太地町の国際鯨類施設で7日から3日間、国際的な鯨類研究プロジェクト「IWC―POWER(Pacific Ocean Whale and Ecosystem Research)」の会議が開かれた。
会議は2010年にスタートし、毎年1回開催されている国際共同事業で、今年で16回目。太地町での開催は今回が初めてとなる。日本、米国、英国、韓国の関係者が会場に集まり、オーストラリアがオンラインで参加した。
IWC―POWERは国際捕鯨委員会(IWC)科学委員会の科学者を中心に、日本鯨類研究所や東京海洋大学の研究者、水産庁担当者らが参加し、北太平洋の鯨類資源を科学的に評価する目的で続けられてきた長期共同プロジェクトだ。複数国が継続的に参加し、国際協力が円滑に進む「成功例」として評価されている。
会議では、前年まで実施してきた国際共同目視調査の成果を分析し、鯨類の分布把握や個体数推定に必要な科学データ、音響データの整理作業を進めた。次年度の調査計画についても協議し、長期的なモニタリング体制の質を高めるための議論が続いた。
初めての開催地となった太地町にとっても意義は大きい。国際的な科学者が町を訪れることで「学術研究都市」「鯨類研究の国際拠点」としての認知向上につながり、国際会議を受け入れる能力を示す機会になった。
宿泊や飲食など一定の地域消費も見込まれ、地域経済への寄与も期待される。また太地町が科学的議論の場を国際社会に提供することで、取り組みに対する信頼の構築にもつながる。
水産庁資源管理部国際課の槇隆人・捕鯨室長は「日本も引き続きIWC―POWERを支援し、枠組みに参加していきたい。国際鯨類施設で開催することは、クジラと共に生きてきた人たちの生活を研究者に知っていただくことにつながる。太地町にご支援していただいていることにも感謝しています」と話していた。
(2025年12月11日付紙面より)
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