事実の隠匿や虚偽説明、果ては「パソコンをハンマーで破壊」――。

 反社会的勢力への資金提供が明らかになったいわき信用組合(福島県いわき市)は、「調査委員会」の調査を2度受けている。2025年5月に公表された第三者委員会による調査報告書は213ページに及び、上述のような組合元役員らの非協力的な姿勢が糾弾されている。

 この調査では約20年にわたる不正融資の事実を認めたものの、8.5億~10億円にのぼる使途不明金が存在し全容解明には至らなかった。第三者委はいわき信組の隠匿について「不祥事に伴う第三者委員会の調査実務でも前例のない状況と考えられる」と非難した。

第三者委員会の報告書では、調査に非協力的な元役員らの姿勢が糾弾された
第三者委員会の報告書では、調査に非協力的な元役員らの姿勢が糾弾された

 その後に立ち上がった特別調査委員会が10月、反社への資金提供を明るみに出した。実はこの過程で、「パソコンをハンマーで壊した」という説明も虚偽で、実際は役員の一人が預かったのち、ゴミ袋に入れて捨てたという証言も出てきている。金融庁は5月に続いて業務改善命令を出し、11月17日~12月16日の間は新規顧客への融資業務を停止するよう命じた。

 第三者委はあくまで任意で設置されるもので、法的な捜査権限はない。金融庁はいわき信組元役員らの刑事告発を検討しているもようだが、これは当局の検査に対する虚偽の回答によるものだ。

 上場企業であれば、調査委に対する隠蔽がのちに明らかになり、株価が急落して訴訟へ発展する、といったシナリオも考えられる。それでも調査委への非協力的な姿勢が直接のペナルティーにつながるわけではない。調査の妨害という困難に直面した第三者委は、どう行動すればよいのだろうか。

 今回のような「調査継続」は一つの選択肢だろう。ただ、引き継ぐ方の調査も一筋縄ではいかない。「突破口は一つの録音データだった」と話すのは、特別調査委の委員長を務めた貞弘賢太郎弁護士。特別調査委の業務を補助していた若手の公認会計士が、いわき信組の元役員と反社勢力との電話の録音データにたどり着いたのだという。

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