「お金の不安」に振り回されないで生きる〜田内学さんインタビュー

「お金の不安」に振り回されないで生きる〜田内学さんインタビュー

お金を語るのはカッコいい・田内学さんに聞く 田内 学

2025.12.10

「読者が選ぶビジネス書グランプリ2024」で総合グランプリを取得した小説『きみのお金は誰のため』をはじめ、金融教育に関するベストセラーを次々と世に出してきた、田内学さん。3冊目となる著書では、「お金の不安」をテーマにしている。社会的金融教育家として活躍する田内さんに、新刊執筆の背景や思いを聞いた。

「お金があれば安心」は本当か?

――新著『お金の不安という幻想 一生働く時代で希望をつかむ8つの視点』が刊行されました。3冊目となるご著書のテーマに「お金の不安」を選んだ背景を、まず伺えますか。

社会的金融教育家として本を出すようになってから、講演でいろんな場所に呼ばれるようになりました。特に2冊目の本は若い人に伝わるよう、小説形式にしたので(『きみのお金は誰のため ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』)、高校や大学でお話しする機会が増えました。

お金をテーマにした教養小説。子どもも楽しめるようにわかりやすい文章で、エンタメ要素も入っている

そこで若い人たちと接し、びっくりしたんです。「愛、仲間、お金のうち、一番大事なのはどれですか?」と聞くと、高校生くらいから「お金」という答えがぐっと増える。大学生からの質問で、「老後が不安」という言葉が出てくることもありました。ある学生さんは、「早く奨学金を返済したいから、アルバイトを頑張って投資を始めたい」と言います。せっかく苦労して入った大学で、勉強に打ち込む時間や新しいことに挑戦する時間を削ってまで投資をするなんて、もったいないことです。

若い人が、将来に不安を抱く気持ちはわかります。問題は、それがすべて「お金の不安」に置き換わっていること。逆にいうと、「お金さえあれば安心」という考え方になっている。でもそれは、決して「本質」ではありません。

僕は新卒でゴールドマン・サックスに入り、16年勤めました。資本主義のど真ん中にいて、「資本主義社会って、人が生きていく上でのいろんな問題をお金で解決してきたんだな」と気がつきました。例えば、手間がかかる洗濯や掃除を、洗濯機やロボット掃除機を売ることで楽にした。かつて地域が担っていた冠婚葬祭を、業者に外注することで簡単にした。そのおかげでさまざまな問題が解決された一方で、「お金がないと生きていくのが大変」という社会ができていきました。

バブル崩壊後は長らく景気が低迷し、企業は「どうやって消費者にお金を使ってもらうか」を考えなくてはなりませんでした。高度成長期にモノは満たされ、「憧れ」による購買動機は弱くなった。それでもモノを売るために、「不安を煽る」「焦らせる」販売戦略が多く採られました。

さらに、2019年に「老後資金が2000万円不足する」という金融庁のレポートが話題になりました。それを機に、不安に駆られた人々の間で、「投資でお金を増やそう」という動きが広がります。

冷静に考えれば、定年後に社会との関わりがすべてなくなり、お金だけを頼りに生きていくわけではありません。大事なのは、歳をとっても長きにわたって活躍できる状態を目指すとか、支え合える居場所をつくることでしょう。しかしそういうことは言わず、不安を煽ることに終始してきたメディアや企業の情報発信が、人々の心に過度な「お金の不安」をつくり出してしまったと思います。

ーー田内さんは、そうではない情報発信をしようとなさっている。

ええ。そうしないと、偏りすぎていますから。3冊目は最初、「そんなに不安にならなくていいよ」くらいのトーンで書くつもりでした。ところがある高校で、「大人たちがお金のことばかり気にして、社会への危機感がない」と指摘されて、ハッとしました。高校生から真剣な眼差しで「どうすれば大人に危機感を持ってもらえるんですか」と聞かれて。自分も正面から「お金の不安」の根源を突き詰め、乗り越えるための戦略を伝えなければと思い、この本を書きました。

投資に時間をかけ過ぎないで

ーー企業やメディアが不安を煽って投資に誘導するやり方が、行き過ぎだということですね。

資産運用の一環として、余った資金で金融商品を買うことは、一切否定しません。僕だって、資産の一部を投資にあてていますから。ただ、先ほど申し上げたように、必要以上に「お金」に価値を置き、投資を勧めるのは本質的な問題解決にならないでしょう。

むしろ社会の変化を考えると、これからは投資よりも「働いて稼ぐ能力」を磨く方が、有利になる可能性が高い。今後ますます人口減による労働者不足が進み、「いくらお金があっても働いてくれる人がいない」社会になっていくからです。

マーケット的な視点でいうと、希少性があるものほど市場価格が高くなる。すでに新卒の初任給が上がったり、転職市場が大きくなったりしていますが、「働いて稼げる人の価値」はさらに上がっていくはずです。

ちょっと前までは、いい大学から大企業に入ることを目指し、そのレールから外れたら逆転が難しい時代でした。特に今の40代から50代中盤の人たちは、就職氷河期を経験したロスジェネ世代。子どもに対してもさまざまなリスクヘッジをしていて、「資産運用の勉強を早くからさせたい」とおっしゃる方もいます。

僕は東大出身ですが、父は中卒で、お金に余裕がないのにすごく頑張って教育資金を稼いでくれました。入学してみると東大には僕のような境遇の人はほとんどおらず、親は大卒で給料が高い仕事に就いている人が大半でした。「親ガチャ」という言葉がありますが、実際、逆転が難しい社会だったわけです。

でも労働力不足が激しくなるこれからの時代には、努力によって逆転するチャンスが増えていくはずです。得意な分野を伸ばそうと頑張った経験や、仲間との信頼関係はハックされにくい。若い人は、そういうことにこそ時間を使うべきです。投資したい人が増えているのですから、自ら新しいことに挑戦し、「投資される側」を目指すのも良い戦略でしょう。そう考えると、希望が見えてきませんか。

そもそも、投資で「努力が報われる」と思いすぎない方がいいかもしれません。投資の勉強にものすごく時間をかけたとして、他の人が気づいてない銘柄を発見して稼げる確率はかなり低い。市場には機関投資家というプロがいて、そうした人たちがすでに値付けをしていますから。「分散投資が大事」などの基本的な勉強は必要ですが、企業研究などに使った時間がそのまま結果に反映されるとは、思わないほうがいいかもしれません。

ーープロの厳しい世界にいたからこそ、言えることですね。

僕はゴールドマン・サックスで、債券や為替のトレードに従事するためにものすごい時間をかけて勉強しました。ようやく「こうかもしれない」という感覚がつかめるようになり、それでも100回トレードをして利益が出るのは半分をわずかに上回る程度。プロですらこうなのです。

現在は個人投資家として投資をしていますが、時間はあまりかけていません。「配当金が多いから」という理由で個別銘柄を買ったり、説明をざっと見てインデックスを選んだりしています。投資よりも、仕事に時間を費やす方が得られるリターンが大きいという判断からです。自分が働けなくなって、他人に稼いでもらう方がいいとなれば投資を頑張るかもしれませんが、そうではない今は、仕事における自分の価値を伸ばすことに時間を使っています。

振り幅が大きい人生を歩んできた

ーー田内さんの著書は、お金を通して「社会を良くする」という視点で描かれています。ゴールドマン・サックス出身というと、弱肉強食の世界で勝ち残ってきたというイメージがあるのですが……。そうではない視点を持てたのはなぜですか?

いや、外資系の投資会社で働いているからといって、みんながみんなハゲタカっぽいわけではありませんよ(笑)。会社員としては結果を出さなきゃならないので、必死に勝ち負けを競います。でも個人としてはいろんな立場も感情もあります。ただそれはメディアでは記事にならないから、知られていないだけで。

例えば、僕が入社2年目に上司となった、居松秀浩さん(現ゴールドマン・サックス証券社長)。当時まだ新人だった僕が「どんな勉強をすればいいですか?」と聞いたら、居松さんは稲盛和夫さんの『生き方』という本を薦めて、「足るを知ることが大事だ」と言ってくれました。そういう影響もあり、僕はトレーダー時代も、「お金がすべて」という価値観にならないように気をつけていました。

個人史的な原点を考えてみると、5歳ごろに父親から言われた言葉があると思います。僕は当時としては珍しい一人っ子で、周りの子にはみんな兄弟がいた。ある日、「どうして、うちには兄弟がいないの?」と軽い気持ちで父親に聞いたら、「教育にはお金がかかる」と言うんです。

実家は蕎麦屋を営み、決して裕福ではありませんでした。父親が言うには、「自分は兄弟が多くて中学までしか上がれなかった。子どもには十分な教育を与えてやりたいが、うちはお金持ちではないから、一人が精一杯なんだ」。お金があるかないかで、家族の形まで変わってしまう。「世の中ってそういうものなんだ」と、ショックを受けたのを覚えています。

ーー他の記事で読みましたが、お父様はその後、田内さんを灘高校に入れるために引っ越してタクシー運転手になるなど、教育に心血を注がれたんですよね。田内さんが社会的金融教育家になったのも、親御さんの影響が強いのでしょうか。

父親の影響は、たしかに大きいですね。「東大を目指せ!」と一直線で、僕が勉強好きになるよう洗脳しました(笑)。結局、親には大学一年生まで学費を出してもらいました。それからはプログラミングにハマって、勉強しながらプログラミング関係の仕事を企業から受注し、修士までの学費は自分で出しました。

ーーずっとお金に苦労なさって、いきなりゴールドマン・サックスに就職して年収が上がるのは、振り幅が大きいですね。

いや、大きいですよね。そういう経験があるから、本を書かせてもらっているのかなと思います。でも僕、今振り返ってみると、別にお金がほしくてゴールドマン・サックスに入ったわけではないんですよ。

大学時代、プログラミングの国際大会に出る機会がありました。東大代表として出場し、予選のアジア大会6位にまでいけましたが、世界大会には進出できませんでした。数年前に始めたばかりにしては頑張ったと思うんだけど、周囲からすると「東大代表は世界大会に行けないのか」となる。それからも何度か挑戦したけど、結局ダメで……。やっぱり、悔しかったです。就活では、世界を舞台に自分の力を発揮できる場所を見つけたいと考えました。

そんなときにたまたま、大学の先輩から「田内は数学が得意だから、金融のトレーディングが向いているんじゃないか」と言われました。外資系の証券会社という選択肢は頭になかったのですが、調べたら給料も良く、力を試したくなった。

だから、就職は「能力を活かせる場所」ありきでした。そして助言をくれた先輩との出会いをきっかけに、金融の世界に入っていった。会社を辞めて本を書くのも、「お金についての自分の考えを広く伝えたい」という思いが、編集者の佐渡島庸平さんとの出会いによって動き出したから。ずっと、お金は動機にはなってないですね。

会社を辞めて、気づいたこと

ーー2019年にゴールドマン・サックスを退社し、本を出すまでの話をあらためて聞かせてください。

40代になり、「このまま仕事を続けていいのかな」とすごく悩んでいた時期があったんです。トレーダーの仕事って、営業やその先にいるヘッジファンドの投資家ともめることが度々ある。結構エネルギーを使うのですが、それが果たして社会のためになっているんだろうか? と、悶々としていました。

そんなときに会社(ゴールドマン)の同期の紹介で佐渡島さんにお会いして、お金についての問題意識や、日本国債のトレーディングを通して感じていた財政問題への私見を話したら、「言語化したらいい」「本を出したら?」って言われたんです。ボキャブラリーの少ない自分には本が書けないと思っていましたが、佐渡島さんが言うなら頑張ってみようと思い、会社を辞めて準備を始めました。

ーー1冊目の本を出すまでの2年間は、何をなさっていたのですか?

佐渡島さんの仕事を手伝いながら、本を書くトレーニングをしました。「公共」の教科書執筆に参加して文章の書き方を教わったり、『ドラゴン桜2』の編集会議に行かせてもらって表現の勉強をしたりしましたね。あとは、投資家の谷家衛(たにや・まもる)さんのもとで、エンジェル投資のお手伝いもしました。

なぜこの2人かというと、会社を辞めて会う人、会う人に「仕事がほしい」「ただし、お金はいらない。面白い仕事があったらやりたい」と言って回ったんです。その結果、実際に仕事をくれたのがこの2人でした。

ーー仕事を、無給で?

ええ。2年間は貯金を切り崩してもいいやと思い、時間とお金を「自分の選択肢を増やす」ために使おうと決めました。お金ってインセンティブになる一方で、「お金を払っているんだから我慢してやりなさい」といわれてしまう作用もありますよね。その縛りをなくしたら、相手は本当に僕が面白いと思える、そのときに必要な仕事を考えてくれるだろうと思ったんです。途中からは本の執筆を始めて、2021年に1冊目を刊行しました。

そうやって仕事をしたことで、初めて気づいたことがあります。会社員時代には自分の得意分野が頼りで、苦手なことは勉強してなんとか克服していました。フリーになって本を書くようになると、「その考え方、広まるといいね」と思ってくれた人が、自然と協力してくれて。社会的金融教育家としての使命感を持った僕を、たくさんの仲間が応援してくれるようになったんです。

「社会」といっても、別に国レベルでなくていい。「こういう世の中になるといいよね」と思う私とあなた、2人から始めたっていい。そうやってやりたいことや理想を追求していると、いつの間にか仲間が増え、夢が実現していく。その目的が「お金を増やすため」「自分のポジションを守るため」だとしたら、協力してくれるのはせいぜい家族くらいですよね。会社を辞めて夢を追いかける中で、「お金以外の目的を持つと、仲間が増える」ということを実感しました。

ーーご著書『お金の不安という幻想』の「愛と仲間とお金の勢力図」というお話は、ご自身の経験から出たものだったんですね。社会的金融教育家としてベストセラーを連発なさっていますが、これから何をなさいますか。

うーん、先のことを今から決めて可能性を狭めるのは、もったいない気がします。何せ、5年前に佐渡島さんと出会ったとき、今、こういうことをしているなんて予想もつかなかったので。

「本を書きたい」と話す僕に、佐渡島さんは「田内さんの主張が正しいなら、安倍総理(※当時)にも伝わります。それが本を書くということです」と言いました。どこまで伝わったかわかりませんが、その後、実際に僕は安倍さんの勉強会に呼ばれて、財政問題についての講演をした。石破前総理も、ブログで僕の本を読んでくれていると書いていた。だからやっぱり本を書くって、伝える方法としてはいいんだと思います。

自分の子どもが大きくなったときのことを考えると、「社会がこのままだとしんどいなあ」って思う。自分にそこまで大きなことができるとは思いませんが、少しでも良い方向に変わるための一助になりたい。以前、「保育園落ちた日本死ね!!!」というブログへの投稿が国会質問で取り上げられ、実際の施策に結びついていったことがありましたよね。そんなふうに、本の内容が多くの人に広まることで、流れを少しでも変えることができたらと願っています。

「お金を増やさなきゃ」という不安に駆られる前に、知っておいた方がいいことが結構あるんです。今お話したような「投資と働くこと、どっちが報われるの?」ということをはじめ、「周りがみんな投資しているから、やらないと取り残されるかな」「早く始める方が有利?」など、みなさんが日頃感じているモヤモヤを誰かが解消するべきです。それらについて『お金の不安という幻想』で答えているので、ぜひ手に取ってみてください。

最近思うのは、最終的にはみんな「安心できる自分の居場所」がほしいのではないか、ということ。ところがそれが「お金さえあれば」という不安に変換されてしまっている。そしてお金を稼ぐことは自分でしか解決できないから、頑張れば頑張るほど孤立する、という悪循環に陥ってしまう。そうではなく、自分たちが生きる場所を良くするような目標を持ち、仲間ができれば、自然と居場所もできる。もっと人とのつながりをつくったり、「私」よりも「私たち」を主語にして考える機会を増やしたりすることで、「お金の不安」は減っていくのではないでしょうか。

独自開発のPB商品 低価格だけでなく高単価でも魅力 

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フォーカス!押さえておきたいテーマと企業 QUICK

2025.12.09

物価高により消費者の財布の紐が固くなるなか、小売企業では、独自商品の提供によって集客増を図る動きが強まっています。今回は、「トップバリュ」を展開するイオンを中心に、各社の取り組みをご紹介します。

イオンはPB商品「トップバリュ」を値下げ

今年10月、「 イオン 」は「トップバリュ」商品60品目の値下げしました。値下げは4月(75品目)に続く今年2回目となります。物価高の影響で、食料品を中心にメーカーの値上げが相次ぐなか、イオンの値下げ発表は大きな話題となりました。

「トップバリュ」は同社が独自に企画・開発しているプライベートブランド(PB)商品です。

PB商品の魅力のひとつは「低価格」であり、一括での原料調達や包装の簡素化など、商品に関わるコストを削減することで、低価格でも利益を確保しています。一般的に、大手メーカーが全国展開するナショナルブランド商品と比べて、高い利ざやを得やすいといわれています。

プライベートブランド(PB)のメリット

・自社の顧客に合った商品の提供が可能

・独自色の強い商品で集客の武器に

・利益率が相対的に高いため柔軟な価格戦略がとれる

・宣伝費や中間物流の削減でコストを抑制

顧客層に合った商品を提供できるのもPB商品の強みです。消費者と直接接点を持つ小売企業は、顧客のニーズをよく把握できるという利点があります。

「トップバリュ」ブランドでは主力の「トップバリュ」、価格競争力を重視した「トップバリュベストプライス」、オーガニック素材を使うなど環境に配慮した「トップバリュ グリーンアイ」という3つのテーマでPB商品を展開し、独自商品の魅力向上に努めています。

同社はドラッグストアなどのグループ企業でも独自にPB商品を展開しており、中期経営計画で2025年度にグループ全体のPB商品売り上げ規模を2兆円とし、2019年度比で倍増させる目標を掲げています。

12月1日には傘下のウエルシアホールディングスとツルハホールディングが経営統合しました。今後はPB商品を含めたシナジー(相乗効果)の創出が期待されます。

PB商品開発と連携で競争力を強化

西日本を地盤にスーパーなどを運営する「 イズミ 」は、今年9月に「最後発のPBだから、最高のPBを目指します。」と宣言し、PB市場に参入しました。これまで「 セブン&アイ・ホールディングス 」のPB商品「セブンプレミアム」など、他社PB商品を導入・販売してきましたが、今後は自社主導の商品開発体制を本格的に始動させます。地域密着型を強みとする同社ならではのPB商品によって、集客力の向上を目指しています。

九州発のディスカウント店「 トライアルホールディングス 」は、買収した西友のPB商品「みなさまのお墨付き」をトライアルの店舗に順次投入しています。一方、西友の店舗では自社PB商品を展開するなど、両社のPB商品を相互に取り扱い、連携を強化しています。独自色の高い売り場づくりや商品の供給先拡大により、競争力の向上を図っています。

低価格だけでなく、機能性重視で高単価PB商品も

「PB=低価格」のイメージを覆す、あえて高単価のPB商品を投入する動きも出てきました。ドラッグストアの「 マツキヨココカラ&カンパニー 」は高機能成分を高濃度で配合したヘアケア商品「CONCRED(コンクレッド)」シリーズなどを展開しています。他では手に入らない品質を目指してメーカーと共同開発し、一般的なナショナルブランドよりも高単価な商品を積極的に販売しています。

食品スーパーの「 ライフコーポレーション 」は健康や自然志向に対応したPB「BIO-RAL(ビオラル)」を展開しています。同名のオーガニック商品を集めたスーパーも運営しており、2030年度には50店舗・売り上げ規模400億円を目指しています。

PB商品は「安さ」だけでなく、小売企業の「顔」としての役割を担うようになっています。

7つのステップでビジネスモデルを可視化する決算分析の技術

7つのステップでビジネスモデルを可視化する決算分析の技術

今日からお金賢者になれる「1分書評」 日興フロッギー編集部

2025.12.08

決算書はビジネスモデルの宝庫! 会計知識ゼロでも「企業の稼ぎ方」が見えてくる。金融インフルエンサーが教える、投資にもビジネス戦略にも効く――決算分析の実践バイブルです。

物語のように決算書を読み、狙い目企業を発掘する方法

やや硬めのタイトルよりも、著者名の「妄想する決算」の方が本書の魅力をよく表しています。本書は「決算書の読み方を教える本」ではありません。「決算書は難しいと構えなくて大丈夫。読めば自然とわかる」と気づかせてくれる本です。著者の手にかかると、平板に見える数字の羅列が立体的に動き出し、企業の思惑や戦略まで浮かび上がってくる。企業ドキュメンタリーを追体験するような筆致からは、扱う素材が決算書とは思えないほど。「分析7ステップを自分でもやってみたくなる」のが、また美味しい。

ケーススタディも豊富です。オリエンタルランドや日立製作所、日産自動車など話題の企業の決算を紐解きながら「どんな仕組みで利益を生み出しているのか」「どの事業が本当の稼ぎ頭なのか」など探ります。「円安やインバウンドの影響を高島屋から読み解く」「紅麹問題発覚後の小林製薬を読み解く」などテーマ選びも秀逸で、ニュースの“裏側”を理解するトレーニングにもなりそうです。

また、ビジネスモデル比較として面白いのが、YouTuber事務所の「UUUM」(※2025年2月に上場廃止)とVTuber事務所の「ANYCOLOR」。この2社、似た業態に見えますが前者の業績は停滞し、後者の利益はその10倍。いったい、どうして? 違いは収益構造にありました。YouTubeは「広告収入頼りでグッズ販売に弱い」「権利関係はクリエイター本人にあるため、退社しやすい」のに対し、VTuberは「広告に依存せず、投げ銭やグッズなどのコマースが主軸」「権利を事務所が持つため、タレント離脱のリスクが少ない」といった対比が鮮やかに。ビジネスモデル研究にも役立ちそうです。

数字の背後にあるのは、人と仕組みのドラマ、といったところでしょうか。その姿を“妄想”しながら読み解くうちに、決算書が経営の物語へと変わっていくーー。投資家にもビジネスマンにも、決算の面白さを再発見させてくれます。著者の分析対象への愛情を感じられて、読むうちに不思議と優しい気持ちになる、というオマケ付きです。

妄想する決算さんの記事を読んでみる