートの一室は、今や無駄に長い図体に占領されていた。ふらふらとどこかへ出かけようとする首根っこを引っ掴んで引き戻す。無限の知識とやらを引き出すにも、そもそも会話が成り立たない。どうしろというのか。
(……いや、目標が分かっているだけ、状況はマシだ)
どうにもならないと感じるのは、自分が未熟だからだ。
「……お前、名前は?」
【ハロウィン?】
「……」
俺は、俺のできることをするだけだ。どうしたものかと恵は頭を悩ませた。
※
【side:五条悟】
五条悟の青春は夏油傑と共にあり、夏油傑の喪失により終わりを告げた。
あの日、悟は傑と戦うことが出来なかった。今ここで倒しておくべきだと確信していたのに、無防備に晒された背中を攻撃することが出来なかった。その理由に名前をつけることなく、ただその事実のみを抱えて生きている。
「お集まりの皆皆様! 耳の穴かっぽじってよーく聞いて頂こう! 来たる12月24日! 日没と同時に! 我々は百鬼夜行を執り行う!」
東京新宿と、京都。二箇所に千の呪いを解き放ち、非術師を鏖殺すると、そう宣言した。
かつての青春から、十年の月日が流れた。僕らは大人になった。変わらないところも、きっと沢山ある。だが、あの頃とは決定的に違う。悟はもう、夏油傑と戦うことを迷わない。
「ん〜〜〜………」
「……」
早川デンジが頭をかきながら遅れて現場にやってくる。夏油傑の宣戦布告を聞き、悩ましげな顔を浮かべている。
戦力としてはありがたい。だが彼がこういう顔をするときは大抵ろくでもないことを考えているのだと、悟は経験則的に知っていた。
「その……やめねえ?」
「そんな要求を受け入れるとでも?」
「じゃあ、日をずらさねえ?」
「「「じゃあ!?」」」「おかか!?」
一年たちがデンジの無茶苦茶な主張に思わずツッコミを入れた。
「いやだって……クリスマスじゃん……」
「まさか……早川先生……」
憂太がはっとした表情で左手の薬指の指輪に触る。ほらみろ。包帯で外からは見えないのをいいことに、悟は呑気な先輩教師を睨みつけた。
「へえ、それはおめでとうございます。で、お相手は呪術師で?」
「いや、最初の職場ん時の先輩」
「じゃあダメだ。予定通り百鬼夜行は決行する」
「んでだよ!! くそっ! お前んこといい奴だと思ってたのによぉ〜!!」
「いい奴は非術師虐殺したりしないんだよ」
「そりゃそうだけどさあ!」
とうとうツッコミを入れてしまった。こいつがいると緊張感が薄れる。悟は若干イラついていた。
かつて、五条悟は早川デンジが嫌いだった。大人の権利を振り翳す、子供のことなど何も分かっていない奴だと思っていたからだ。
今では別に好きでも嫌いでもない。この男もそれなりに苦労してきたのだなと察するに留まるのみである。
「よし分かった」
ただ、こういう時のノリは今でも嫌いだった。
「八時だ……! 夜の八時までに! 新宿で! プロポーズ出来る様にぃ! 全部終わらせてやるよ!!」
早川デンジは、しごく真面目に宣言した。多分、本人的には真剣なのだろう。
※
【side:乙骨憂太】
レゼの死は、憂太の精神に大きな影を落とした。
「大丈夫か、オマエ」
「……うん、大丈夫だよ。ありがとう」
嘘はついていない。自分でも驚くほど調子が良かった。だが、ここしばらく眠りが浅いのも本当だった。真希さんに心配をかけてしまったのが申し訳なかった。
今まで以上に必死に訓練に打ち込んで、夜遅くベッドに倒れ込む。目を閉じる。思考が止められない。くたくたに疲れているはずなのに、怖いくらいに目が冴えていく。
僕のせいだ。
僕があの車に気づけなかったから彼女は死んだ。僕が迷ったから犯人を逃した。僕がもっと上手く出来ていれば。あの時流されてしまわなければ、もっと、もっと――
後悔は淀みとして積み重なり、徐々に輪郭を得ていく。乙骨憂太が生まれて初めて抱いた他人への攻撃性。その全てを里香ちゃんは肯定した。良くない、ダメだ、そう思えば思うほど負の感情は肥大化していく。
レゼ先輩の欠員を埋めるため参加した京都交流戦は、東京校の圧勝で幕を下ろした。まだだ。これではまだ足りない。
真希さんが、狗巻くんが、パンダが、みんなが憂太を気づかった。そう思ってくれる友人がいるのが嬉しくて、なのにそんな彼らに見合わない自分が嫌になる。
――もう二度と間違えないでみせる。それ以外に、憂太が憂太を許せる理由が見つからなかった。
【なー、ゲトー。ワシは腹が減ったぞ】
だからその姿を目にした瞬間、すでに刀を抜いていた。
【誰じゃ、お前】
黒い三つ編みを揺らした制服姿の少女が、ペリカン型の呪霊から身を乗り出している。頭からはいくつものツノを生えていた。
【思い出した! あの時のガキじゃ! 命の恩人への礼がないのう!】
「……お前は、何を言っているんだ?」
先輩の仇は、友人に無礼な口を聞いた袈裟姿の男の仲間の一人だった。
※
「天内の墓を暴いたのは、やはりお前だったのか」
「正解!」
夏油傑は顔を歪めてニヤリと笑う。都内の三大墓地の一つを血の海に沈め、彼の名を呪術界に改めて知らしめた二度目の虐殺事件。だがその結果生まれた彼女の存在を呪術界が正式に認識したのは、今日が初めてだった。
十年前の星漿体事件の詳細を知る者は、驚愕と嫌悪で顔を歪めた。
「狂ったか、夏油……!」
「正気ですよ。昔も今も、ずっとね。ほら自己紹介だ。出来るだろう?」
【えー、ワシに命令する気か?】
「クレープ買ってあげないよ」
【……オウオウオウ! よく聞け! ワシの名はリコ!】
高らかに名を宣言する。
星漿体『天内理子』の死体に受肉した血の特級呪霊。その娘は、この場にいる全員から、ありとあらゆる理由で恨まれ、憎まれ、憐れまれていた。
「……パワー?」
ただ一人、早川デンジだけが、別の名を呼んだ。
※
間違いない。あいつだ。あいつがレゼ先輩を轢き殺した。刀を持つ手が震える。一挙一動を見逃さず、殺意を向ける。
「二ヶ月前の都内の高架下で起きた交通事故にうちの生徒が巻き込まれてる。無免許運転犯の監視カメラ映像を見た時からそうだとは思ってたけど、やっぱりお前が受肉させてたか」
「え、何リコ、そんなことしたの?」
【知らん。こいつは嘘つきじゃ】
「やったのか……」
自由にさせすぎたなと夏油傑は嘆く。全てが白々しかった。
「
【くだらんのぉ! 命は皆平等に軽いというのに。人も、呪術師も、犬も猫も呪霊もな!】
乙骨憂太はすでに動いていた。振り下ろされた刃に反応出来たのは、同じく特級の名を冠する夏油傑ただ一人。無尽蔵の呪力を纏った一撃が、防御のために呼び出された有象無象の呪霊をまとめて引き裂いた。
「すごいね。随分な挨拶じゃないか」
「どけ。あいつは殺す。死ね」
【ぎゃあああ!? ゲトー! こいつ頭がイカれておる! 人殺しじゃ】
再度刀を振り下ろす。真希さん達が叫ぶ。今は聞く必要はない。
【ぎゃあああ!?】
「随分恨まれてるようだが」
「殺す」
【ゲトー! ゲトー!!】
「すまないね、君を不快にさせるつもりはなかった」
少女は袈裟姿の男の後ろに身を隠した。慈悲は不要だ。こいつは殺す。
「ッ、やめろ憂太!」
怯えて逃げようとするその女の痕跡を、この世から一片たりとも残さず消し去るために、憂太は愛する人を呼び出した。
「――来い、里香」
【ゆ う゛たあああ あ゛あああああああああ】
2017年12月17日、特級過呪怨霊『祈本里香』、二度目の完全顕現――
※
呪術とは、所詮ズルとズルのぶつけ合いだ。
極めれば極めるほど、当たれば勝ちの勝負になる。故に全ての攻撃を必中化する領域展開は究極の技足りうるのだ。
夏油傑は、呪術戦を熟知していた。呪いの女王を相手に出し惜しみをすることはない。
「『天命操術』極ノ番 ――千年使用」
「!」
祈本里香の胴体を、巨大な槍が貫いた。その威力に、そしてその言葉に、その場にいる全員が驚愕する。
「術式開示といこう。私の術式は『呪霊操術』という。
特級仮想怨霊『Angel』。日本ではなく海外指定の呪霊なんだがそのあたりの説明は今はいいか。ともかくこいつは、直接肌に触れることで、相手の寿命を吸い取り――」
夏油傑は折本里香すら貫いた槍を指さした。
「――呪具に変換できる。大体百年で特級呪具相当かな?」
百年で特級。ならば千年の年月が圧縮された槍にはどれほどの力が秘められているのか。
なにより底知れないのは、夏油傑は虐殺を二度起こし、宗教団体を隠れ蓑に潜伏を続けていたことだ。蒐集の機会は十二分すぎる。寿命のストックがどれほどのものか、誰にも予想がつかなかった。
「動くなよ。戦うつもりはない。今日は宣戦布告だけしに来たんだ」
「このまま見逃がすとでも?」
「従ってもらうさ。なにせこちらには人質――いや、
夏油傑は指を三本立てた。
「五条悟と家入硝子の寿命約三十年分。イコール、呪術界の勢力図三十年分の時間だ。君らも私も今年で二十七。そろそろ、やばいだろ?」
――かつて、五条悟は天使の特級呪霊と戦った。勝利は納めたが、奪われたタイムリミットは、未だ取り戻せてはいない。高専側の呪術師達がざわついたのを見て、夏油傑はニタリと笑う。
「もちろん百鬼夜行には『天使』も出す。勝ったことのある相手と舐めるなよ。あれが街中で領域展開をすればどうなるかは――」
「……何をしている」
決して大きくはない声に、全員が動きを止めた。
乙骨憂太は、最愛の人が串刺しにされたというのに気にも留めなかった。それが、彼女にとってなんの意味もないことだと本能的に知っていたからだ。特級過呪怨霊『祈本里香』が、背を貫く千年分の寿命武器を逆手に掴み――砕く。
「
「おお怖い。同じ呪霊を操るものとして親近感を覚えるよ」
「お前と、里香ちゃんを一緒にするな」
「だが、そろそろ帰る時間なんだ。彼女たちと竹下通りのクレープを食べる約束をしていてね。じゃあね悟。硝子と那由多にもよろしく!」
夏油傑は呪霊をさらに呼び出した。仲間を引き連れ、去ろうとする。逃げ、ようと――
ふざけるな。僕の持つ刀に小さな亀裂が走った。
「――憂太、ストップ。流石に市街地に出るのは無しだ」
――視界いっぱいに広がる、青い瞳。憂太は後ろに吹っ飛ばされた。あの女の姿が、袈裟姿の男が遠くなっていく。
見覚えのない顔だが、憂太は彼を良く知っていた。五条先生だ。目隠しを外し、異質な光を放つ両目を見開き立ち塞がる。
「退いてください」
「ダメだよ」
「怪我をさせたくありません」
「あはは、そんなこと久しぶりに言われたよ」
どうして。殺すのはあの女だけだ。問答の時間すら惜しかった。
どうか、邪魔をしないでほしい。僕はもう間違えたくない。里香ちゃんの呪力を刀に込めて、五条先生の術式を叩き潰した。
※
「
「よそ見してんじゃねえよハゲ。自分が何してるか分かってんのか!」
「がッ――」
身体に僅かに負荷がかかった瞬間、地面が空へ、視界がぐるりと反転する。パキリと骨が割れる音がする。敵を排除するために練り上げた呪力を、すんでのところで四散させた。彼女を傷つけるつもりはない。
攻撃の主は真希さんだった。憂太を後ろからはがいじめにしているのはパンダだろう。
「どうしたァ! もう終わりかよ! 黒くてピカピカ光って、綺麗だったのによォ〜!」
「退いてください」
「落ち着けっつってんだよ」
「落ち着ける訳が――!」
「
「……え?」
早川先生は、頭部と両腕を異形へと変形させている。表情を窺い知ることはできない。けれど、オレンジ色の外皮の下で彼がどんな顔をしているのか、直感的に理解した。
「んだよ、俺のこと信じてくれねえの?」
そんなことない。だって先生は里香ちゃんを女の子として扱ってくれた人だ。僕は彼を信頼している。
だから、きっと本当だ。
レゼ先輩は生きている。
「よ、良かったぁ……」
腰が抜ける。憂太を力ずくで拘束していたパンダは、今度は身体を支えるために重心を移動させた。
目が熱い。刀から手が離れる。乾いた音とともに、里香ちゃんは姿を消した。
※
【side:五条悟】
夏油傑は退散し、祈本里香の暴走も止まり、当面の危機は去った。いい感じに話がまとまりかけたところで、悟は憂太の肩に手を置いた。念には念を。拘束のためだった。
「それから憂太、この間言ったこと覚えてるよね」
「へ?」
今日は沢山のことが起こりすぎた。懐かしい旧友との再会。百鬼夜行の宣戦布告。
そして、特級過呪怨霊『祈本里香』の二度目の完全顕現。
――里香は出すな。
――もしまた全部出したら、僕と憂太
「……あ」
どうやら思い出したようだ。上層部からのお怒りの言葉を受けての伝言だった。当時は軽い調子で伝えたが、老害どもは本気だ。
そして、対夏油傑人員として配備された複数の呪術師が祈本里香の完全顕現を目撃していた。もはや言い逃れは不可能だった。
「おめでとう! 君と僕、死刑です!」
「ええええええええ!?」
「マジかよ〜!?」
憂太とデンジの間抜けな悲鳴が上がる。続いて一年たちの苦情の声も。僕への酷い罵倒を繰り返しながら、憂太を庇う発言が続く。みんな仲良くなったみたいで先生は嬉しいです。
もっとも、事情が事情である。今回の騒動を暴走ではなくコントロールできる証だという方向性で押すことも出来そうだし、何より夏油傑に対抗できる手段として彼は貴重な戦力になりうる。あとは大人の頑張り次第だ。
まあ何とかなるか、あっはっはと茶化した。
「――ごめーん、ダメだった!」
「ふざけんなバカ目隠し!」
※
【今日の那由多 〜in職場〜】
「は!? 取材中止!? お前舐めてんのか!?」
「流石に会社の顔見知りに死なれると寝覚が悪いので……」
「竹下通りのクレープ屋のどこに命の危険があるってんだ」
「百人殺した殺人犯が来るから……」
「とうとう狂ったか」
「狂って無いです」
「帰れ」
夏油は嘘つき