存廃揺れる「日本最短私鉄」 わずか2.7km――赤字を“広告費”として支える企業は存在するのか?
譲渡先未定で2026年廃止可能性
2025年11月、一部メディアが紀州鉄道の廃線危機を報じた。紀州鉄道はJR紀勢線の御坊駅(ごぼう)駅と西御坊駅を結ぶ、全長2.7kmの私鉄である。営業キロ数では芝山鉄道(千葉県)に次いで短い。しかし他社と直通運転を行わない単独私鉄としては、日本最小規模の路線となる。 【画像】「えぇぇぇぇ!」 これが50年前の「御坊駅」です! 画像で見る(8枚) 報道は地元メディアでも取り上げられ、和歌山県知事や御坊市長も見解を示した。内容を整理すると、次の流れとなる。紀州鉄道を運営する東京の会社は、2021年に中国系とみられる企業の傘下に入った。 同社はもとも不動産事業やリゾート事業を中心に展開していた。鉄道事業は不採算が続くなか、宣伝や広告の意味合いで保持していた。しかし維持が困難になったため、譲渡先企業を探している。譲渡先が見つからなければ、2026年に廃止する意向を示している。 これに対し、和歌山県知事は鉄道の重要性を認めつつ、基本的には民間企業の問題と位置づける。一方で御坊市長は、存続に向けて国や県、紀州鉄道と協議したい意向を示している。 紀州鉄道の公式サイト(2025年12月5日時点)には、鉄道の存廃に関する記載はない。中国系企業の傘下入りについての情報も掲載されていない。ただし、会社概要にある会長や複数のグループ企業代表者の名前には、中国系とみられる人物が含まれている。
実態は、不動産・リゾート事業の「宣伝広告費」
紀州鉄道は1931(昭和6)年、御坊臨港鉄道として開業した。御坊市の市街地と、国鉄の駅が離れた地域を結ぶ路線として長く運行されてきた。しかし災害やモータリゼーションの進展で、1960年代には一度廃止の危機に直面している。 1972年、鉄道事業に縁のある不動産会社が御坊臨港鉄道を買収し、社名を紀州鉄道に改めた。その後、1979年に不動産・リゾート開発を手掛ける鶴屋産業の傘下に入り、1980年には本社を東京に移転している。 鉄道業界では、買収した会社はいずれも不動産・リゾート事業を展開するなかで、鉄道会社の信用やブランド力を得る目的で赤字の鉄道会社をあえて買収したとされる。鉄道事業の赤字は 「宣伝広告費」 という位置付けである。その後、2021年に紀州鉄道は名称を変えずに、中国系とみられるポリキングの完全子会社となった。ポリキングは東京本社を置き、旅館業などを手掛けるとされるが、詳細や実態は不明である。 現在に至るまで、紀州鉄道の本業とされる不動産・リゾート事業の主な展開エリアは、那須高原、北軽井沢、房総、熱海、箱根、伊豆などであり、和歌山県とはほとんど関係がない。